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#3 変動の時代を生き抜く「コーポレートコミュニケーション」|組織力を高めるインターナル(組織内)コミュニケーションの底力

本コラムは「スタートアップ」「新規事業」に関わったり、「1人目広報」「1人広報部長」など、コミュニケーション活動の責任者として組織を強化したりする方を対象に、コーポレートPRの考え方や組織設計について解説します。

#2では、コミュニケーション活動を行うにあたって必要となる体制や、準備をしておくと良いツールなどをお伝えしました。(#1#2のコラムはこちら)

最終回となる#3では、組織の内部から働きかけ、チーム力やパフォーマンスを高める「インターナルコミュニケーション」をテーマにお届けします。


「インターナル」=“ウチの関係性”に特化したコミュニケーション課題


広報活動の一環として「インターナルコミュニケーション(いわゆる社内広報)に取り組もう」と考えるきっかけにはどのようなものがあるでしょうか。

  • 「社員数が増えて“組織図や機能が細分化”し、“縦割り”が進んだせいで連携が弱くなった、調整や対立することが増えた」

  • 「採用を急ぎ“カルチャーマッチ”をあまり考慮しなかったため、入社後のギャップで退職者が続いている、残る社員の負荷も高まり士気が下がっている」

  • 「コロナ禍で進んだリモート環境に慣れ、“画面上の必要最低限のコミュニケーション”しかなされずに一体感が薄れた」 etc.

これまで様々な状況のクライアントとの対話を行ってきた経験から見えてきたのは、組織フェーズの変遷や外部環境の変化など、様々な理由により「組織と働く人の関係性」や「働く人同士の関係性」にほころびが出てきたり、その予兆を感じ始めたりした際に、「やったほうが良さそうだ・・・」と判断されるようです。

また広報部門単独ではなく、経営層や人事部門も巻き込んだ形で「手を打たなければ・・・」と経営課題として対策に移るケースもあります。

広報として「組織課題」にどう向き合い、考え、動くべき?

いわゆる「社内広報」という言葉を聞いた時には、こんなイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。

「社内報」や「社内メルマガ」
「未来志向ワークショップ」や「ビジョン策定プロジェクト」
「周年パーティ」や「社内コンテスト」

「コミュニケーション」や「関係性」という発想に立つと、こうした「情報」「対話」を用いた取り組みは想像しやすいと思いますし、クライアントがイメージする取り組みも、上記のケースが多いと感じます。

しかし気を付けなければならないのは、これらはすべて「手法=How=川下」であり、必ずしも「なぜ組織に問題が起きているのか=Why=川上」という起点から考えられたものではない点です。

川上と川下の位置づけを誤ってしまうと、場合によっては「実施することが目的」となる本末転倒な状況にもなりかねないので注意が必要です。

それでは、「インターナル=組織」の課題解決はどのような段取りで行えばよいのでしょうか?
あくまで考え方の一例ではありますが、私たちの経験から次の5つのStepに整理してみました。

■Step1:起きていることの洗い出し、「点」を集めて「現状」を整理

  • ここでは、社内アンケートや社員グループへのヒアリングによって、個々人が日々感じていることをすくいあげていきます。

  • 最近では「エンゲージメントサーベイ」として、半年~1年という期間で調査を行ったり、もっと簡素に「パルスサーベイ」として毎月状況を把握したりする組織も増えていると聞きます。

■Step2:「ありたい姿」の言語化=どのような状態が望ましいのか理想像を具体化

■Step3:「現状」と「ありたい姿」のギャップの構造化=背景分析(Why)

  • 現状が整理できたあとは、タスクフォース(プロジェクトチーム)のようなメンバーが集まり、「問題が解消された組織のイメージ=ありたい姿」の共通イメージを描きます。

  • その後、現状とどのような点でギャップが生じているのか、その背景としてどのような原因が考えられるのかを考察していきます。

  • 必要に応じて、再度社員にヒアリングをしたり、その情報をもとにさらに深く考察したりするなど、複数回のセッションにわたることもあります。

なおStep1~Step3の間では、できるだけ進捗を社内関係者に共有したり、サーベイ結果やヒアリングの取りまとめを公表したりするなど、「情報開示」に努めることをお勧めします。
「時間を使って対応したけど、それがどう役立っているのか分からない」という不満や、「一部の人たちが勝手に進めていること」などの他人事にしない配慮もできると、その後のアクションの受け止めもポジティブになっていくはずです。

■Step4:何から手を付けていくべきか、優先順位付け

  • ギャップの原因と考えられる仮説が複数出てきた後は、そのなかでもどこから着手していくべきか順番を検討します。

  • その際に「すぐにでも動き出せるもの」という観点や「影響度が大きいもの」という観点など、さまざまな考え方で意見を交えながら進めることが大切です。

■Step5:どう解決していくか、アクションの検討=手法(How)はここで考える

  • このような分析や議論を経て、最後に「じゃあ社内報を始めよう」「社員同士で取り組むワークショップを企画しよう」など具体的な取り組みの検討に入ります。

  • ここまでのプロセスにおいて、社員の考えや原因の仮説について“あたりがついている”状態になっていると思いますので、「取り組みの中身=コンテンツ」もニーズに合致したものとして考えやすくなっているのではないでしょうか。

広報として意識したい姿勢や心構え

ちょっと話が飛んでしまうような印象をあたえるかもしれませんが・・・

西郷隆盛が遺した言葉の中に「どれだけ制度や方法を議論したとしても、それを行う人次第ではうまくいかないこともあるだろう、なので人こそ宝だ」という趣旨のものがあります。(「私たちも自己研鑽に励むことが大事だ」という個人の立場への言及も)

まさしく「組織は戦略や機能だけでは回らない」という、現代のビジネスにも当てはまる言葉だと思いませんか。

最後に、シンプルですが大切な、インターナルコミュニケーションを成立させる4つの要素を書き出します。

これを見ると、対外的な広報活動=エクスターナルコミュニケーションと違いがないことがお分かりかと思います。

組織内で動き、仕事を進めるのは、感情や思惑を持った「人=従業員」であり、「ステークホルダーの一員」として接し、寄り添い、働きかけていく。
そこに「コミュニケーションの力」を掛け合わせ、他部門と連携しながらアクションの精度を高めることで広報の強みを発揮できるはずです。

メンバー同士の連帯感を醸成し、変化の大きな時代にも対応できる「組織作り」にまで広報の仕事の幅は広がっていくと思うと、わくわくしますよね。

私は「広報は経営に資する」重要な役割だと思いますし、そうあるようにチャレンジすべきだと常々考えています。

コーポレートPRを通じて、それを体現する方々増えること願い、本コラムを終了します。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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