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わたしが尾瀬や自然の中で過ごす時に気をつけていること-尾瀬から受け取った大切なメッセージ-



3月も終わりに近づく今日この頃。
山のシーズンが本格的になる4月を前に
今シーズンはどこの山に行こうか、と
いろいろな山に思いを巡らせている方も
いらっしゃるのではないでしょうか?

そのリストの中に
わたしの大好きな「尾瀬」があってくれたらとても嬉しいです。

ここではわたしが尾瀬や自然の中で過ごす時に
気をつけていることを書かせていただきたいと思います。
そしてみなさんが尾瀬に行く前にこれを読んで
参考にしてくれたら幸いです。

そしてもし、
「あ、わたしには合わないな」と思ったら
”行かない選択”をすることも
とっても大切だと思っています。


”おじゃまします”の気持ちを大切に

まずは、入山するときの心構えから!
尾瀬や自然は前提として、
”人が楽しむために存在しているのではない”
わたしは常にそう思うようにしています。

これは尾瀬に暮らしていた時に
自然の中のいのちをまじまじと感じさせられ
地球上にはたくさんのいのちがあるんだということに
気付かされたことからそう思うようになりました。

さらには人間が自然や山を
我が物顔で楽しんでいることについても
疑問を持つようになりました。

だから、自然の中に行く時には
動植物のすみかにおじゃまさせてもらうのだ
ということを意識するようにしています。

ただ行って帰ってくるのではなく
そこに存在するたくさんのいのちを想像して
わざとゆっくり静かに歩いて音に意識を向けたり
自然の中の澄んだ空気を肺いっぱいに吸い込んでみたり
香りのする植物をかいでみたり
目の前に現れてくれた昆虫や動物をじーっくりと観察したりします。

そしてルールは守ること。

自然の中で過ごす時には
普段の人間界の生活よりも”我慢すること”がたくさんあります
でもそれは誰かのおうちにおじゃまする時と同じことだなぁと思うのです。
(誰かのおうちにおじゃまする時には
そのおうちのルールを守りますよね?)

”この地球上で最も影響力の大きい人間が
一番簡単に自然を壊すことができる”

だからこそ
たくさん自然を破壊してきてしまっている人間のわたしも
せめて自然の中に行くときくらい謙虚でありたい。
そんなことをひっそりと考えて自然を楽しむようにしています。

尾瀬で生きるたくさんのいのち(全て尾瀬で撮影した生き物たちです)

歩荷さんに会った時は

最近とっても有名になった歩荷さん。
実は歩荷さんを有名にしたYouTubeをやっている
歩荷のまーくんは尾瀬高校の後輩。

他の歩荷さんも10年のお付き合いになる方もいて
何気ない会話をすることもあります。

けれどもわたしは
彼らが重い荷物を背負っている時は
挨拶すらしないようにしています。

もちろん、彼らがわたしに気がつき
話しかけてくれたりする時は
「お疲れ様ですー!」と声をかけたりするのですが。

なぜ、挨拶すらしないようになったかというと
尾瀬で働き、彼らのことを知り
彼らの運んでくる食材が
いかに大切かということを知ったからです。

彼らは体が資本。
もしも重い荷物を背負っている時に話しかけ
転んで怪我をしてしまったら
その年の収入がなくなってしまうかもしれない。

もしも転んで食材がぐちゃぐちゃになってしまったら
その日彼らの運んでくる食材を
心待ちにしている山小屋さんは困ってしまうかもしれない。

たまに重い荷物を背負っている彼らと
並行して歩いてみたり、話しかけたりする方を見かけることがあります。
彼らに話しかけたくなる気持ちはわたしもわかります!
あんなに重いものを運んでいるなんてびっくりしますから!

でもわたしは彼らの背景を想像し、
彼らが重い荷物を背負っているときは
わたしに気がつかない限り話しかけることはありません。

雨の日には荷物にシートを被せて運ぶ歩荷さん
たくさんの具材がのった冷やし中華が食べられることにも感謝です
(喫茶ひげくまの期間限定メニュー)

ごみについて

”尾瀬はごみ持ち帰り運動発祥の地”
ということで尾瀬にごみ箱はありません。

山小屋に泊まったとしても
自分で出したごみは自分で持ち帰ることになっています。

でも生理用ナプキンのごみ箱は
トイレに設置されています。
(※これは生理用ナプキンのごみ箱がないと
トイレに流す方がいるため設置されていると
聞いたことがあります・・・)

そして尾瀬は水洗トイレが多いので
トイレットペーパーをそのまま流すことができるところが大半です。

また、山小屋で食べ残された生ごみは
山小屋さんが処理をしてくれています。

実は尾瀬で出たこれらのごみは
尾瀬の外に運んでいます。

ヘリで一度に運び出したり
山小屋の人が背負って運び出したり
その量は一回の食事でこんなにごみが出るのかとびっくりするほど。
これも尾瀬に住んでいたからこそ知ったことでした。

わたしはこれらを知ってから
・生理用ナプキンは自分で持ち帰る
・食べ残しは絶対にしない(もちろん具合の悪いときは無理をしません!)
・トイレチップは毎回必ず払う(浄化槽で処理をするには膨大な費用がかかっています)
を実行しています。

「山を汚す登山者に 熊もあきれて困(熊)ったと 空缶・ゴミ・良心は持ちかえろうね」
(田代山避難小屋)
ここにトイレチップを入れます(尾瀬には100円玉をたくさん用意して行った方が良いかも!)

服装について

尾瀬に暮らして気がついたことの中に
意外とおしゃれをしてくる人がいるということがあります。

ヒラヒラの白いワンピースだったり
おろしたてのようなきれいなスニーカーだったり
流行りのファッションを身にまとっていたり。
(10年前はハイヒールやパンプスなんて方もいらっしゃいました)

なんだか、山の格好をしているわたしの方が
恥ずかしくなることも・・・笑

でもわたしはそんな人たちのことを
「なんでそんな格好でくるんだ!なめてるのか!」と
責める気はありません。

むしろ
「大丈夫かな?汚れちゃうんじゃないかな?」
「そんな映画館デートみたいな服で来て、
後で靴が汚れたってパートナーとケンカになるのでは・・・」
と心配になって声をかけてしまいたくなるのです。
(ただのおせっかいなおばちゃん精神です・・・笑)

平坦な木道のイメージが強くて
おしゃれをしていても車を降りたらすぐ
あの湿原と木道の景色にたどり着くから大丈夫!と
思われているらしい尾瀬。
でもそこにたどり着くには
最短でも3.3km、約1時間の林の中を歩いていくのです。

だから、そのおしゃれな服や靴で行くのはもったいない!
(少なくともわたしはそう思います!笑)
ということでわたしはむしろ汚れてもいい服や靴で
行くようにしています。
というよりも汚すための服を着ていこう!ということにしています。
登山の服や靴は高いのですが
その分丈夫だったりお手入れをすれば長持ちする。

尾瀬の中にいるときは心置きなく自然を楽しみたいので
それに相応しい服装で行くことにしています。

日差しを遮るもののない尾瀬ヶ原ではこんな対策もとっても大切!
この格好で良く散策しています。笑

諦めることの大切さ

これは尾瀬で働くようになって見てきた
たくさんの人たちから学びました。

例えば・・・
晴れてはいるけれど山頂付近の風速の予測がとても強くて
登ろうか登るまいか迷っている方。

旦那さんに大したことないと言われてついてきたら
自分が予想していたよりも大変な場所で
二度と来たくないと言って帰っていった方。

鳩待峠から山ノ鼻に向かう途中で怪我をしたけれど
どうしても尾瀬ヶ原を見たくて無理をして歩き続けた結果
尾瀬ヶ原を見ることなくヘリで救助された方。

他にも台風が接近しているのに尾瀬に来る、という方はたくさんいます。
特に印象的だったのは台風が過ぎた直後に
台風で発生した倒木によって山ノ鼻地区が停電になっていたにも関わらず
せっかくだからと尾瀬に入山されてきた方々のこと。
登山道は倒木が発生し、くぐったり跨いだりしなければなりませんでした。
公衆トイレもあらゆる設備を電気で動かしていたため
トイレの水もバケツに汲んで流すことになったりしていました。

このような方々をたくさん見てきたわたしは
尾瀬や山、自然の中に行く時には
”諦めも肝心なんだな”
と学ばされました。

もちろん、みなさんにとって
その日その場所に行くことに対する想いが強いこともわかっています。

”有給を取って計画し、この日を心待ちにしていた”
”コロナでずっと我慢していてようやく行くことができるようになった”
”死ぬ前に一度憧れの尾瀬を見ておきたかった”

これらの言葉を尾瀬にいるとたくさん聞くのです。
こんなにたくさんの人に思われている尾瀬は本当にすごい。

でも状況によって諦め、
また違う日に訪れる、または行かないという判断をする。
このことが尾瀬の思い出をもっともっと素晴らしいものにしてくれたり
尾瀬を嫌いにならないでいてくれることへの
大切な選択に繋がると思うのです。

もちろんわたしにも諦めきれずに行ってしまった過去はあります。
でも最近は行って後悔するくらいだったら
”他の自分が楽しめることに計画を変更しよう!”と
潔く考え直し、近くの温泉や食事を堪能したりしています。

”二度と行けないかもしれない”を
”もう二度と行けなくなってしまった”
にしないために。

至仏山より尾瀬ヶ原・燧ヶ岳

わたしが尾瀬から受け取った大切なメッセージ

最後に、わたしが尾瀬で暮らしていた中で
尾瀬から言われたような気がしている
大切なメッセージを書いておきたいと思います。

尾瀬や自然は
人間を楽しませるために存在しているのではない

尾瀬や自然はたくさんのいのちの大切なすみかで
それぞれが必死にそこで生きている

人間が来ても来なくても彼らには関係ないし
環境のことを考えたら
行かない方が良いことの方が多いかもしれない

だから無理して自然の中に行かなくてもいい

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