公益財団法人尾瀬保護財団

公益財団法人尾瀬保護財団は、尾瀬国立公園をフィールドとして「尾瀬での体験と感動を、自然…

公益財団法人尾瀬保護財団

公益財団法人尾瀬保護財団は、尾瀬国立公園をフィールドとして「尾瀬での体験と感動を、自然を守る力に変える」をミッションに掲げ、様々な活動を展開しています。 公式サイト:https://www.oze-fnd.or.jp/

マガジン

  • 尾瀬のミニ観察 ~全31回~

    尾瀬の植物の特徴や不思議について、全31回にわたってお届けします。 毎週更新しますので、尾瀬や自然、植物にご興味がおありの方は、是非ご購読下さい!

  • 尾瀬の四季・ルート紹介

    尾瀬保護財団事務局職員が尾瀬を歩いた様子を紹介しています。尾瀬の四季や各ルートの様子をご覧ください。

最近の記事

尾瀬のミニ観察~第22回~

前回は、「ニッコウキスゲ」を紹介しましたが、今回は「カワラハンノキ:雌の赤い穂」についてご紹介します。 (22)「カワラハンノキ:雌の赤い穂」 (花期 5月~6月)  尾瀬では雪が解けるとすぐ、カワラハンノキの花が咲く。枝先に短い紐のような雄の穂が1-3個つき、風で揺れると、黄色い花粉が煙のように飛び立っていく。  雌の穂は赤く長さ4-6mmで枝先に立ち、丸い苞と細い柱頭(雌しべの先端)が螺旋状に並んでいる。風媒花なので目立たなくて良いはずだが、雌の穂は真っ赤。この赤い色

    • 尾瀬のミニ観察~第21回~

      前回は、「ヒツジグサ」を紹介しましたが、今回は「ニッコウキスゲ」についてご紹介します。 (21)「ニッコウキスゲ」 (花期 7月)  「花は1日花だ」と書いている図鑑や記事を時々見る。しかし「この花は2日間咲いている」と1995年に野原精一氏が報告しており、私も同じ結論を1999年に書いた。また写真家の猪狩貴史氏は連続写真で確認し2005年に提示している、のにである。  前回のヒツジグサの開花時刻の話と同様、自然界は先人が見落とした事実に満ちている。皆さんはその自然の只中

      • 尾瀬のミニ観察~第20回~

        前回は、「ウラジロヨウラク」を紹介しましたが、今回は「ヒツジグサ」についてご紹介します。 (20)「ヒツジグサ」 (花期 7月~9月)  開花時刻が、昔の刻限の未の刻だから、ヒツジグサと名がついたと説明される。未の刻は今の午後2時前後、本当だろうかと、疑ったことがあるだろう。  実際に観察すると、午前10時頃にぽつぽつと花が見られるようになり、未の刻頃が花盛りで、水面で華やかに揺れている。そして午後4時頃には閉じ始める。未の刻が花盛りなのでヒツジグサと呼ぶのだろう。  本

        • 尾瀬のミニ観察~第19回~

          前回は、「ノアザミ」を紹介しましたが、今回は「ウラジロヨウラク」についてご紹介します。 (19)「ウラジロヨウラク」 (花期 6月)  ウラジロヨウラクは本シリーズ⑭のヒメシャクナゲと同様に花が下向きに咲く。下向に咲く生態的理由は「蜜や花粉を雨から守るため」と「蜜を盗むチョウやハナアブの仲間を排除するため」の2つをあげた。  これらの花は茶筒のような単なる円筒形ではなく、入り口で細くなり、先端は反り返っている。口が細まることで、開口部がつぶれにくくなり、反り返りはハチの足

        尾瀬のミニ観察~第22回~

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        • 尾瀬のミニ観察 ~全31回~
          7本
        • 尾瀬の四季・ルート紹介
          13本

        記事

          尾瀬のミニ観察~第18回~

           前回は、「ミツガシワ」を紹介しましたが、今回は「ノアザミ」についてご紹介します。 (18)「ノアザミ」 (花期 7月~8月)  キク科植物は複数の小さい花を束ね、緑の総苞で取り巻いた花束をつくっていて、それは頭花と呼ばれる。  アザミ類の若い頭花には色の濃い雄しべが何本も立っている。そっと触れると10秒ほどの間に、先端から白い花粉が湧き出てくる。これは、昆虫が触れたときに花粉を出して、運ばせようとする仕組みなのだ。だから、触れる力は昆虫の体重の0.3g以下でないと、雄し

          尾瀬のミニ観察~第18回~

          尾瀬のミニ観察~第17回~

          前回は、「アケボノソウ」を紹介しましたが、今回は「ミツガシワ」についてご紹介します。 (17)「ミツガシワ」 (花期 6月~7月) ミツガシワは、雄しべ雌しべの長さが異なる2つのタイプの花を別々の株につける。雌しべが短く雄しべが長い短花柱花、雌しべが長く雄しべが短い長花柱花だ。  短花柱花の花粉はハナアブの仲間の、あごや首につき長花柱花の雌しべの先に運ばれる。長花柱花の花粉はアブの口吻の中ほどについて、短花柱花の雌しべに運ばれる。このように雄しべ雌しべの長さを変えて、他の

          尾瀬のミニ観察~第17回~

          尾瀬のミニ観察~第16回~

          前回は、「ミズバショウの花に来る昆虫は?」を紹介しましたが、今回は「アケボノソウ」についてご紹介します。 (16)「アケボノソウ」 (花期 8月~9月)  アケボノソウの名は花びら(花冠裂片)の模様に由来するという。紫色の斑点を星、緑色の楕円を月に見立て、曙の空を連想したのだ。でも、月が2つということは火星の空かな~、などと考えている。  月は蜜腺だが、アリでは雄しべ雌しべの先端には触れず、蜜はなめられ損だ。花粉を媒介するのはハナアブやシマハナアブで、雄しべ雌しべをまたぐ

          尾瀬のミニ観察~第16回~

          尾瀬のミニ観察~第15回~

           前回は、「ヒメシャクナゲ」を紹介しましたが、今回は「ミズバショウの花に来る昆虫は?」についてご紹介します。 (15)「ミズバショウの花に来る昆虫は?」  花が満開のミズバショウの群落には、甘く穏やかな香りが満ちている。  この花の花粉を媒介する昆虫との最初の出会いは、テレビの撮影で訪れた福島県の湿原だった。花の姿と香りからの期待に反し、それはハエの仲間だった。その後、尾瀬で調査したさいも、花にくるのはハエだった。およそ50個の花序に1匹の割で見られたが、ハエは蜜も何もな

          尾瀬のミニ観察~第15回~

          尾瀬のミニ観察~第14回~

          前回は、「コオニユリの雄しべ」を紹介しましたが、今回は「ヒメシャクナゲ」についてご紹介します。 (14)「ヒメシャクナゲ」 (花期 6月~7月)  花はなぜ下向きに咲くのか。主な理由は2つある。 1.蜜や花粉を雨から守るため。雨にあうと、蜜は流され、花粉は破裂して役立たなくなる。でも下向きなら、雨は降りこまないから。 2.チョウやハナアブの仲間を排除するため。チョウは口が細く雄しべ雌しべに触れずに蜜を吸う。アブは花間の移動頻度が低い。ともに迷惑な昆虫だが、下向きの花に止ま

          尾瀬のミニ観察~第14回~

          尾瀬のミニ観察~第13回~

          前回は、「ミズバショウの花」を紹介しましたが、今回は「コオニユリの雄しべ」についてご紹介します。 (13)「コオニユリの雄しべ」  夏、湿原でコオニユリのオレンジ色の花が咲くと、キアゲハが訪れて蜜を吸い花粉を運ぶ。  雄しべは、ゆるい曲線を描いて花の下にのび出た花糸の先に、濃いオレンジ色の花粉を出す葯をT字形つけている。その葯はゆらゆらと揺れやすく、電気掃除機の吸い込み口のようだ。掃除機の吸い込み口が床に平らに接するのと同様に、葯はチョウの羽が触れたとき、ピタッと羽に接し

          尾瀬のミニ観察~第13回~

          尾瀬のミニ観察~第12回~

          前回は、「花びらって何?」を紹介しましたが、今回は「ミズバショウの花」についてご紹介します。 (12)「ミズバショウの花」  ミズバショウは白い苞の中の緑色の柱が花の穂だ、と植物学では教えられる。では花はどんな形だろう。  花は4つの緑色の花被片が、雄しべ4本と雌しべ1個を上下左右から包んでいて、菱形に見える。この花はまず、写真の左右の花のように、点のような雌しべの先を出して花粉を受ける。その後中央の花のように、下側の花被片の中に隠れていた雄しべが伸び出て、黄色い花粉を出

          尾瀬のミニ観察~第12回~

          尾瀬のミニ観察~第11回~

           前回は、「ツルニンジン」を紹介しましたが、今回は「花びらって何?」についてご紹介します。 (11)「花びらって何?」 今回はちょっと安心する話題です。 「ニリンソウの白い花びらは」などと説明しているとき「白いのは花びらではなく萼片だ」と訂正された経験はありませんか。花びら=花弁 と思い込まれていますが「花びら」とは、花の目立つ部分をさし示す一般に使われる言葉です。植物学的に定義された学術用語ではないので、文部省の「学術用語集」には載っていません。  ですから、ゴマナの舌

          尾瀬のミニ観察~第11回~

          尾瀬のミニ観察~第10回~

          前回は、「タテヤマリンドウ」を紹介しましたが、今回は「ツルニンジン」についてご紹介します。 (10)「ツルニンジン」 (花期:8月~9月)  花の色は鮮やかなものだけとは限らず、スズメバチやハエの仲間に好まれる花は、地味な緑色や褐色だ。  ツルニンジンの花は直径3cmもあるのに下向きに咲き緑色で目立たない。花の中をのぞくと、底には青紫色の星形のマークがあり、星のとがった先端に蜜が光っている。私は訪れたクロスズメバチの一種をみた。背は花粉で白くなり、花の中心に立つ雌しべに触

          尾瀬のミニ観察~第10回~

          尾瀬のミニ観察~第9回~

          前回は、「ワタスゲ」を紹介しましたが、今回は「タテヤマリンドウ」についてご紹介します。 (9)「タテヤマリンドウ」 (果実:6月~7月)  尾瀬ヶ原が最も美しいのは雨の日だ。そして植物たちは晴れた日とは違う振る舞いを見せてくれる。  雨の日、花は閉じているが、それとは反対に実が開く。淡黄色で楕円形の唇を大きく開いて雨粒を待つ。唇の中にたまった雨水の底には、胡麻のようなタネが沈んでいる。この唇の中に大きな雨粒が落ちると、タネは水と共に遠くに弾き飛ばされるのだ。と、書いたが私

          尾瀬のミニ観察~第9回~

          尾瀬のミニ観察~第8回~

          前回は、「ザゼンソウ」を紹介しましたが、今回は「ワタスゲ」についてご紹介します。 (8)「ワタスゲ」 (花期:5~6月)  ワタスゲの花の穂はツクシのような姿で枯れ草の中に立つ。それは、真っ白なわた毛と対照的な黒い鱗片につつまれていて目立たない。  ワタスゲは風媒花なのに花どきには背が低い。そのため早く開花しないと、周囲の草に囲まれて風をさえぎられ、花粉を遠くまで飛ばせなくなる。そこで鱗片を黒くし、日光を吸収して穂を暖めていると考えられる。こうして、暖まった穂は生理活性が

          尾瀬のミニ観察~第8回~

          尾瀬のミニ観察~第7回~

           前回は、「ウメバチソウ」を紹介しましたが、今回は「ザゼンソウ」についてご紹介します。 (7)「ザゼンソウ」 (花期:5月上旬~6月上旬)  ザゼンソウは、案内していただかないと発見できない地味な植物だが、ユニークな花の姿に人気がある。紫褐色の苞がまだとんがり帽子形でわずかに隙間ができたとき、中では雌しべが花粉を待つ状態になっている。気温が0度に近いときでも、その苞の中は、10度以上に保たれている。この温かさと、臭いでハエの仲間を誘い花粉を運ばせるのだという。たぶん晴れた

          尾瀬のミニ観察~第7回~