公益財団法人尾瀬保護財団

公益財団法人尾瀬保護財団は、尾瀬国立公園をフィールドとして「尾瀬での体験と感動を、自然を守る力に変える」をミッションに掲げ、様々な活動を展開しています。 公式サイト:https://www.oze-fnd.or.jp/

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マガジン

  • 尾瀬のミニ観察 ~全31回~

    尾瀬の植物の特徴や不思議について、全31回にわたってお届けします。 毎週更新しますので、尾瀬や自然、植物にご興味がおありの方は、是非ご購読下さい!

  • 尾瀬の四季・ルート紹介

    尾瀬保護財団事務局職員が尾瀬を歩いた様子を紹介しています。尾瀬の四季や各ルートの様子をご覧ください。

最近の記事

尾瀬のミニ観察~第31回(最終回)~

前回は、「アオヤギソウ」を紹介しましたが、最終回の今回は「ヤマトリカブト」についてご紹介します。 (31)「ヤマトリカブト」  漢字で書くと「山鳥兜」となり、鳥兜とは舞をするときにかぶる鳳凰の頭部を模したかぶり物だ。  外から見える5枚の萼片は青紫色で、写真では兜型の萼片を縦に切り、内部を示した。そこにはカタカナのイの字形(ちょっと無理かな)の蜜腺が2つ納まっていた。後ろの紺色の部分に蜜があり、マルハナバチが吸いに来るのだが人には有毒で、試しになめた勇者は1日ほど唇が腫れ

    • 尾瀬のミニ観察~第30回~

      前回は、「ズミ(別名 コリンゴ)」を紹介しましたが、今回は「アオヤギソウ」についてご紹介します。 (30)「アオヤギソウ」  7月~8月に長い穂を立てて、多数の花をつける。花は淡緑色で直径15mm前後と目立たないが、花びらの基部に光っている蜜が魅力的なので、ハエやアブの仲間がなめにくる。  6本の雄しべは放射状に伸び、先端の鮮黄色の葯は下向きに裂けて花粉を出している。そこはちょうど、蜜を舐めにくる虫たちの背に花粉がつく絶好の位置である。アオヤギソウの花は小さいが、巧妙な受

      • 尾瀬のミニ観察~第29回~

        前回は、「ミツバチを増やすな」を紹介しましたが、今回は「ズミ(別名 コリンゴ)」についてご紹介します。 (29)「ズミ(別名 コリンゴ)」  6月に林縁を真っ白な5弁の花で彩るズミ、分類上はリンゴと同じ仲間だという。この花は甘く香っているので、登山者に楽しんでいただける。  花には体長13mmのヒメハナバチの一種と、より小さいズマルコハナバチとが頻繁に訪れ、雄しべや雌しべを抱え込むようにして花粉を集めていた。  山の鼻田代で見かけるハチは、マルハナバチ類が最も多いのだが、

        • 尾瀬のミニ観察~第28回~

          前回は、「ミズバショウと熊」を紹介しましたが、今回は「ミツバチを増やすな」についてご紹介します。 (28)「ミツバチを増やすな」  サワギキョウの花はマルハナバチ媒花だが、セイヨウミツバチも訪れる。だがミツバチは雄しべ雌しべ(矢印)に触れずに吸蜜し、この花には迷惑な昆虫である。  第2次尾瀬総合学術調査ではサワギキョウの花で、300分間に100匹以上のミツバチが記録された。湿原近くまでミツバチが持ち込まれていたのだろう。1994年からの第3次調査では250分以上観察したが

        マガジン

        • 尾瀬のミニ観察 ~全31回~
          7本
        • 尾瀬の四季・ルート紹介
          13本

        記事

          尾瀬のミニ観察~第27回~

          前回は、「ヒツジグサ:性転換する花」を紹介しましたが、今回は「ミズバショウと熊」についてご紹介します。 (27)「ミズバショウと熊」  ミズバショウの実が熟すと、木道の上やそのわきに大きく黒い熊の糞が目立つようになる。  糞の表面をよく見ると、茶色い殻のようなものが多数貼り付いている。これはミズバショウの種子の殻だ。糞を掻き分けると、無傷の種子も出てくる。それをミズゴケの上に撒いておいたら、10個中7個から芽が出て、幼いミズバショウに育った。  ミズバショウの種子は水に浮

          尾瀬のミニ観察~第27回~

          尾瀬のミニ観察~第26回~

          前回は、「ミズバショウ:雪に守られて」を紹介しましたが、今回は「ヒツジグサ:性転換する花」についてご紹介します。 (26)「ヒツジグサ:性転換する花」  木道にかがんで花を間近から見てください。黄色い雄しべが四方に広がっている花(写真左)と、花の中央に集まっている花(写真右)があるはずです。  前者は開花初日の花で、中央に花粉を受ける透明な液があり、雌花の状態です。後者は開花2日目で、花粉を出した雄しべが花の中央に集り、雄花として機能しています。ヒツジグサは、同一の花が雌

          尾瀬のミニ観察~第26回~

          尾瀬のミニ観察~第25回~

          前回は、「ルイヨウボタン」を紹介しましたが、今回は「ミズバショウ:雪に守られて」についてご紹介します。 (25)「ミズバショウ:雪に守られて」  ミズバショウを含めサトイモ科の植物は熱帯を起原としている。同じ科のサトイモやコンニャクの種芋は、秋に畑から掘り出され、納屋でワラなどをかけられて、寒さに害されないよう守られている。  ミズバショウも同様に、雪という布団をかぶって冬を過ごす。雪の上は零下二桁の寒さでも、雪の下は地熱に暖められ0度よりは下がらず、ぬくぬくと春を待って

          尾瀬のミニ観察~第25回~

          尾瀬のミニ観察~第24回~

          前回は、「レンゲツツジ」を紹介しましたが、今回は「ルイヨウボタン」についてご紹介します。 (24)「ルイヨウボタン」  葉がボタンに似ているとの名だが、似ているのは葉だけ。花は直径わずか15mmほど、しかも黄緑色で目立たないが、出合ったらルーペの出番だ。雄しべのすぐ後ろに、イチョウの葉を小さくしたような蜜腺がある。  目立たないのに昆虫がくるのだろうかと思っていたら、あるときガガンボの一種が訪れ蜜を吸っていた。その頭部の大きさと、蜜腺と雄しべとの隙間がまったく同じで、ガガ

          尾瀬のミニ観察~第24回~

          尾瀬のミニ観察~第23回~

          前回は、「カワラハンノキ:雌の赤い穂」を紹介しましたが、今回は「レンゲツツジ」についてご紹介します。 (23)「レンゲツツジ」 (花期 6~7月)  初夏、レンゲツツジの赤い花が咲く。漏斗形の花冠は半ばから5枚に分かれ、正面を向いた裂片にはチョウの好む濃赤色の斑点がある。 だがチョウを誘っても、その体を覆う鱗粉には花粉が付きにくい。花はそれを克服するため、花粉をネックレースのように細い糸で綴っている(写真白枠内)。花粉の一部でもチョウに付着したら、他の花粉も一緒に運ばせて

          尾瀬のミニ観察~第23回~

          尾瀬のミニ観察~第22回~

          前回は、「ニッコウキスゲ」を紹介しましたが、今回は「カワラハンノキ:雌の赤い穂」についてご紹介します。 (22)「カワラハンノキ:雌の赤い穂」 (花期 5月~6月)  尾瀬では雪が解けるとすぐ、カワラハンノキの花が咲く。枝先に短い紐のような雄の穂が1-3個つき、風で揺れると、黄色い花粉が煙のように飛び立っていく。  雌の穂は赤く長さ4-6mmで枝先に立ち、丸い苞と細い柱頭(雌しべの先端)が螺旋状に並んでいる。風媒花なので目立たなくて良いはずだが、雌の穂は真っ赤。この赤い色

          尾瀬のミニ観察~第22回~

          尾瀬のミニ観察~第21回~

          前回は、「ヒツジグサ」を紹介しましたが、今回は「ニッコウキスゲ」についてご紹介します。 (21)「ニッコウキスゲ」 (花期 7月)  「花は1日花だ」と書いている図鑑や記事を時々見る。しかし「この花は2日間咲いている」と1995年に野原精一氏が報告しており、私も同じ結論を1999年に書いた。また写真家の猪狩貴史氏は連続写真で確認し2005年に提示している、のにである。  前回のヒツジグサの開花時刻の話と同様、自然界は先人が見落とした事実に満ちている。皆さんはその自然の只中

          尾瀬のミニ観察~第21回~

          尾瀬のミニ観察~第20回~

          前回は、「ウラジロヨウラク」を紹介しましたが、今回は「ヒツジグサ」についてご紹介します。 (20)「ヒツジグサ」 (花期 7月~9月)  開花時刻が、昔の刻限の未の刻だから、ヒツジグサと名がついたと説明される。未の刻は今の午後2時前後、本当だろうかと、疑ったことがあるだろう。  実際に観察すると、午前10時頃にぽつぽつと花が見られるようになり、未の刻頃が花盛りで、水面で華やかに揺れている。そして午後4時頃には閉じ始める。未の刻が花盛りなのでヒツジグサと呼ぶのだろう。  本

          尾瀬のミニ観察~第20回~

          尾瀬のミニ観察~第19回~

          前回は、「ノアザミ」を紹介しましたが、今回は「ウラジロヨウラク」についてご紹介します。 (19)「ウラジロヨウラク」 (花期 6月)  ウラジロヨウラクは本シリーズ⑭のヒメシャクナゲと同様に花が下向きに咲く。下向に咲く生態的理由は「蜜や花粉を雨から守るため」と「蜜を盗むチョウやハナアブの仲間を排除するため」の2つをあげた。  これらの花は茶筒のような単なる円筒形ではなく、入り口で細くなり、先端は反り返っている。口が細まることで、開口部がつぶれにくくなり、反り返りはハチの足

          尾瀬のミニ観察~第19回~

          尾瀬のミニ観察~第18回~

           前回は、「ミツガシワ」を紹介しましたが、今回は「ノアザミ」についてご紹介します。 (18)「ノアザミ」 (花期 7月~8月)  キク科植物は複数の小さい花を束ね、緑の総苞で取り巻いた花束をつくっていて、それは頭花と呼ばれる。  アザミ類の若い頭花には色の濃い雄しべが何本も立っている。そっと触れると10秒ほどの間に、先端から白い花粉が湧き出てくる。これは、昆虫が触れたときに花粉を出して、運ばせようとする仕組みなのだ。だから、触れる力は昆虫の体重の0.3g以下でないと、雄し

          尾瀬のミニ観察~第18回~

          尾瀬のミニ観察~第17回~

          前回は、「アケボノソウ」を紹介しましたが、今回は「ミツガシワ」についてご紹介します。 (17)「ミツガシワ」 (花期 6月~7月) ミツガシワは、雄しべ雌しべの長さが異なる2つのタイプの花を別々の株につける。雌しべが短く雄しべが長い短花柱花、雌しべが長く雄しべが短い長花柱花だ。  短花柱花の花粉はハナアブの仲間の、あごや首につき長花柱花の雌しべの先に運ばれる。長花柱花の花粉はアブの口吻の中ほどについて、短花柱花の雌しべに運ばれる。このように雄しべ雌しべの長さを変えて、他の

          尾瀬のミニ観察~第17回~

          尾瀬のミニ観察~第16回~

          前回は、「ミズバショウの花に来る昆虫は?」を紹介しましたが、今回は「アケボノソウ」についてご紹介します。 (16)「アケボノソウ」 (花期 8月~9月)  アケボノソウの名は花びら(花冠裂片)の模様に由来するという。紫色の斑点を星、緑色の楕円を月に見立て、曙の空を連想したのだ。でも、月が2つということは火星の空かな~、などと考えている。  月は蜜腺だが、アリでは雄しべ雌しべの先端には触れず、蜜はなめられ損だ。花粉を媒介するのはハナアブやシマハナアブで、雄しべ雌しべをまたぐ

          尾瀬のミニ観察~第16回~