マガジン一覧

腸活! 日々のまかない

日常食べるものには、手間を掛けず、健康にもよく、おいしいものをつくりたい。腸内細菌を意識して。そんな日々の「腸活レシピ」を短いエッセイとともに紹介します。

インディアン・スパサラダ─ターメリック=ウコンの潜在力を日常に

 小学校時代の給食に「インデアンサラダ」というのがときどき出た。スパゲッティと野菜(玉ねぎやにんじん)を、マヨネーズとカレー粉で和えたもので、好きなメニューの1つだった。  「インデアン」というのは、もちろんカレーの本場インドのことなのだが、当時の小学生は、西部劇に登場する羽飾りをつけたアメリカ先住民=インディアンを頭に浮かべた。そのころの西部劇ではインディアンはいつも悪者で、白人のヒーローに撃ち殺される運命にあった。白人が先住民を虐殺した侵略者であったことを映画が描くのは

2

塩分少なめの煮干がなにかと重宝

 いまや毎日がなにかの日である。2月14日はバレンタインデーだが、「煮干の日」でもあるそうだ。2・1・4の語呂合わせだというが、なぜ「1」が「ぼ」になるのか。突っ込んでも誰も答えてくれない。  煮干にはマイワシやウルメイワシ、キビナゴ、イカナゴ(コウナゴ)、サバやアジの幼魚などを使ったものもあるが、ほとんどがカタクチイワシだ。カルシウムにEPA・DHAの両オメガ3脂肪酸、ビタミンB群、もちろんタンパク質も豊富なので、出汁を取るだけではもったいない。大いに摂りたい食品ではある

3

メヒカリ南蛮漬を食べて福島の海を思う

 東日本大震災の翌春、福島県いわき市で講演を依頼された。いわき市内には漁港が6港もあり、魚どころである。講演後に食事をした店で、メヒカリの唐揚がメニューにあったので思わず「常磐ものですか?」と訊ねて、すぐ馬鹿なことをいってしまったと後悔した。常磐ものは福島県の漁港に水揚げされた水産物をいう。福島第一原発事故で、福島県では漁ができなくなったのは承知していた。再開したのは獲った魚の放射能を測るだけの試験操業のみ。ニュースで出荷できない魚を獲る悔しさを漁師が語っていた。メニューにあ

1

年の豆が余ったら「すむつかり(煎り大豆の酢漬)」に

 「しもつかれ」という郷土料理が、栃木県や茨城県などにある(タイトル写真)。もともとは初午(2月最初の午の日、2025年は6日)に赤飯といっしょに稲荷神社や道祖神に供えたものだという。初午といえば京都の伏見稲荷大社が発祥。この日は稲荷大神(宇迦之御魂神)が鎮座した日とされ、全国の稲荷社もこの日を祀る。お遣いがキツネだけに、お供えは油揚やいなり寿司が多い。  広辞苑によればしもつかれの語源は「酢憤(すむつかり)」で、「おろし大根に炒り大豆を加え、酢醤油をかけた郷土料理の一種」

3
もっとみる

本の虫 Bookbug

海外ミステリーを中心にしたブックレビュー。

パリの図書館司書はなぜ戦争花嫁として海を渡ったのか

あの図書館の彼女たち ジャネット・スケスリン・チャールズ著 高山祥子訳  どんなひどい世界にいても、人は本なしではいられない。いや、ひどい世界であればあるほど、なおさら本が必要だ。憎むべきナチス兵でさえも。  第二次世界大戦下のパリ。ナチス・ドイツの侵攻が懸念される不穏な状況のなかで、本を愛するオディールは「パリのアメリカ図書館」の司書採用試験を受ける。そこは少女時代から、本好きな叔母に連れられてよく訪れていた場所。本や情報を求める市民のために、民間有志の出資によって維持

5

原発事故で故郷を奪われた浪江町赤宇木行政区の記録

 福島県から分厚く重い本が届いた。差出人はいまは白河市に住むKさん。浪江町の内陸部にある津島地区赤宇木行政区の区長だ。阿武隈高地の山中に位置する赤宇木行政区は、2011年3月の福島第一原発事故で放出された放射能に高濃度に汚染され、13年以上経ついまでも住民は帰還できない。筆者は赤宇木行政区の北部に位置する飯舘村に縁があって、事故直後以来、村内全域の放射能汚染調査に参加していた。村内でもっとも汚染がひどかった長泥地区から、そのころまだ車で通過することができた国道399を南下する

4

仲違いした姉を弁護する「事故弁護士」の葛藤

リッチ・ブラッド ロバート・ベイリー著 吉野弘人訳  殺人犯は冒頭で明かされる。その殺人犯ははじめの方で逮捕され、司法取引に応じてその依頼者を告白する。そのかぎりでは「フーダニット(Who’s done it.=誰がやったのかを軸にしたミステリー)」とはいえないのだが。やはりその分類に当てはまるのだろう。  ロバート・ベイリーといえば、老法学教授トム・マクマトリー、その弟子の黒人弁護士ボーセフィス・ヘインズ(2人ともアラバマ大学の伝説的コーチ、ポール・ブライアントの下でフ

3

第二次世界大戦と9.11、2つの時代を生きる2人の女性の人生がつながる

<ブックレビュー> 恋のスケッチはヴェネツィアで リース・ボウエン著 矢島真理訳  2001年。キャロラインはデザイナー志望だったが、ロンドンで不本意ながらファッション雑誌の編集者として働きつつ男の子を育てていた。一方大学のファッションデザイン科で同級生だった夫のジョシュは、ニューヨークに渡り、人気ポップシンガー付きのデザイナーとして成功をつかもうとしていた。ジョシュは、その女性シンガーと恋仲になり、キャロラインに離婚を申し出る。息子のテディは、夏休みにニューヨークのジョシ

4
もっとみる

腸内細菌に訊け!

腸内には1000種類以上、100兆〜1000兆もの細菌(バクテリア)が生息し、ホストである私たちと共生関係を結びながら、免疫系の発達や調節にかかわり、心身の健康に重要な役割を果たしていることがわかっています。そのバランスが崩れると、体調をくずすばかりでなく、さまざまな病気を引き起こすこともあります。そんな腸内細菌についての最新情報を不定期にお届けするマガジンです。 『うつも肥満も腸内細菌に訊け!』、『メタボも老化も腸内細菌に訊け!』(以上、岩波科学ライブラリー)、『からだとこころの健康を守る腸内細菌入門』(電子書籍)もぜひお読みください。

人工甘味料は肥満やメタボリック症候群の対策にならない──腸内細菌叢に悪影響、かえって悪化する可能性も

 糖尿病患者や体重を気にする人など、甘味はほしいが糖分は控えたいという人が頼るのが、アスパルテームやスクラロース、アセスルファムカリウム(K)やサッカリンなどの人工甘味料だ。甘味はあっても消化吸収されにくいため摂取カロリーの節減や血糖値上昇の抑制になるとして、「ダイエット」「カロリーゼロ」「シュガーレス」などをうたい文句にした人工甘味料や、人工甘味料を使った清涼飲料が市販されている。サッカリンナトリウムは、練り歯磨きに甘味をつけるためにも使われる。  世界保健機関(WHO)は

8

「抗炎症食」が慢性炎症を防ぐ

慢性炎症を促進する「炎症食」  最近、健康分野で話題になっているキーワードに「抗炎症食(Anti Inflammatory Diet=AID)」がある。アメリカでは、いくつもの有力医療機関や医学系研究機関・大学のサイトが、抗炎症食について紹介している(たとえば、ジョンズ・ホプキンス大学医学部の「Anti Inflamaition Diet」のページ)  炎症とは、内外の異物(非自己)にたいする生体防御反応だ。免疫系が、侵入した細菌やウイルス、寄生虫、外部生物に由来するタン

11

食物アレルギーは皮膚から──皮膚細菌と腸内細菌との複雑な関係(2)

食品成分を「異物」として排除しないしくみ  口から入ってきた食物成分に対して免疫系が反応しないように抑制する「経口免疫寛容」というしくみについて、前回簡単に紹介した。これをつかさどるのが、制御性T細胞(Treg)という免疫細胞だ。T細胞は免疫細胞のうちリンパ球と呼ばれるものの1つで、ヘルパーT細胞と細胞障害性T細胞という2種類が知られていたが、1980年代から2000年代にかけて、坂口志文博士(現・大阪大学栄誉教授)が制御性T細胞の存在と機能を明らかにした。ヘルパーT細胞は

6

食物アレルギーは皮膚から──皮膚細菌と腸内細菌との複雑な関係(1)

ハウスダスト中の食物成分とアレルギー  ヒトの免疫系は、簡単にいえば「異物=非自己を排除するしくみ」だ。ウイルスや細菌、寄生虫、さまざまな生物由来毒素、がん細胞など──実際にはそれらを構成するタンパク質や多糖類の一部である分子──を自分自身を構成するものとは異なると判断して排除し、感染症や中毒、がんなどから、からだを守るのである。免疫系が反応する分子を抗原という。しかし、ここで困ったことがある。食物のなかにも抗原となりうるさまざまな分子が含まれている。それらにいちいち反応し

7
もっとみる

新型コロナウイルスはどこから来てどこへ行くのか

2023年5月8日をもって。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は「5類感染症」に移行し、社会は「新型コロナ以前」に戻りつつある。しかし、新型コロナウイルスによる感染者は出つづけており、死者も発生しており、ウイルスが人間社会から消え去ったわけではない。COVID-19の発生以来、世界中の研究者がCOVID-19と原因ウイルスの研究に取り組んできた。そのなかで多くのことが明らかにされたが、わかっていないことのほうがはるかに多い。なぜ、動物のウイルスがヒトに感染し、重い症状を引き起こすのか。新型コロナウイルスはどこから来て、どのようにヒトに感染したのか。パンデミックは完全に終息するのか。ウイルスは人間社会から消えてしまうのか、それとも残っていくのか……。  このウイルスの由来、そして行く末を知ることは、次の新たな動物由来感染症パンデミックに備えることである。

COVID-19重症者、治癒後3年経過しても心臓血管系に後遺症

心筋梗塞や脳卒中のリスク、死亡率も上昇  2019新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界中でいまだに膨大な数の感染者と少なからぬ死者をもたらし、人間社会の脅威でありつづけている。日本ではワクチンの普及などで重症化リスクが低下したことなどを理由に、2023年5月に季節性インフルエンザなどと同等の「5類感染症」に移行された。しかし、5類移行後1年間(2023年5月~2024年4月)の死者数が約3万2500人以上と、季節性インフルエンザの15倍にもなることが、厚生労

2

新型コロナウイルス──オミクロン系統の新たな変異株JN.1が流行の主流に

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」上の5類感染症に移行して8か月が経過した。社会は「コロナ禍」以前の状態をほぼ取り戻したが、新型コロナウイルスが消えてしまったわけではない。いまだに感染流行はつづいており、免疫をくぐり抜けやすく、より感染が広がりやすい株へと、変わらず変異を繰り返している。  日本では、定点医療機関あたり感染報告数・入院患者数とも昨年11月を底に増加に転じた(国立感染症研究所感染症疫学センタ

1

新型コロナウイルスはどこへ行くのか

<第14回>  日本では、2023年5月8日にCOVID-19が「2類相当」から「5類感染症」に移行し、季節性インフルエンザ並みの扱いとなった。それ以前は、毎日感染者数や死亡者数が報告・発表されていたものが、定点医療機関からの週1度の報告に基づいて感染者数が公表されるだけとなった。国内の全感染者数は正確には把握できず、「定点あたり」で増減を判断するしかなくなった。感染を防ぐための行動制限はなく、陽性者も陽性者の家族など「濃厚接触者」も外出自粛は求められない。マスク着用も自己

5

奇妙な変異株オミクロン

<第12回>  日本では、2023年5月8日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が感染症法上の「第5類感染症」に移行してからも感染者数がふえつづけており、7月に入って日本医師会が「現状は第9波と判断するのが妥当」と発表した[1](ただし、数日後政府はこれを否定)。第5類移行で全数把握されなくなり、定点あたり報告数から推測するしかないが、6月、7月と明らかに感染者数は増加している。この波をもたらしたのはオミクロン変異株の亜系統であるXBB株の下位系統XBB.1.5お

1
もっとみる