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新型コロナウイルスはどこから来てどこへ行くのか

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2023年5月8日をもって。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は「5類感染症」に移行し、社会は「新型コロナ以前」に戻りつつある。しかし、新型コロナウイルスによる感染者は…
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#SARS

野生動物取引と動物由来感染症のリスク

<第9回>

 A型インフルエンザウイルス同様、ヒトコロナウイルスも人獣共通感染症=動物由来感染症であり、オリジナルはすべて動物にある。すでに書いたように、SARS-CoVはコウモリが自然宿主でありハクビシンあるいはタヌキを介してヒトに感染したと推測されている。MERS-CoVもまたコウモリ由来で、ヒトコブラクダが媒介したことがほぼ確実である。

 これに対してOC43の自然宿主はネズミの仲間だと

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人獣共通感染症としてのコロナウイルス

<第7回>

 21世紀の初頭、ヒトに感染するコロナウイルス(ヒトコロナウイルスHCoV)として知られていたのは、HCoV-229E(229E)とHCoV-OC43(OC43)の2種類だけだった。両者は1960年代に相次いで確認された。229E、OC43とも、研究者のサンプル番号に由来する。OCは組織培養(Organ Culture)のイニシャルである。

 後述するHCoV-NL63(NL63)

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SARS-CoV-2の構造と感染メカニズム

<第4回>

 19世紀後半、ロベルト・コッホによって炭疽菌や結核菌、コレラ菌のような病原細菌が発見され、細菌学が大きく発展した。しかし、細菌を捕捉するフィルターの濾過液に、なお病気の原因となるものが含まれていた。この細菌よりも小さい濾過性病原体は、ギリシャ語で「毒」を意味する「ウイルス(virus)」と名づけられた。ほとんどのウイルスはそのサイズが非常に小さいため、光学顕微鏡では見ることができな

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