10代のバイトたちに教わった、マネジャーの仕事の楽しさ
私の原点とも言える、10代の高校生・大学生のアルバイトから「マネジャーの仕事の楽しさ」を教わったお話です。
目覚めのきっかけをくれた15歳の女の子
もう20年近くも前のこと。
初めてのマネジャーとして、小売店の店長になったばかりの時のお話です。
スタッフ募集に、高校1年生になりたての、15歳の女の子が応募して来ました。
アルバイトは未経験です。
明るくて感じがいい子で、家もすぐそばでした。しかし、ご家庭に門限があり、店舗運営上必要な時間帯で働けなかったので、やむなくお断りしました。
ところが数日後、その子がお店にやって来て、こう言ったのです。
「どうしてもバイトしたいので、親を説得して門限を伸ばしてもらいました。働かせてください!」と。
これは責任重大だぞ。
そこまでして働きたいと思って、期待して来てくれた、初めてのバイト。
「仕事が楽しい」と思うか、
それとも
「仕事なんてつまんない。働きたくない。大人になんてなりたくない」
と思わせてしまうか…
そして、こうも思えてきました。
実はこの子だけじゃくて、やる気がないように見える子も、最初はそうだったんじゃないか?仕事の楽しさを知らないだけじゃないか?
自分のお店での仕事を通じて、仕事の楽しさを知ってもらいたい。社会人になるのが楽しみになってもらいたいーーー
15歳の女の子の行動が、マネジャーになりたての私に、そんな志を持つきっかけを与えてくれました。
誰もが得意を持ち、活躍できる
仕事の楽しさを味わうには、できることが増えて、お客さんや仲間、チームの役に立ち、感謝されるのが一番。
そう考えた私は、できるだけいろいろなことを教え、体験する機会をつくりました。
やっていくと、バイトたちの得意や興味が見えてきます。
陳列のセンスがある、商品に興味がある、イラストが描ける、字がかわいい・・・
そんな子には、売場づくりや商品発注、店内掲示物の作成を任せます。
小売店において、こういった仕事は「花形」です。任される子は一目置かれ、目立つ存在になります。
でも、それができるのは一部の子だけ。
これでは「やる気がない子」を生んでしまいかねない…。ほかの子たちにも活躍の機会ができないだろうか?
そう思ってよく観察していると、それぞれが持っている多様な長所が見えてきました。
お客さんの顔や買う物を覚えるのが得意な子は、ファンを増やしてくれる。
掃除や整理を隅々まできっちりやる子は、売場をいつもよい状態に保ってくれる。
無遅刻無欠勤の子は、シフトが不安定で層が薄い時間帯の柱になってくれる。
細かいことに気がつく子がいるとき、私は安心して売場を任せて、店長業務に打ち込むことができる。
そこで、長所を活かせる役どころにしたり、勤務シフトの軸にすえて、頼りにしているのを目に見える形にしました。
そして「〇〇さんのここがすごい」という話をみんなにしていきました。
するとバイトたちは、身につけたいワザを教えてもらったり、また自分の特技に磨きをかけるようになったのです。
それぞれの長所に注目することで、みんなのスキルが向上し、どんどんいいお店になっていきました。
助けられ教えられた「任せる」ということ
日々成長していくバイトにどんどん仕事を任せ、頼りにしていましたが、本当の意味で任せることを教わったのは、私が体調を崩したときでした。
目標に向けてがんばる姿を見せよう、と意気込み過ぎて、オーバーワークになってしまいました。
そんな私の姿を見たリーダー格の大学生と高校生のふたりが
「店長の仕事、やらせてください」
と申し出て来て、助けようとしてくれたのです。
規定上すべてを任せるわけにはいかないけれど、準備だけでもやってもらったら助かる。自分は最後の確認だけにすればよい。
そう思った私は、店長業務を少しずつ任せていきました。
すると、彼らの動きが、これまでとはひと味違うものになっていきました。
仕事を逆算して考えるようになったり、まわりに指示を出すようになりました。
それに触発された他の子もやりたいと言い出して、自分たちで業務を分担して取り組むようになりました。
自分から客数や単価を気にして、増やすための工夫をする子、そのためのアイディアを話し合う子も出てきました。
こうしてバイトたちは、私の指示なしでも自分たちで協力してお店をまわし、盛り立てるようになっていったのです。
このような動きが、やがて数字となって現れます。
全体の既存店売上前年比が100%を割り込む状況の中で、お店の目標は112%と高めの設定でした。
それが、彼らの成長と活躍のおかげで
売上前年比120% 100店舗中2位
という数字を叩き出すことができたのです。
マネジャーの仕事の楽しさ
やがて、人事異動でお店を離れる時がやってきました。
色紙や手紙をたくさんくれたのですが、その中にこんな言葉がありました。
「店長のおかげで仕事が楽しくなった」
「私のレベル上がったぞい。あとは任せて!安心して次の店に行ってね」
目標達成もうれしかったですが、
これが何よりもうれしかった。
最初は
「仕事の楽しさを味わってもらいたい」
という意気込みを持っていましたが、
教えてもらったのは、私の方でした。
協力し合う
役に立てる
成長できる
という仕事の楽しさを。
そしてバイトたちは、
メンバーの成長と、よろこぶ姿を見ることができる
というマネジャーの仕事の楽しさをも、私に教えてくれたのです。
この体験が私の仕事における原点となり、その後マネジャーとして活動したり、マネジャーを支援する際の原動力・立ち返る場所になりました。
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