尾崎ゆうじ@創作コーチ
『正直で誠実な書評』がモットーの尾崎ゆうじによる『フル読み書評券』の販売をしています。 ※それぞれの『書評券』は、note記事購入およびサポート入金による依頼権の取得を『券』に見立てているだけで、物理的な証券が発行されるものではありません。
◆『模擬1次審査』をお申込みいただいた方、あるいはフル読み書評券の購入に関するお問い合わせ、入金や返金に関する連絡手段についてはこちらに記載しております。 (ご連絡手段) (1)尾崎ゆうじのサイトの問い合わせフォーム(Eメール) → 下記4コマサイト『カオハム』の【応援メッセージ】というメニューが問い合わせフォームになっています。そちらにEメールアドレスとペンネームを記入の上、送信してください。 (注:極力携帯のアドレスは使用しないでください。こちらはPCメール(ヤ
フル読み書評の返金システムについての説明です。 (1)フル読みの『納品』をした日から3日以内(72時間以内)に、尾崎ゆうじまで返金の申請をしてください。確認ができ次第、該当するフル読み書評において受け取った金額をご返金いたします。(2)~(4)までを必ずお読みください。 (2)noteの返金システムとは別の、尾崎ゆうじ独自のサービスとなります。返金は作者様の銀行口座への振り込みとなります。返金申請のご連絡のさいは、お手数ですが銀行口座をお知らせください。 (3)返金額
俺は車を停めると、大きく深呼吸をした。手汗でハンドルがぬるぬるしていた。 これから重要な話をしなければならない……最悪の場合命に係わるため、どうしても緊張してしまう。 時刻は夜の十時を過ぎていた。俺が到着した時、そのプレハブ小屋の周囲は真っ暗だった。 すぐにライトを消し、エンジンを止めた。 明かりや音はなるべく立てない事。それが、この小屋に近づく時のルール。 胸に手を当て、もう一度大きく息をする。ありがたいことに、恐怖心が和らいだ。 車を降りる。俺の
18 助けを呼ぶと言っても、どうやって呼ぶつもりなのか。 一条──いや、河音《かわね》と一緒に部屋を出てから、勇助は尋ねてみた。 「何言ってるんすか先輩、電話を使うしかないでしょう。今朝、自分が先輩にしたみたいに」 すると河音は当たり前のように答えた。勇助は「そうか」と納得したものの、すぐにまた不安になってくる。 「だけど大丈夫なのか? あの電話って、知らない奴が出る可能性もあるだろ?」 「そうっすね」 この世界の連絡手段は、まちの特定の場所に設置されて
「へえ、このホラー小説、いっぱいポイントが付いてるんだねぇ。すごいねぇ」 僕がスマホをいじって小説を読んでいると、チナツがそれを覗きながら感心した様子で言った。 「安易な舞台設定に、テンプレートみたいな登場人物が乗っかってるだけの、ありきたりな小説だよ」 僕は朝から気分が悪くて、できれば彼女の相手はしたくなかった。それなのに小説の話になると口が出てしまうのは、端くれとはいえ、物書きの性《さが》だろう。 遠くの方で、カラスの鳴き声が聞こえる。梅雨時期のぬるい風が肌
学校の友達と一緒に、僕は潰れた遊園地に来ていた。 名前は『裏野ドリームランド』。 ここには『真実の迷宮』というミラーハウスがある。僕たちの学年で、ひそかに噂になっている場所だ。 僕も別のクラスの奴から噂を聞いて、一人だと心細いから、友達を連れて行くことにした。吉原という同じテニス部の男子で、仲が良い。部活ではダブルスを組んでいる。 僕に彼女ができてからは、以前のようには遊ばなくなったけど、それでも未だにこうして一緒に出かけたりする。 僕らの目的は、『真実
──あっ、おはようございます! お恥ずかしい話なんですけど、桐谷先輩と薫先輩のお二人にどうしても話したいことがあって、こんな朝早くに学校に来ちゃいました。今日なら二人とも、朝練に来るだろうなと思って、こっそり待ってたんです。 いやはや、興奮冷めやらぬってやつでして……あまりにも早く着いてしまって、部室の掃除してました。あはは。 ほら見て、きれいになったでしょう? 男テニ(男子テニス部)の部室は前々から散らかりすぎだと思ってたので、いい機会でした。 さすがにこ
17 ボロく、汚く、安く、そして一畳程度という狭さで、かつ出入り口の戸が無い部屋で、勇助と一条は横並びで座り、お互いに目を背け合って話していた。 「服って、どこに売ってるんだ? っていうか、売ってるのか?」 「知らないっす」 「仮にどこかに売ってたとして、この格好で買いに行くのか?」 「行きたくないっす」 「高くて買えなかったらどうなるんだ?」 「泣くっす」 スメルラヴァーズという名の、鼻の長い化物の襲撃をなんとかやり過ごしたが、こんな堂々巡りの会話を繰り
16 勇助は混乱し、固まった。さっき部屋に残してきたはずの一条が、なぜ半裸で目の前に現れたのか。しかもこんな非常時に。 「お前、何して──」 勇助が事情を尋ねようとした瞬間、恥ずかしそうに体を隠していた一条が、何か吹っ切れたように勇助へ飛びかかってきた。 「なっ……!」 とっさのことで反応できず、二人は床に倒れた。一条が馬乗りになる。 ほの暗い廊下の明かりの下、凹凸のはっきりした体が艶めかしい陰影を作っている。柔らかい尻が、勇助の腹に乗っている。 女性
15 臭すぎる。 まるでこの狭い部屋に、残飯入りのポリバケツが置かれているかのような状態だった──しかも漬物多め。 最初は部屋のせいじゃないかと疑った。 一条と二人で廊下に出て、フロントに鍵を預けて外まで出てみた。 ボロ宿『はいがん荘』の外。見慣れたいつもの黄昏、赤紫色のまち。 特に異変はない。 外に出ても、臭いは一向に消えなかった。 「やばいやばい、やっばいっすよ。頭がおかしくなりそうっす」 一条が両手で鼻を押さえ、首をぶるんぶるんと振った
14 勇助と一条、二人がなんとなく周囲を警戒し、後ろを振り返った瞬間。 「えっ……」 異変に気づいた時には、もう手遅れだった。 先ほど倒したはずの首のない巨大カメムシが、虫らしく六本の脚で胴を支え、立ち上がっていた。 策を講じる暇もない。 首があった部分から、霧吹きのように黄色い液がばら撒かれた。 勇助と一条はとっさに顔を両腕で守ったが、全身にその液を浴びてしまった。 「な、何すか、これ!」 二人の服は、黄色い染みだらけになった。 勇
13 視界に映る『ハのまち』のマップを見ながら勇助が訪れた場所は、二度と拝みたくないと思っていたあのボロ宿だった。 今朝見たとおり、滅入りそうになるくらい外壁が黒ずんでいて、腐った木製扉の横に立てかけてある看板には、かすれた文字で『はいがん荘』とある。 ちなみにこのゲームの世界のマップは、自分が開拓した場所であればきちんとデータが残る。皮肉なことに『フロントマン鈴木』との命がけの鬼ごっこのおかげで、だいぶ行動範囲が広がり、楽になった。 そんなアクシデントが無け
12 「来るなあ!」 勇助はショットガンで敵を撃った。もちろん、銃弾はあっさりと弾かれてしまう。 退魔手榴弾さえ無効化されるなんて……! 敵が一時的にバラバラになった時、油断せずこの場を離れていればこんなことには……! 悔やんでも悔やみきれない。 もう、ダメだ……。 銃弾のリロードが完了し、銃がガシャンと音を立てても、勇助は次の弾を放つ気になれなかった。 アイテムボックスに気を取られたせいで扉から離れてしまい、屋敷の中に逃げるという選択肢も無くな
11 進むも地獄、戻るも地獄。 勇助は焦った。 もう、諦めるしかないのか? 安全な方法は存在しないのか? ショットガンを手に、扉へ向かう。 「お客さぁん、お待ちくださいよぉ」 という顔面モンスターの低い声が、背中を押す。 勇助が扉のかんぬきに手を掛けようとしたその時、視界の右端に、気になるものが見えた。 メニュー画面上の映像ではない。 そこに、正面からは見えない隠れた位置に、アイテムボックスが一つ置かれていた。 アイテムボックスは玉手箱の
10 息切れや足の疲労、発熱が無いことに感謝しつつ、反対に、勇助はこのふざけた世界を呪った。 逃走し続けて、もう二時間になる。 背後からは未だ『フロントマン鈴木』なる顔だけの化け物が、じわじわと迫ってくる。 「お客さぁん、いい加減にしてくださいよぉ」 時折発せられるその低い声も、何度聞いたことだろう。 『ハのまち』特有のセクシーパブのヌード看板の女性の顔部分から、ちょうど重なるようにその顔面が出現した時には、妙なユーモアを感じて笑ってしまった。 ……
09 勇助は視界の左上部のダッシュゲージを気にかけながら、走っては歩きを繰り返して、『フロントマン鈴木』という名の顔面から逃げ続けていた。 黄昏《たそがれ》た昭和っぽい歓楽街の中を突き進む。 途中で幽霊らしき敵に遭遇したが、無視して走った。 このゲーム内には、しつこく追跡してこない敵もいるらしい。 その点『フロントマン鈴木』のしつこさは異常と言える。 「お客さん、勘弁してくださいよぉ」 敵の声が聞こえてくる。 また、勇助の鼓動が大きくなった。