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【旅レポ】英国道中膝栗毛 ロンドン・ロンドン・ロンドン その⑤

前回 ↓

前回までのあらすじ;勘違いにより、「ホテル」ではなく「ホステル」に宿泊することになってしまったお湯一行。ネットの情報を鵜呑みにした結果、30㎡ある部屋で泊まれるはずが10㎡の部屋に通され、朝食付きのはずが「都度5ポンド支払え」と言われる羽目に。

 あまりに及び腰の僕を見かねて、マツジュンがカウンターでダルそうにしている冷徹な眼差しのお姉さんの対応をしてくれることになりました。僕はロビーの椅子に座って事の次第を見守ります。

 なんやかんや言葉を交わし、マツジュンは「サンキュー」みたいなことを言って僕の方へ戻ってきました。

 「確認してもらったら、僕らは無料で朝食が食べられるみたい」

 旅の恥はかき捨てとはよく言ったもので、聞いてみるものです。どうやら、受付時のお姉さんの案内は誤りだったようです。僕たちは5ポンドを支払わずに朝食にありつけることがわかりました。

 僕は代わりに対応してくれた礼をマツジュンに言い、部屋に戻ると旅行会社に即座に「すまん…朝食がつかないと案内を受けたとクレームをつけたけど誤解だったわ…」と謝罪のメールを送りました。

 後日旅行会社から「すまん…部屋の広さは誤掲載だったわ。実際の広さは30㎡じゃなくて10㎡です。お詫びとして宿泊料金の10%を返金します」と、ずいぶん舐め腐った返信メールが届きました。

 こちとら床が狭いためにどれほどの不便を強いられていたことか、と思うと腹が立ちましたが、向こうがそう言うなら仕方がありません。甘んじて返金を受け取り、手打ちにすることにしました。しっかりしてくれよ、Ag○daさん。

 さて、それにしても部屋の広さは懸念点でした。アールズコートのホテルは「映画けいおん!」の聖地になっていたのでいくつかレビューを読んでいいたため、そこまで心配していませんでしたが、次に宿泊する予定のヴィクトリアのホテルが気になります。

 僕は念の為、宿泊データをチェックします。するとそこには、次のホテルの広さは「12㎡」と記載があるではありませんか。

 いまのホステルと同等の広さしかありません。正直、こんなにこじんまりとした宿では気も休まりませんし、大きな荷物を抱えている身としては不便で仕方ありませんでした。キングサイズのベッド一つを二人で共有しなければいけない予定だったのも、あまり気が乗りませんでした。

 ためしにアールズコートのホテルの状態をチェックしてみると、なんと日本では空きがなかった日程で、予約可能と出ています。急なキャンセルが出たのでしょうか。ヴィクトリアに泊まるホテルをキャンセルして、アールズコートのホテルを予約すれば、ロンドンの中心街からは離れてしまいますが、アールズコートで連泊できることになり、利便性は高まりそうでした。

 直前なのでキャンセル料はかかってしまいますが、僕は次に止まるホテルを変更することをマツジュンに提案しました。マツジュンもこのウ○コのにおいのするホステルにうんざりしていたためか、ホテル交換案には賛成してくれました。

 こうして僕たちは次の地雷(だったかもしれない)ホテルを回避することに成功したのです。

 一安心した僕たちは、眠りにつくことにしたのでした。

 この日以降の行程は、ここまで語ったような大きなトラブルもなく、旅程をただ単純に追っていっても面白味にかけるただの記録になってしまうので、各所であったエピソードを基に、あったことを網羅していきたいと思います。

その1「マツジュン魔法の杖 過払い事件」

 12月29日朝、目覚めた僕らは窓を開け放しているとウ○コのにおいがすることに気がつき、衛生環境の悪さにおののきました。

↓ 例のウ○コのにおいのする窓 景観は悪くない

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 午前中は徒歩圏内にある大英博物館を周りましたが、僕は十数年前に訪れたことがあり、正直たいして見どころのない施設だと感じていたので「速攻で見て出よう」と提案していました。随分と行列に並びましたが、十数年前の印象通り、たいして見どころのない施設でした。

 さりとて時間は矢のように過ぎるもので、ひと通り見終わる頃には14時前になっていました。こんな調子ではいくら時間があっても足りません。大英博物館内に出ているワゴンの出店でホットドッグをいそいそと胃袋に詰め、次の地点へ移動します。

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 次点はマツジュンが是非に行きたいと言っていた、魔法グッズが置いてある本屋さんです。魔法に関する書物や水晶、お面などのアヤしいグッズが販売しており、実際に購入できるといった面白いコンセプトのお店です。マツジュンはここでどうしても魔法の杖が欲しいと言い、35ポンド(約5,000円)を支払って購入していました。ハリーポッターに登場するような凝ったデザインのものではなく、ツルッとした木の棒でしたが、木特有の重みがあり、「ホンモノ」らしい雰囲気をたたえていました。

2019-12-2922-23-59<名称未設定>

 しかし後日、Amazonで同じ杖が15ポンド(約2,000円)くらいで購入できることが判明し、僕は「やーいやーい」と言っていたのですが、彼は「あの店で買った事実が重要なのだ」と酸っぱい葡萄理論に基づいた反論を展開し、僕を論破しました。

(その1「マツジュン魔法の杖過払い事件」終わり)

その2「SOHO 英国式日本食事件」

 本屋さんを後にした僕たちは電車を乗り継ぎ、僕の要望でT.Rexのボーカルであるマーク・ボランの亡くなった地やPink Floydのアルバムのジャケットとなった現在工事中のバターシー発電所などを巡礼し(このへんは70年代UKロック好きの僕の趣味を反映し、マツジュンが旅程を組んでくれました。たいへん感謝しています。)、これまた工事中MI6の本部を見物し、SOHOへと向かいました。

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 年末のSOHOはイルミネーションが施され、人が入り乱れ、お祭り騒ぎです。そういえばエドガー・ライト監督の次回作もSOHOが舞台なのだそうで、たいへん楽しみにしています。

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 お祭り騒ぎのSOHOを堪能した僕らはキングスマンの元ネタになったスーツ屋さんや現代写真ギャラリーを見学し(これも僕の要望ですね。ありがとうございます。)、なんだかんだ移動しているともう19時を迎えようとしていました。

 お腹が空いた僕らはSOHOでなにか食事を摂ることにしました。色々話し合った結果、僕は「イギリス人の想像する和食というのに触れてみたい」と希望を出し、現地の和食レストランに入ることにしました。それがWagamamaという日本では聞き馴染みのないお店でした。

 Wagamamaはすごい人気で、行列ができていました。これは期待できそうです。マツジュンは行列に並んでまでご飯を食べることに全く理解を示さない男でしたが、僕がぜひにと言うので、一緒に行列に並んでくれることになりました。

 しばらく待って店内に通され、メニューを見ます。「カレー」「ラーメン」「鉄板焼き(焼きそばのことらしい)」「どんぶり」「ココロ・ボゥル」というセクションに別れています。日本食屋のメニューで「天ぷら」や「寿司」ではなく、いきなり「カレー」という開幕に、僕はノックアウトされました。

 「ココロ・ボゥル」とは、要はチキンと野菜の乗った米の事らしいことが写真を見てわかりました。わざわざ「どんぶり」と分けて記載しているのだから、よほど自信のあるメニューなのでしょう。ちょうど野菜不足を実感していたところだったので、僕たちはココロボゥルを注文することにしました。それだけで足りるかはわからなかったので、餃子を一皿、追加で注文しました。

 ドリンクはキャロットジュースを注文し、ココロボゥルより先に運ばれてきたのですが、その鮮やかな色からは想像できないくらい苦みの勝った甘苦さが口の中を支配し、湿布の匂いがしました。

 なんというか、もう1回はいいかな、という味です。「これがイギリスの味覚か…」洗礼を受けたような気分になりました。

 こうなると、ココロボゥルへの期待が止まりません。どのような「英国式日本文化」を見せてくれるのか、楽しみでしかたがありません。

 運ばれてきたココロボゥルの見かけは、斬新でした。カレーペーストの塗りたくられたチキンまではまだわかりますが、生の紫キャベツにニンジン、茹でたエンドウ豆がライスの上に乗っているというのは新感覚でした。おそるおそる口に運びます。僕自身の感覚ですが、やはり生野菜にライスというのはミスマッチです。チキンがあるからそれで相殺してなんとか食べることが出来る、という感じです。

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 どのタイミングで使うかよくわからないカレールーもドロッとしていて、異様に味が濃くて、僕は途中で食べるのを諦めました。

 ちなみに、ライスの味付けは、これでもかというくらいに醤油がかけてあって、辛かったです。

 本当にお祭り騒ぎだったのは、SOHOではなく、ココロボゥルの味付けだったのかもしれません。

 なんというか、もう1回はいいかな、という味です。「これがイギリスの味覚か…」洗礼を受けたような気分になりました。

 追加で頼んだ餃子も味がするんだかしないんだか、日本人の想像する餃子とは異なる餃子でした。苦かったです。

 なんというか、もう1回はいいかな、という味です。「これがイギリスの味覚か…」洗礼を受けたような気分になりました。

 後日、イギリスで暮らす先輩と会うことになるのですが、Wagamamaに行った旨を伝えると「あれが日本文化として認知されているのはちょっと許しがたい」とおっしゃっていました。日本人的には、そういう認識のお店だそうです。ほぼ同じ感想を抱きつつ、僕たちはWagamamaに出来た行列を横目に、「なぜこのクオリティで行列ができるのだろうか」と首を傾げながら店を後にし、ウ○コのにおいのするホステルへ帰ったのでした。

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 しかしこれも国民性の問題で、これがイギリス人の「美味しい」と感じる日本食像のひとつなのかもしれません。そう考えると、日本人の僕が「それは日本食じゃない!」と独善的にズカズカ意見できるものでもないな、と思いました。食の多様性を思い知らされた一件でした。

(その2「SOHO英国式日本食事件」終わり)

 旅程3日目の12月29日に起こった事件はこのくらいでした。今後も、さして大きなトラブルというのは起きていないのですが、ちょこちょこあった事件を取り扱って行きながら旅の行程を追っていきたいと思います。次回「なんとかストーン国際交流失敗事件」。乞うご期待。

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