ショートショート『さしすせそサイン』
右手を握る。
左手を握る。
丸めた両手を縦に重ね、回す。
「了解」
サインを確認し、それを実行する。事前に全体の流れは決めているが、大事な場面、自分ひとりだけでは意思決定ができない場面ではサインで確認することになっている。
右手を口元へ。
右手で口を一周。
さらに一周。
「オッケー」
サインを覚えるのは大変だったが、喋らずに意思疎通できるのは気持ちがいい。このサインのおかげで、一挙手一投足に迷いがなくなり、自信を持ってプレーできる
両手を縦に重ねる。
両手を回す。
「?」
このサインは何だ。さっきと似ているサインだけど、ちょっと違う。回す時に、チューブを絞るように手を握りながら、回している。だが、それが何を指しているのかがわからない。
監督は伝わっていないことを感じ取ったのか、近くにおいてあったホワイトボードを手に取り文字を書き出した。
『マヨネーズ』
「なるほど」
もっと手話表現を覚えないとだな。「料理のさしすせそ」以外にも調味料はたくさんある。それに、妻というベテラン選手に頼らずに料理ができるようにならないとだ。
–––––完–––––
この物語は、たらはかにさんの #毎週ショートショートnote という企画を基に作りました。
今回のお題は、『さしすせそ』と『サイン』でした。
P.S.
こういう企画に参加するのは初めてで、緊張しながら書いてました。
これからも参加していこうと思っています。よろしくお願いします。
参考までに
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