愛と友情に救われた男のはなし
容疑者Xの献身 東野圭吾
ガリレオの初の映画シリーズとしても知られる作品です。
主演の福山雅治に加え、堤真一がゲストとして出演しています。
この作品は、中学生くらいの頃に見ていた記憶がありますが、いま改めて見てみると、ボロボロ泣いてしまいました。
なぜか
私は、この作品は
・愛
・友情
の二つの柱で成り立っていると思います。
中学生の時には、そんな感情が芽生えていないのは当然でしょう。
だから、今になって振り返るとグサグサ胸に突き刺さってきます。
(※以下ネタバレ含みます)
石神哲哉という男
なんといっても、この映画および小説のメインは堤真一演じる石神哲哉という男なんです。石神の人生をたどっていくことでサスペンスの域を越えて考えさせられる映画となります。
帝都大学で、数学を専攻し将来は数学者を目指す。この時に、同期の湯川と出会うことになる。湯川とは大学時代にとても仲が良く二人で語り合うこともしばしばあった。しかし、家庭の事情(母親が寝たきりになってしまう)により、数学者の夢は断たれてしまう。
大学卒業後は、高校で数学を教えることになる。しかし、生徒は理解を示さずに、まじめに石神の授業を聞こうとはしない。
その生活にある種の虚無感を感じた石神は、首をつって自殺することを決意するのであった。しかし、首に縄をかけたその時、隣に引っ越してきた花岡靖子が挨拶に来たのだ。そこから石神は花岡に恋心を抱くことになる。
~ここからは私の考えが含まれます~
・靖子への愛
石神は、花岡靖子に恋をしたことで、鬱屈した生活に一筋の光が差したような感覚になったのでしょう。
そんなときに起きた事件によって、石神と靖子の距離は縮まるのです。
そして、石神と靖子は事件を中心として依存関係となるのです。
石神は愛ゆえに、靖子を救おうとしたのでしょう。弁当屋で見る靖子の笑顔、靖子の娘の美里に学校帰りに手を振ってもらえたこと、そんな些細なことが彼の人生の救いだったのだと思います。
・湯川との友情
帝都大学時代の同期である湯川とは、皮肉にも事件がきっかけで出会うこととなります。何とも言えない巡りあわせですね。湯川は石神のことを「天才」と認め、数少ない友人と再会できたことに喜んでいます。
しかし、石神から見た湯川の姿はどうでしょうか。
大学で教授を務め、身だしなみも清潔感があり、刑事に口が利けるという社会的立場にあること。湯川は、石神にないものを幾つも持っているのです。
私だったら、劣等感で押しつぶされてしまいます。嫉妬という表現は石神には似合いませんが、それに似た感情になっていたと思います。ストーリーが進んでいくうちに、彼らには確かに友情で繋がっていると確信します。
皮肉にも事件の犯人である石神と、事件を解決しようとする湯川の二人の構図はなんとも悲しいものですね。そんな湯川に挑戦状を叩きつけることになるが、その反面で湯川に解いてほしいと思う気持ち石神の気持ちは少しわかる気がします。
正直、殺人のトリックとしては驚くものではありませんでした。あと、公開してから散々言われてきた、映画版のみの描写である雪山に湯川と石神で登るシーン。たしかに、「雪山のシーン長くね?」と思いました。笑
しかし、雪山に連れ出し、湯川を殺してしまおうかという石神の気持ちの動きや、結局は吹雪によって離れてしまう湯川を助ける友情を表す描写は必要だったなと思います。
最後の堤真一が泣き崩れるシーンは是非とも皆さんの目で見ていただきたいと思います。こうなってしまったことを悔しがって扉を叩く湯川の姿はもどかしさを感じさせます。
令和元年にこの映画に再会できたことを嬉しく思います。
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