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中国・浙江省のおもいでvol.5

『実力試験』

遅刻の理由は、教授と生徒間の連絡が行き違ったためだった。しかし、そんなことを親切にしてくれた学生たちの手前言うこともできず、すぐに中国語が出てくるほど、レベルは高くなかった。

彼の助け舟は的確で、同年とは思えないほど大人びて見えた。彼は僕の後ろから教授の前へ出て、遅刻を詫び、広大なキャンパスに見とれていたため遅くなったと説明した。流暢な中国語と落ち着いた振る舞いで教授は納得したようだった。彼に礼を言って席についた。思えば中国に来て日本語を喋ったのは初めてだった。

 日本人の学生ばかりが集められ、実力テストが行われた。試験の結果に基づいてクラス分けを行い、他国からの留学生たちに混ざって講義を受講する。「さあ、お手並拝見」と言った所だろうか。8時から始まった試験は、休憩を挟み午前中を通して行われた。

 休憩中助け舟を出してくれた彼とトイレで鉢合わせた。先ほどの助け舟に礼を言うとすぐに打ち解けた。同じ大学の同じ学年で話したこともなかったことが驚きだった。

 昼食にO君と彼のパートナーのワン君、ぼくとフェイで食堂へと向かった。食堂は南門を潜り、学生街へ入る。学生寮が何棟も並び、大学と街が融合したような風体だった。さらに3階立ての学食など見たことがなかったぼくとO君は目から鱗の連続だった。ぼくは昨日の胃痛がまだ残っていたのでお粥を選んだ。

 午後からは西湖(シーフー)へ向かう予定だった。雨が小降りになっており、今が観光にベストなタイミングだと言う。

 食堂前で別れると、一時間後に食堂で待ちわせる約束をしてフェイたちと分かれた。O君とホテルに帰り、準備を済ませるとまた食堂へ向かった。

 西湖へは地下鉄を乗り換えて向かう。学生街を抜け、しばらく市街を歩く。八百屋や文房具屋など小さな商店の間にタピオカ専門店やラーメン屋など、ユニークな街並みだった。

 地下鉄に辿り着くと、また日本とは違った光景が待っていた。(『中国・浙江省のおもいでvol.6』)



3・4話目も良ければどうぞ🎈



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