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中国・浙江省のおもいでvol,12,5(これまでのあらすじ)

 『中国・浙江省のおもいで』は昨日で12回目を迎えることができました。日頃から読んで頂いている方、通りすがりで手にとってくれた方、ありがとうございます。

 本文は「これまでのあらすじ」をそれぞれの回の引用を踏まえつつ、振り返ります。12回目までで総文字数12,000字、ボリュームは短編小説ほどになっております。それではお楽しみください。

あらすじ

 2019.3.2〜4.1の中国浙江省、短期留学のおもいでを連載。雨が降り続け、霞がかかる幻想的な都市浙江省。日本にはない近未来的な空間とそこに暮らす人々を描いたエッセイ(小説)。20歳の筆者が現地でのおもいでを振り返りました。日本の都会と無機質な人との関わりの中で、忘れていて夢を取り戻すきっかけになった留学を小説調に綴っています。


1話『硝子戸~プロローグ~』

 一年前、2019年の3月から4月までの一ヶ月間、ぼくは中国浙江省のある大学に短期留学していた。新型コロナウイルスが流行する前のことだった。今は封鎖されている。二十歳は何か新しいことを挑戦するには良い機会だと思った。それに、一人で読書にふける毎日に嫌気がさしていたところだった。とにかく何か新鮮なものを、自分の外の世界に求めていた。

 1中国・浙江省へ入国し、異国での生活がスタートした時の心境と中国という巨大な大陸を、肌身で感じたままに執筆。見知らぬ土地で一人きり。新たな環境への期待と不安がないまぜになった20歳の目に映る世界を描写しました。

2話『フェイとの出会い』

「ニィハオ。チューツゥジィエンミェン。(こんにちは。初めまして。)」声は震え、顔はひきつる始末。おまけに女学生がクスクス笑い始めた。ほれみたことか。授業で習う外国語なんてあてになりゃしないんだ。恥ずかしい・・・・。早くなんとか言ってくれ。                今度はぼくがクスクス笑う番だった。「あぁ、おはよう?はじましてぇ?」

浙江省での思い出を語る上で欠かせない、中国の女学生「フェイ」との出会い。ちぐはぐな中国語と日本語のやり取りから、チャーミングで健気なフェイの人柄を丁寧に書きました。もしかしたら中国人の印象やイメージが変わる一遍になるかもしれません。

3話『円卓』

「很好吃!ヘンハオチー!(とっても美味しいです)」覚えていてよかった中国語の一つだ。食事が楽しめるなら、どんな国でも生きていけるんじゃないかと夢想するほどだ。一緒に食事を楽しめる人に出会えたならなおよし。

歓迎会の席での話。中華街でお馴染みのクルクルとまわるテーブル「円卓」を囲む場面。見たこともない料理に、いつを手を出してよいかわからない円卓の無法さに笑ってしまうような回になっています。

4話『激痛』

中にはよくわからない料理があったが、残さず食べるのが日本人というもの。隣で僕の皿に取り分けてくれた優しい女学生の顔が浮かんだ。彼女を責めるわけにはいかない。

激しい腹痛に襲われた初日の夜の話。海外の食べ物は物珍しさもありそれが美味しいとなると、箸が止まらないのです・・・・。日本を出たものの宿命だったりします。共感できる方も多いのでは?

5話『実力試験』

 日本人の学生ばかりが集められ、実力テストが行われた。試験の結果に基づいてクラス分けを行い、他国からの留学生たちに混ざって講義を受講する。「さあ、お手並拝見」と言った所だろうか。8時から始まった試験は、休憩を挟み午前中を通して行われた。

実力試験の抜き打ちテストです。日本人学生のOや中国人学生ワンとの出会いによって思わぬ展開へ。次々に人の輪が広がってゆくのも留学や旅の醍醐味なのかもしれません。

6話『湖上』

恐ろしいほどに静かな湖面に圧倒されていると、彼女たちが手にチケットをもってやってきた。まさか・・・・。時既に遅しだ。救命具を係員に着せられ、右往左往していると、彼女に手をひかれ小型の船に引きずりこまれた。

世界遺産の西湖が舞台。霞で白く染まった幻想的な風景に圧倒されていたのも束の間、まさかのボート遊覧に。3メートル先も見えない悪天候のなかで無理やり湖へ繰り出してしまった回です。

7話『神隠し』

船を中心とした水の波紋は徐々にひろがり、やがて湖とひとつになる。沈黙ではなく、静寂。喋れないのではなく、喋らない。声に出すことより、耳で聞くこと。肩をゆすられて、いつの間にか目を閉じていたことに気づいた。

小舟でフェイと二人きりで波に揺られている場面。広い湖上で霞によって閉鎖された空間。そこで二人はお互いの忘れることのできない過去を語らうことに・・・・

8話『永遠』

はしゃぎすぎてどこにいるか、分からなくなった彼らは西湖の監視員によって並走されて岸に辿り着いた。男子の精神年齢は万国共通でかなり低いらしい。ちょっとだけ羨ましく思ったことは秘密にしておいた。

小舟をおり、繫華街へ向かう。湖を堪能したぼくらは繫華街の薫りに誘われて歩き始まます。向こう見ずな楽しみ方も無鉄砲な無邪気さも新鮮な1シーン。友情が徐々に深まってゆく過程を一つずつ書いています。

9話『不夜』

 「じゃあ明日はそこらへんのトイレで目を覚ますことになるだろうね」とワンがニヤニヤしている。これにはさすがのOも「どういうことだ?」といぶかしげな目線をぼくに送ってきた。「今度はサソリでも出てくるの?」と半分本気、半分冗談で聞くと「もっとおいしいもの!」とフェイが答えた。

西湖文化街の居酒屋が舞台。引用は初日の料理が当たってしまい、怖がっているぼくへの一言。この後、サソリなんて出てこなかったのだけれど、食事を終えて無事だったのは二人でした・・・・

10話『星と夢』

「俺たちはいい教育を受けて、使い捨てられる商品になるだけなんだといつも思うんだよ。中国の大学生はバイトをする時間もなければ、こうして西湖をゆっくりと堪能する時間もないんだ。君たち日本人を見ているととても羨ましく思う。」

繫華街をでたぼくらは再び夜の西湖へ向かいます。日中の景色とは別の生き物ような西湖。嘘や見栄を張る気も失せるほどの美しさ。そこで本音をぶつけ合ったことは今でも忘れない、大切な思い出の一部。

11話『沈黙の温度』

フェイはぼくの目を見つめながらゆっくりと聞いていた。彼女は答えられないことには無理にこたえようとしない。ただただ「聴く」。それは心地よく、心から安心できる空間。ワンも黙って聞いている。

10話に続く4人の会話です。20代のぼくらが等身大で話す言葉は幼くて、幼稚な考えかもしれないが、それぞれの現実と理想、夢はかけがえのない財産に。

12話『step』

教室に入るとやけに背の高く、頭髪のうすい男の教師が「お寝坊君たち、こちらへいらっしゃい」と手招きしてきた。その教授は日本語でそう告げると、教室中によくとおる声で「私が笑ってしまうような、秀逸な言い訳を聞かせてくれ」

明け方の西湖を背景にタクシーで大学まで戻る。名残惜しさと、また逢う時の期待を胸に別れた。午後からの合同授業に遅刻して参加したぼくらを待っていたのは癖の強い日本人教師だった。物語は新展開へ。

  毎回が新展開を迎えていますが、13回目からは2部に移り、周りの人々も変わって行きます。魯迅の生家を訪れるエピソードや癖の強い日本語教師たちとの出会い、中国の学生たちとさらに親密になってゆきます。

 毎日更新ではありますが、読んでくれる方の存在や「スキ」、「コメント」に励まされ、楽しんで執筆することができています。作品に対する質問や意見など大歓迎ですので、何かしら反応頂けると嬉しいです。

 「言葉で人を癒す」小説家になることを目指して、日々精進してゆきますので、今後ともご愛読くださいませ。


                                  「言葉が人を癒す」 taiti





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