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英単語集は生食禁止?

英単語集を生で食べるの?そもそも食べられるの?と疑問に思った方も多いと思います。とはいえ、昔から辞書を食べて覚えたという逸話はあります。なので今日は旬の英単語集を使ったとっておきレシピをご紹介します。

・・・というのはウソですが、これからお話しすることのメタファーではあります。

英単語集を買ってきて最初に目を通す時には、辞書を引きましょう、という提案です。なぜこのような提案をするのかというと、英単語集の性質にその理由があります。英単語集は他の学習書に比べて小さな判型で売られます。そして通常の英語学習を補うという目的に対応するために収録語数を確保する必要があります。このため、1語あたりの情報量が少なくなり、暗記する上で十分な説明が付いていない語もあります。また、英単語集の多くは単著、すなわち、おひとりの著者の方がまとめたものです。プロジェクトチームによって作られる辞書と比べて制作の体制が脆弱であることは否めません。このため、辞書に比べて誤った情報が書かれる可能性が高くなります。もちろん、編集者の方も目を通しますし、何度も校正をしますから出版時点ではミスは最小化されます。しかしそれでも辞書と比べれば情報の精度は相対的には低いと言えます。

つまり、英単語集を使う時に最初に辞書を引くというのは、見出しとなっている語の知識を補強・補正するためであるということです。そして辞書を引いて補うべきと判断した情報は、単語集に書き込むか、別に単語帳を作るかといったやり方で書き留めて暗記に備えます。例えば、uniteという動詞は『英単語ターゲット1900』には次のように載っています。

ここに3つの語義が出ています。1つめの「を団結させる」と3つめの「団結する」は、X unite Yという他動詞のパターンとY uniteという自動詞のパターンの対応で、〈変化〉を表す動詞の特徴的なしくみです。これは文法で文型の知識として学ぶことですから、英単語の暗記に先立って取り組む学習の一環です。問題は2つめの「(を)結合する」です。格助詞が「(を)」と括弧付きで表示されています。これは訳語にサ変動詞を用いる場合に生じる問題です。日本語では和語の動詞は自動詞と他動詞で別の語形を用います。「ドアが開く」に対して「ドアを開ける」などのように対応します。これに対して漢語動詞であるサ変動詞は自動詞と他動詞で同じ語を用いることがあり、「結合する」もその一つです。つまり、「結合する」という意味の時にも、X unite YとY uniteのパターンがありそうだな、というところまでは文法知識があれば予測できます。しかし、「結合」は単一の物では実現できません。何かと何かで「結合」するのです。もちろんこのYがY1 and Y2のように複数示されていればよいのですが、そうでない場合はどうするのかが気になります。というか、気になってほしいところです。ここで辞書の出番です。

これは、EAST版の『ジーニアス英和辞典第5版』からの引用です。上の画像はuniteの他動詞用法、下の画像は自動詞用法のものです。辞書を引くことで前置詞withを伴うことがあることがわかります。すなわち、X unite Y with Z(XがYをZと結合する)という他動詞のパターンと、Y unite with Z(YがZと結合する)という自動詞のパターンがあるわけです。こうした情報を書き添え、書き出して覚えていくのです。

ところで、ここまでお読みになって、単語を覚えるのにも文法知識が必要なんだな、と感じた方もいらっしゃると思います。これが「文型」の知識の一部です。文型を学ぶ際にはこうしたところにも意識を向けていく必要があるわけです。

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