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文法学習の「わかりやすさ」

今回は「わかりやすさ」というお話です。ことばを学ぶうえで文法を学ぶことは重要なのですが、この文法を学ぶのが苦手という人も多いと思います。わかりにくいよりわかりやすいほうがいいに決まっていますが、この「わかりやすさ」が難しいのです。

以前にも述べましたが、文法の説明は抽象化すればするほど多くの現象に当てはまるものになりますから、覚える情報量は少なくてすみます。しかし、抽象的なぶんだけ理解が難しくなります。抽象度の低い説明はあまり多くの現象に当てはまるものではないので、文法全体をカバーするにはたくさんの説明を覚えなければなりません。その代わり、抽象度が低いので理解のハードルは下がります。

また、個々の現象に触れる、つまり実際にことばに触れながらことばのしくみを発見していくという帰納的な学習は時間がかかりますが理解は比較的容易です。逆にことばのしくみを先に学び、それを具体的な事例に当てはめていくという演繹的な学習は抽象度の高いところからスタートするのではじめは難しく感じますが、比較的短時間で授業を進めることができるので、予備校の授業などで用いられます。

包括的原理の理解と個別的原理の理解、帰納的学習と演繹的学習。これらは学習者一人一人によっても個人差があり、どれがわかりやすいと感じるかは人によって異なります。上では「丸暗記」の場合に触れませんでしたが、丸暗記でうまくいく学習者は自ら原理を見つけ出していくので帰納的な学習をしているといえます。

実際のことばの学びではここで述べた方法を組み合わせながら文法を学んでいくことになります。そのときそのときでもっともわかりやすいと感じるやり方で学んでいくしかなく、「これが万人にとって最もわかりやすい」などと決められるようなものではないのです

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