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題名読書感想文:07 そのままでも強いタイトルは本当に強い

 「そのままがいい」みたいな言葉があると思うんです。「ありのままで」みたいな一派ですね。「素材本来の味を」もその一派でしょう。

 万能なものなんてなかなかありませんから、何でもかんでもそのままでいいわけがないとは思うんです。何でもそのままでいいのなら、調理なんてせずに生えてる大根にそのままかぶりつけって話になってしまいますから。ただ、そのままがいい場合があるのも事実だとは思うんです。こちらを調理で例えるならば、素材が抜群にいい場合なんかがそうだと考えられます。

 書籍のタイトルもまた同様でしょう。変にこねくり回すよりも、内容をそのままタイトルにするだけで充分に目を引くものになる。時としてそんな内容を扱う書籍が出てきます。例えば、「芸能人・芸能事務所の法務と税務」です。

 確かに、芸能人や芸能事務所にも法務や税務が必要でしょうけれども、その手の書籍は非常に少なく、内容をタイトルにするだけでかなりのインパクトがございます。出版社は「ぎょうせい」という、法規集や判例集を出版する、そっち方面にガチなところでございます。以前の社名が「帝国地方行政学会」だったことからも、ガチさがうかがえますね。要はタイトルにインパクトがあるし、内容もしっかりしているわけです。

 法律がらみでもう1冊ご紹介いたします。「この本は環境法の入門書のフリをしています」です。

 先ほどの芸能事務所の書籍と比べてひねりが効いているタイトルではございますけれども、著者が本当にフリをしているつもりで書いているのならば、こちらもまた看板に偽りなしのタイトルと言えましょう。

 著者の西尾さんは環境省の官僚として事務次官までやられた方でございます。

 しかし、一方で自著に脱力系タイトルをつける一面も持っておりまして、他の著作も「ど~する」とか「わか~る」とか、読む人の背骨をずらすような名前がついています。

 お仕事に必須な知識であるのは間違いないのですが、そのまま書いたら物凄いタイトルになってしまった、みたいな書籍もあります。例えば、「現場警察官のための死体の取扱い」がそれです。

 警察官にはそういう業務もあることを、我々はクライム系ドラマだったり日々のニュースだったりで何となく知っているわけなんですが、いざ実用書としてありのままのタイトルで登場すると迫力が半端ないですね。

 当然ながら、この手の書籍は発行部数もそこまでじゃないでしょうし、類似商品がバンバン出るようなものでもございません。ただ、特定の方々にとっては必須な知識であるためか、似たような内容の書籍は少数ながらたまに出版されているようです。

 業務に必須な内容をそのままタイトルにしたらすごいことになった、という書籍は他にもございます。例えば、「救助のためのクルマの壊し方」です。

 先ほどの書籍が警察関係ならば、こちらは消防関係と言えましょう。事故の際などに、車が激しく破損してしまい、中の方をなかなか助け出せない時がある。その時に、構造をきちんと理解して素早く安全に壊す必要が出てくるわけで、そのための知識が詰まった書籍だと考えられます。

 これもまた、特定の方々には必須の知識を扱った書籍でございますけれども、車を壊すための書籍自体がまず存在しないため、ただただ内容を淡々と載せるだけでインパクト強めのタイトルになっていいます。

 ただ解説するものの名前を併記したらものすごいことになってしまったタイトルもあります。それが「『心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律』及び『心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律による審判の手続等に関する規則』の解説」です。

 こちらはタイトルを見てもお分かりの通り、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」と、それを受けて制定された「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律による審判の手続等に関する規則」の解説をしている書籍でございます。それぞれの名前がかなり長いため、ふたつ併記しただけでものすごくなってしまったわけです。

 ちなみに「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」は「心神喪失者等医療観察法」や「医療観察法」の略称で呼ばれているようです。

 この手のタイトルは探せばまだまだあると思いますが、今回はここまででございます。読んでくださいまして、ありがとうございました。

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