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パロディ書籍名収集記 「〇〇は××の夢を見るか」編

 世の中、毎日のように膨大な本が出ていますけれども、たまにどこかで聞いたようなタイトルがあるんです。要は以前に発売された作品のタイトルのパロディなんですね。元ネタは有名な古典だったり大ヒットした作品だったりするわけで、いわゆる「二匹目のドジョウ」を狙っているものと考えられます。

 ただ、思うんです。「これをパロディにしたらいい感じになるんじゃないか」と思いついた人も、それはそれで才能があるのではないかと。「この言い回しは優秀だ、使えるぞ」と見抜いたわけですから。

 しかし、それにしたってドジョウを狙う人が多いんです。二匹目のドジョウに留まらず、三匹目、四匹目と狙う人が現れる。つまり、それだけ同じ出典のパロディが出まくっていることになります。どんなパロディタイトルがあるのでしょう。私、単純に気になりました。

 だから、「もっとパロディはいねえか」とナマハゲのような独り言を呟きながら、ネットで検索してパロディを探し求める行為を繰り返していたんです。お陰様でパロディはそれなりに集まったんですが、せっかくですから集めた中でも興味深いものをご紹介しようと思い、noteでやってみることにしました。

 調査には主にアマゾンの検索を使っています。電子書籍は個人による販売も多く、販売が終了するとサイトから消えてしまう場合があるなどの点を考慮し、基本的には紙でも出版されているものを選んでいます。パロディかどうかの判断は私の独断で判断しているなど、雑な調査かとは存じますが、軽い気持ちでお楽しみくだされば幸いです。よろしくお願いします。

 今回、選んだタイトルは「〇〇は××の夢を見るか?」です。本家はフィリップ・K・ディックの小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」です。1968年発表、日本語版は1969年に出版され、1977年にハヤカワSF文庫でも発売されています。

 人間とアンドロイドの違いや、そもそも「人間とは何か」という疑問を投げかける作品でございまして、ウィキペディアにも記述があるように、この独特なタイトルは膨大なパロディを様々なジャンルで現在まで生み出しております。

 とりあえず、アマゾンで「の夢を見るか」で検索してみたところ、出版年月日が最も古いパロディ作品、すなわち「二匹目のドジョウ」と思われる作品はこちらでした。

 「アンドロイドは電気毛布の夢を見るか?」は1987年11月1日発売の作品です。本家をほんの少しだけ変えたタイトルは、まさにパロディ黎明期といった印象です。

 以降、書籍でも多くのパロディもしくはオマージュが生まれるわけですが、大きく分けて4つのパターンが見られました。まず「アンドロイド」を残すパターン、それから「電気」を残すパターン、本家の雰囲気を何となく引き継ぐパターン、「夢を見るか」以外は受け継がないパターンです。どのパターンもタイトルの最後に?をつけているものとつけてないものがございます。

 アンドロイド残しのパターンですと、2010年7月1日発売「植物はアンドロイドの夢を見るか」のように、本家では先頭に持ってきていたはずのアンドロイドをなぜか電気羊の位置に持っていったタイトルが多く見られます。

 アンドロイドの位置は合ってるんですけれども、いろんなものをくっつけて大変なことになっているタイトルもございます。

 発売は2018年1月4日です。本家も長めのタイトルのため、当然ながらパロディもタイトル長めになりがちですが、確認できる限り上記作品が最も長いタイトルの書籍でした。

 電気残しのパターンは「羊」の部分を他のものにすげかえるわけなんですが、アンドロイド残しとは異なり、「電気〇〇」はおおよそ本家と同じ位置になっています。2006年7月28日発売「手提げコウモリは電気冷蔵庫の夢を見るか? 」がその一例です。

 ただ、中には特殊な形もあります。

 「電気」が冒頭に来ているという、電気残しでは数少ない、本家と電気の位置が異なるタイトルでして、しかも「電気執事」というしっかりとしたダジャレが入っています。パロディが多いタイトルの割に、本家をダジャレでもじったものは極めて少なく、貴重な作品となっています。

 雰囲気残しは、すなわち「アンドロイド」も「電気」もないけどSFっぽいタイトルになっているものを指します。現実の技術を用いたものも多く、1997年1月28日発売「テレビはインターネットの夢を見るか」、2009年11月1日発売「携帯電話は人工知能の夢を見るか?」、2015年2月16日発売「電子書籍は本の夢を見るか」など、発売された当時の時代が垣間見えるかのようなタイトルも散見されます。

 もちろん、中にはタイトルだけだと内容があまり見えてこないものもございます。例えば、こちら。

 本家と無関係パターンは、夢を見ているか疑問を呈している以外はかなり自由なタイトルが揃っています。その萌芽は前世紀から存在しておりまして、数十年前からこんな不思議なタイトルが発売されています。

 無関係パターンは「アンドロイド」も「電気」もなく、雰囲気さえも本家から離れてしまっているためか、「誰が何の夢を見ているんだ」とツッコんでしまいそうになるタイトルが多いです。

 魔法使いが登場するものや、おサルさん、渋谷のギャルなどもいて、見る夢も完全犯罪から熱帯雨林、萌えアニメに至るまで揃っており、なかなかの混沌具合です。

 個人的に最もよかったのが、「病院は2035年の夢を見るか」です。発売は2018年1月9日です。

 どうしてこんなタイトルにしたのでしょう。命名者に是非聞いてみたい気分です。「病院」という雑誌の特集名という点も高ポイントです。明らかに医療業界の人向け雑誌でございまして、そんなところに突如として現れたフィリップ・K・ディック。世の中、本当に何が起こるか予想がつきません。

 現在のところ、最も新しい「夢を見るか」作品は2023年9月25日発売の「生成AIは電気羊の夢を見るか?」です。世相を反映したタイトルですね。「電気」どころか「羊」まで残っているパターンです。

 今回は以上になります。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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