題名読書感想文:29 人名が他の名前に見える時
本の題名だけを読んで感想文を書く。それを読書感想文と言い張っているのが、題名読書感想文でございます。ただ題名を楽しんでいるだけですので、読書ほどの学びはありません。ほぼゼロと言ってもいい。よろしくお願いいたします。
今回のテーマも「人名」です。ただし、前回は別の名前が人名に見える題名を紹介したのに対し、今回は人名が別の名前に見える題名となっております。
前回と真逆のパターンではございますが、取り上げる書籍は前回同様、自然科学のものが多くなっています。何なら全部と言っていい。しかも、テキストの類ばかりでございます。
と申しますのも、そちら方面の教科書の中には「人名+分野名」という形式の題名を用いる一派が存在しているんです。例えば、「ファインマン物理学」がそれです。
物理学者のファインマンが作った物理学のテキストだからファインマン物理学というわけです。しかし、文化圏が変わると人名もまた大きく変わります。ですから、違う文化圏の人名は人名と認識されづらくなるどころか、別の何かの名前に見えてくる可能性があるわけです。
「スター生物学」なんかはその典型でしょう。
スター生物学だなんて、星形の生物ばかり扱った学問か、もしくは生物学でもものすごく人気がある教科書なのか、みたいな誤解が生まれる余地が出てくるわけです。前者はマジのスター、後者は比喩としてのスターですね。
ちなみに著者のスターさんはスペルが「Starr」でございまして、星のスターである「star」とはrの数が違います。しかし、日本語にしてしまうと同じ表記になってしまうため、何だか輝かしい生物学の教科書になってしまうわけです。
「ブラック微生物学」という本もございます。
この題名では黒い微生物だけを扱ったマニアックなテキストにも読めてしまいます。もしくは、ブラック企業的な意味でのブラック、つまりはヤバい微生物だけを扱ったテキストであるかのようです。
この教科書を書いたブラックさんのスペルは「Black」でございまして、黒のブラックと同じでございます。
他にも色みたいな人名がテキスト化されていないか探してみたところ、「グレイ科学」の存在を確認できました。
こちらのグレイさんは「Gray」でございまして、こちらも灰色のグレイと同じスペルでございました。化学物質には灰色の物体になるものがしばしばあるので、ピッタリと言えばピッタリです。
他にも「ウエスト固体化学」という本がございます。
固体という言葉のせいか、同じ姿勢のまま長時間の作業をしまくったせいで腰が固まってしまったかのように見える魅力的な題名です。
ちなみに、著者のウエストさんはスペルが「West」でございまして、「西」を意味するほうのウエストでございました。そう言えば、日本にも西さんっていらっしゃいますし、それの英語圏版だと言われれば納得ができます。ちなみに、腰の方のウエストは「waist」でございます。
無機化学のテキストでは「ハウス無機化学」がございます。
家で無機化学を学ぶにはピッタリのテキストです。また、「ハウスバーモントカレー」みたいに企業名を製品名にくっつけて紹介するCMの影響か、ハウス食品のテキストのようにも見えますね。食品の開発には無機化学の知識が必要な場合だってあるでしょうし、ハウス食品が教科書事業に足を踏み込んでもおかしくはありません。そうなった場合は「ハウス無機化学」みたいな題名になるのでしょう。
ちなみに、著者のハウスさんはスペルが「House」と、こちらもマジハウスです。
変わり種としては「コーン・スタンプ生化学」という本もございます。
テキストを作るのは重労働です。ですから、複数の専門家が協力して作る場合もございまして、その場合は当然ながら連名という形になるわけです。つまり、「コーン・スタンプ生化学」の著者はコーンさんとスタンプさんなんです。
しかし、コーン・スタンプなんです。もちろん、日本語にはない言葉ではございますけれども、なんだか芋版のトウモロコシバージョンに見えてきてなりません。輪切りにしたトウモロコシにインクを塗ってスタンプのようにペッタリペッタリやるわけですね。芋とは違い、花のような独特な形になりそうです。
ちなみにコーンさんは「Conn」、スタンプさんは「Stumpf」とのことで、トウモロコシの「corn」やスタンプの「stamp」とはスペルが違います。日本語ならではの勘違いということになります。
こんなものもあります。「バーロー物理化学」です。
こんなところで野生の毛利小五郎に出会うとは思いませんでした。というか、名探偵コナン以外で「バーロー」と言っている方を見たことがありません。コナンの世界独特の表現なのでしょうか。この辺りは詳しくないので何とも言えません。
バーロー物理化学だって立派な物理化学のテキストでございますから、毎年のようにどこかの大学で使われているはずです。当然、大学生の多くは名探偵コナンを知っているでしょうから、中にはテキストを見ながら友人と共に「バーローだってよ」と半笑いで言っているはずなんです。それが日本国内のどこかの理系学部で毎年のように見られる光景なんだと思われます。
ちなみに、バーローさんのスペルは「Barrow」で、「手押し車」という意味もあるそうです。つまり、英語圏の人間がコナンを見ると、「どうしてこの探偵はいきなり『手押し車』と言うのか?」という誤解をするかもしれないわけです。
最後はちょっと趣向を変えまして、「マッキー生化学」でございます。
マッキーさんはスペルが「McKee」なんですけれども、マッキーなんて言われた日には、日本人としては名字に「牧」とか「槙」とか「巻」みたいな字が入ってる方のあだ名にしか見えないわけです。ですから、日本人にとってこの題名は「著者のあだ名をこんなところに載せて大丈夫なのか? まだちゃんと話したこともないのに」と心配しかねない言葉になっているんです。
逆を言えば日本人だけが心配できる、選ばれし心配でもあるわけです。
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