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【第39回】ジョン・リー・フッカー/ブギー・チレン

キング727という愛称、悪魔のような唸り声、他人の曲が混じった内容などで、なかなか強烈な印象を残した「ジョン・リー・フッカー」の「シングス」。名盤としてよく名前のあがるLPだけれども、あまりにもディープなジョン様節なので、入門編としてはあまり向いていないのではないかと個人的には今でも思っている。
「シングス」しか聴いていなかったときもそれは感じていて、機会があればほかのジョン様のLPも聴いてみようと思っていた。そして次に聴いたのが、ジョン様のかなり初期の録音と思われるLP「ブギー・チレン」である。モダン時代のベスト選曲集になるのかな。多分時期的には「シングス」と同じと思われる。
ジョン様って聴きやすいってことは全くなくて、むしろとっつきはとても悪いんじゃないかと思う。時代にもよるけれど、基本ギターの弾き語りにフット・ストンプと呼ばれるリズムを取る足音のみ。ギターは終始同じようなフレーズを弾き続け、歌はなんかボソボソと独り言を言っているみたい。聴いているとどんどんジョン様の世界に引きずり込まれていくような感覚になる。人に聴かせるという気持ちは全くなくて、思いついたからやってるという感じ。まさに唯一無二の存在感である。
そんな達観したかのような雰囲気のジョン様なのだが、実はとてもあがり症だったという話があるから驚きだ。自分を売り込みに行った際に(というのも意外な話だが)、モゴモゴして何も喋れなかったとか、録音時に緊張でガチガチになっていたとか、その曲の雰囲気とはかけ離れたエピソードである。
ちなみに私もかなりのあがり症で、特に人前で話すようなことがあると、体温があがり脇汗がとまらなくなってしまう。本番には滅法弱いタイプだ。
さて、「ブギー・チレン」というLPについて話すと、基本的には「シングス」とは大きくは変わらない。ただ音質は「シングス」よりも良いように感じるし、収録曲も「サリー・メイ」や「ブギー・チレン」(「ボギチレン!」というシャウトがカッコよ過ぎる)、「アイム・イン・ザ・ムード」(なんとボーカルを重ね録り!)など(他に比べれば)聴きやすい曲が多く収録されているので、最初にジョン様に触れるなら「シングス」よりはこちらをオススメする。それでも同じ雰囲気が続くので退屈に感じてしまうかもしれないけれど。
そういえばジョン様と言うと「キング・オブ・ブギー」という愛称でも知られている。「ブギー」というものがよくわかっていないのだが(ただのリズムの一種なのかな)、なんか勝手に明るいイメージをもっている。ブギウギなんてとっても愉快なイメージだ。でもジョン様の曲は明るいというよりは不気味なイメージがあるので、私はいつも「キング・オブ・不気味」なのになぁと思うのである。

ブルースを
不気味なブギーに
ふっか(フッカー)ける

季語はブルース。

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