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【第44回】ジュニア・ウェルズ/サウス・サイド・ブルース・ジャム

私は音楽を聴くときにどうしてもボーカルに耳がいってしまう。そのためボーカルの声で好きか嫌いかが別れることが多い。気に入るボーカルかどうかは、歌がうまいとか下手とかはあまり関係がなくて、個性的な歌い方だったり声質が好みだったり、味のあるボーカルのほうが好きなんだよね。なので私はクセの強い、奇声をあげちゃうようなボーカルが結構好きで、B'zの稲葉浩志さんなんかは大好きなボーカリストである。稲葉さんは1曲まるまるシャウトだけなんて曲もあるくらいクセが強くてカッコよい。
ではブルースのボーカリストで1番好きな人はというと「ジュニア・ウェルズ」になる。ウェルズさんといえばなんといっても「フードゥー・マン・ブルース(以下「FMB」)」が最高で、私の大のお気に入りのLPだ。ウェルズさんのクセの強いボーカル、そしてときおりあげる奇声を存分に堪能できる名盤である。
そんなウェルズさんの「FMB」に続く2枚目のLP「サウス・サイド・ブルース・ジャム(以下「SSBJ」)」である。2枚目といっても「FMB」が1965年発表で「SSBJ」が1970年発表とあってずいぶん間があるので、デルマーク・レコードでの2枚目ってことなのかもしれない。そしてLP名に「ジャム」と入っているのでセッション風景を録音したようなものなのかな。曲間にブツブツ話し声が聴こえるし。
そして中身のほうだが、私はウェルズさんのボーカルが好きなのでこの「SSBJ」もかなり聴ける。クセの強いボーカルも奇声もカッコよいと思う。ただ嫌いではないのだが、やはり「FMB」に比べると好き度はかなり落ちてしまうというのが正直な感想だ。最初聴いたときは渋い曲が多くて、ウェルズさんのボーカルも相まってとてもカッコよく感じたのだが、曲調がずっと同じ雰囲気なのでだんだん飽きてきてしまうのだ。「FMB」のときのような軽快な曲がなくて、ずっとゆったりとしたブルースが続く。ただウェルズさんのボーカルのおかげなのか、スリリングな雰囲気は漂っているのだが。
あと「FMB」に比べると、ソリッドな感じが薄れてしまったように感じる。あの必要のない音を全部削ぎ落として、必要な音だけ残しましたみたいな潔いカッコよさをあまり感じない。クレジットを見ると「ルイス・マイヤーズ」や「オーティス・スパン」といった有名どころのミュージシャンが名を連ねているので、やっぱりこれはセッションLPなんだろうなと思う。そういった意味でいうと「FMB」のようなまとまりを求めるのはちょっと違うのかもしれない。あ、当然相棒の「バディ・ガイ」はいらっしゃいます。
まあ「FMB」は名盤としてとても有名なLPだし、まずはそっちから聴いてみて気に入ったら「SSBJ」を聴いてみる、というのが良いのかなと思う。いろいろ書いたけれど、私はこのLP、それなりに楽しめる内容だったし。ジャケットも「FMB」もカッコよいけれど、こっちも負けず劣らずカッコよいしね。
最後に補足を。今回さんざんウェルズさんのボーカルについて語ってきたのだが、この人ハーピストでもあります。というか、どちらかというとハーピストとしての色のほうが濃いのではなかろうか。これを読んで生粋のボーカリストであると勘違いさせていたらごめんなさい。ただウェルズさん、そう思わせるほどにホントに味のある良い歌声なんです。

ハーピスト
だけど味濃い
ブルース歌う

季語はブルース。

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