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老人福祉施設は場所によって全然違う

認知症の母が老人福祉施設への入所を考えている。

母は要介護1だが、今は一人暮らしをしていて、家事や身の回りのことも自分でやっている。なんとかできてはいるみたいだが、最近、警察を呼ぶことになったり、お金の管理ができなくなって、家族としては不安だった。母は自分が認知症であることを認めていないけれど、自分が少しおかしいことには薄々気付いているようだった。

まずは、自立型のケアハウス の見学をした。ケアハウス は、一人暮らしには不安があるものの、ある程度自分のことは自分でできる人が入所する。部屋は個室でトイレとミニキッチン付き。共同のお風呂と3食食事付きのマンションといった感じだ。自立型というだけあって自由だが、その代わり交流は少ない。見学に行った時も、人の姿が全く見えなくて、果たして母がこの施設に入って楽しい毎日が過ごせるのか疑問が残った。

次に向かったのがグループホーム。グループホームは認知症対応型共同生活介護事業所のことで、認知症の人しか入ることができない。体は元気だが、認知症の症状がある人が入る施設になる。ここは、母親と嫁さんといっしょに見学に行ったが、正直なところ、ショックな光景だった。ちょうどおやつの時間だったが、みんな椅子に座って話をする訳でもなく、ぼんやり前を眺めている。高齢な方が多いこともあったが、認知症の症状も進んでいる方が多い感じだった。誤解を恐れずに言えば、「生きている」感じがまったくしなかった。こんなところに母を入れたくない・・・。僕も嫁さんも同じ意見だった。

僕は、どうすればいいかわからなかった。母はできれば施設には入りたくないという。一人で生活させるには不安が多いが、物忘れや妄想など認知症の症状があるものの体は元気な母を施設に入れるのが果たして正解なのか疑問だった。

そして、今日もグループホームへ見学に行った。ケアマネジャーさんが紹介してくれたところなので、気は進まないが約束していたので行くだけ行ってみた。建物は決してきれいではなかった。介護士の職員さんは、ほとんどがベトナムの人だった。第一印象からして良くはなかった。ところが、状況は施設長さんと話をして一変する。こちらのグループホームは、まず、鍵はかけないとのことだった。危険はあるかもしれないが、隔離するようなことはしたくないという。洗濯や食器を洗うなど、できる人にはどんどんやってもらう。極力、散歩に出かけたり、イベントの装飾をできるだけ自分たちで作ったり、じっとしていることがないようにする。そしてなんといっても、入所している人達が笑顔なのだ。ひとりのおばあさんが、「ここは楽しいですよ」と話しかけてくれた。施設というとどうしてもマイナスのイメージが強かったが、ここはまったく違った。介護士のベトナムの人達も、明るく元気だ。これまで見学した施設は、悪く言えば、介護士の方に入所者が管理されているような印象があった。なんというか、ここはフラットなのだ。施設長も介護士も入所者も、縦の繋がりではなく、お互いを人として尊重した横の繋がり。

「一度、検討してくださいね」という施設長に、母は「入ります!」と言っていた。ちょっと料金的には高めなのだが、母がより人間らしく生活できるなら安いものだ。ちょうど今空きがあって、早い段階でこういった施設と出会えたことはラッキーだった。もしかしたら、神様はいるのかもしれない。

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