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母の勘違い

「あんたと私、夫婦やったんちゃうの?」

え・・・

母と一緒に祖母の一周忌に行った帰りの車の中で、母の口から出た言葉に一瞬頭の中が真っ白になる。

一周忌法要の間は、まるで認知症は何処に行ったのかと思うほど、昔の母に戻っていたのに、どうしてしまったのか。

車の中で、会話が噛み合わなかった。これまでも、会話が噛み合わないことは何度かあった。しかし、それらは、母の物忘れから起きているものだった。母とのやり取りについて詳しくは書かないが、母は、僕のことを自分の子どもではなく、旦那、つまり、僕の父だと思っていた。しかし、これで、最近の母の言動に合点がいった。6年前に亡くなった父が帰ってこないと言っていたこと、「いつ、帰ってくるの?」と僕にメールしてきたこと。母は少し前から、僕が自分の息子なのか、旦那なのか区別がつかなくなっていたようだ。

母は6人兄妹で、皆さん高齢にも関わらず、夫婦共にご健在である。今日の一周忌も母以外、皆さん夫婦でお参りされていた。

以前、僕と同じように認知症の母を看る方が、noteでお医者さんに「お母さんは、さびしん坊です」と言われたという記事を書かれていた。

周りの兄妹が皆、夫婦で参列されているのに、自分だけひとりだった為、母の中で僕は、「父になった」。おそらく、母は僕と父の区別がつかなくなったわけではなく、母の目には父の姿に見えていたのだろう。

「僕はお母さんの子どもだよ。別々に暮らしているよ」と説明すると、何が起こったのかわからないといった感じで、戸惑った表情を見せ、「なんか、寂しいね」と言った。

僕は認知症のことを、何も理解していないのかもしれない。

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