strangers -3-

その日私は、はしゃいでいた。

指定された、”カラフルな” しばらく着てなかったお気に入りのスカートを引っ張り出し、

自分の定番の黒のトップスと合わせた。

足元は買ったばかりのヒールの高いブーツ。

シンプルだけど地味すぎない自分らしいコーディネートだ。

長めのスカートの裾が、一歩踏み出す度ふわりと揺れるのが楽しくて、

待ち合わせ場所に向かう足も弾む。

そしてその足取りと比例するように、

いやそれより多めに、緊張していた。

到着後いくらかの言葉を交わした後に撮られた前半の写真を見て、のちに私はこう思う。

あぁ、私は、親が撮った写真の中でもこういう顔をしていたな、と。

思えば、何のポーズもつけず、笑顔を作ってただレンズを見つめるなんてことは、成人式の時以降、ほとんどない。

学生時代も、社会人になってからも、他人に撮られた写真の中の私は、大体おどけている。

いい大人になった今は変な顔やポーズを付けるのはやめたものの、

カメラ目線というのがどうしてもできず、いつも目線はどこかを見ている。

もしくは、思い切り作った顔をしている。

ありのままの、

もとい、頑張ったにもかかわらず可愛くない自分の笑顔なんて、

見たいわけがないのだ。

そんな過剰な自意識を成仏させるために、私はこの依頼を受けたのかもしれない。

自分に自信のない自分への、一種のショック療法のつもりでもあった。

でもそれよりも、自分を知らない他人から見た自分がどう映っているのか、

この写真家は私という人間をどうとらえるのかというのに興味があった。

そしてこの日以降、写真家は私のこの興味に、

予想以上に応えてくれることになる。



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