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DESIGN : EVEX シーズンカタログ(2022 S/S)

ミラノ発のラグジュアリーブランド KRIZIA(クリツィア)から生まれたカジュアルライン、EVEX(エヴェックス) 。動物や自然を愛し、その保護に強い関心を抱くブランドであり、着心地の良さも魅力。服に大胆に配置された動物のモチーフが印象的な方も多いのでは?

2022 Spring / Summer のシーズンビジュアル、カタログのアートディレクションをOUWN・出井が担当しました。ディレクション以外にも進行管理を行い、様々な面で学びが多かったと話します。

感覚を掴むことの難しさ

出井 : ポスターやカタログなど、2022年春夏のビジュアルアートディレクションをさせてもらいました。ブランドの年齢層としては50歳前後をターゲットにしていると伺いましたが、年齢問わずたくさんの方に着てもらえるような自由なデザインが魅力的だなと思います。
売り場としては百貨店が多く、店舗数も多い。この冊子も1シーズンで8,000部刷っていて、OUWNで携わるカタログの印刷数としてかなり多い方でした。

ー たくさんの方に手に取ってもらえるものですね。

出井 : WEBより紙がメインのカタログなので、お店に来た方が持ち帰ることを前提に、バッグにも入るサイズにしています。

出井 : 今回は私が一人で提案しに行ったのですが、最初のプレゼンでは思っていた方向性が違かったようで、全く刺さらず…

ー そういうこともあるんですね!

出井 : はい…(苦笑)。最初のオリエンの時に、勢いのある明るい感じにしたい!ということを聞いて、ポジティブでフレッシュをキーワードに考えました。ブランドに合うような大人っぽい写真と合わせつつ、カラフルで明るいイメージでラフを作ったんです。
ですが…「ちょっとフレッシュすぎる」と指摘を頂いて、ラフで入れているモデルさんの写真も若すぎたり、着ている服がポップすぎたり、イメージと違うってなってしまいました。ラフの段階でも写真選びが大切で、必要な要素が全て入っていないとイメージとして成立しないんですよね。

ー そういう場面って今までにもあったりしますか?石黒さんと一緒にいる時とか…

出井 : ほぼないですね…!あんまり外れたのを見たことがないです。前にやらせて頂いた EAT for E の仕事の時にも、sioの鳥羽さんから「石黒さんは相手が欲しいものが分かっているから、クライアントワークがすごく上手」って言ってもらってて。石黒さんと一緒に作業をしてても、「あの人はきっとこういうのが好きだと思う」と話してるのを聞いたりもするから、感じ取るのが上手いんだと思います。自分ももっと相手の好みや感覚を掴んでいきたいなと思いました。

完成図が見えるラフ作り

出井 : 次の提案としては、全体的にもう少しクールに大人っぽく、モデルさんも可愛らしさより知性があるような雰囲気の方を探して、 服をしっかり見せる構図やポージングの写真を選びました。
シーズンのテーマとしては、Springは「高揚感」や「楽園」がキーワード。なのでグラフィックは楽園を飛ぶ蝶のイメージで、舞う蝶の軌跡をラインで表現しました。シーズンのカラーに合わせて、グラデーションでページを繋げています。

Summerは「海」がテーマで、クジラやボーダーなどマリンモチーフがメイン。海で遊んでいるようなアクティブなポージングだったり、ボーダーをイメージしたラインで流れを作りつつ、全体の統一感を出しています。背景も明るいイエローを入れて爽やかなイメージ。
結果、2回目の提案ではスムーズにOKをいただくことができました!

ー 写真がメインでグラフィックの要素が少ないと、ラフも素材探しがポイントになりそうですね。

出井 : そうなんです。明るさやポジティブさ、勢いというイメージをどこで出そうってなった時、モデルさんのポージングがメインになるなと思いました。歩いてたり腕の動きがあったり、動的なポージング。スカートの質感や形の綺麗さが見えるように、回りながら動いてるショットを何枚も同じページに入れたりとか。服の良さが見えるような写真を探して参考にしました。

ー ラフの素材はどうやって探しますか?

出井 : WEBの検索ではありとあらゆる検索ワードを打ち込んでます(笑)。年齢層が合ったファッション誌を調べて、そのファッション誌+モデル、とか。イメージ通りのポージングのもので、画質もラフとして出せるレベルのものを選ばないといけないので、画像探しはいつもより時間がかかりました。ただ、その甲斐もあってラフの精度の高さを上げられたこともあり、ほぼラフ通りに完成しましたね。グラフィックの要素が少ないので、ポイントとなるあしらいを入れる際もバランスが大切です。ノンブルをあえて上にしてフォントを少し特徴的なものにしてみたり、やりすぎないけどポイントになるようデザインを入れました。

出井 : ファッション、メイク、ジュエリーなどのクライアントワークは、相手もデザイン観点を持っていて見せるものとしてのこだわりを感じるので、私も相手の見せたいもの、表現したいものを一緒に作れるようにと考えながら作っています。

ー 提案の段階では、そのシーズンでこんな服があるっていうのは聞いているんですか?

出井 : 実際の服が見れたのは提案後だったんです。なので今回のテーマや、モチーフにどんなものがあるのかを聞いていましたが、実際どんな服があるのかは分からなかった。ラフの段階では逆に自由度が高くて難しかったです。

ー それで実際に作った時、ギャップは出ないですか?

出井 : やっぱり多少はありますね。ページでコーディネートを並べる際に
何と何を並べたらいいか悩みました。撮影現場で考えるので、瞬発力でその場の判断で決めました。

ー 撮影の時、ポージングは出井さんが伝える?

出井 : はい。ポージングは言葉で伝えるのが難しいので、ラフの段階で完成度を高くすることが大事だなと実感しました。動きは出したいけど、やりすぎ感が出ず自然な動きに見えるよう、品を保ちながらアクティブさを出す…すごく難しいですよね。ひたすら歩いたりジャンプしたり、動きのあるカットが多くて。モデルさんは本当に頑張ってくれました。
写真を選ぶ時に気をつけていたのが、「可愛い」にならないようにっていうところです。
特にスカートがふわっとするように回るショットは可愛いイメージになりやすくて、感覚的ではあると思うんですけど、大人っぽさや上品なイメージになるよう写真をセレクトしました。

ー WEBでもカタログは見れるようになっていますが、今回は紙で見ることをメインとしてるんですよね。どちらをメインにするかで表現の仕方はどのように変わりますか?

出井 : WEBメインだと画像でレイアウトするイメージです。なので1枚ずつ見せるような感じで、逆にストーリーが組めるのは紙ならではなのかなと思います。Springの蝶の軌跡のラインが繋がっていくのも、紙でページをめくる方が合ってますよね。
印刷面では、コスメやファッションは特に実際の色味と紙面を合わせることがとても大切。今回は、普段からお願いしている印刷所でしていただくことができたので、コミュニケーションが取りやすくて助かりました。

やってみたから分かること

出井 : 代理店を通してではなくクライアントと直接やりとりする案件だったので、お弁当やスタジオの手配、モデルのオーディションの段取りなども全て自分が行いました。

ー 役割が増えると細々としたところでミスがないか心配になりますね…!

出井 : そうなんです。モデルさんをオーディションに呼んだけど、本当にみんな来るのかな?って(笑)。実際ちゃんと来てくれたし、当日のお弁当も届いたので良かったです。
あとは全体の予算の管理もですね。カメラマンやヘアメイク、ケータリングなど、予算管理も自分でさせてもらったので本当に勉強になりました。自分で1回やることで全体が見れるようになるし、色々大変さも分かって、感謝も増えますね。

出井 : そして本当についさっき連絡をもらったのですが…、Autumn/Winterもやらせてもらえることになりました!また次回も頑張ります。

ー 続けてできるのは嬉しいですね!
今回のようにターゲットの年齢層などが自分と違う時、参考にするものや考え方などを教えてほしいです。

出井 : 今回はちょうど自分の親世代なので、親のことを考えるっていうのはありました。こういうのは好きかな、嫌がるかな、と。あとは、オリエンの段階で注意点を伺うようにしましたね。文字のサイズや色も、いつもより可読性をしっかり担保することを意識したり。「3月入荷」とかも英語にせず、日本語で表記すること。全部を日本語にすると情報として気になったりもするから、読みやすさと見た時のバランスをとっています。実際お客様がカタログを見て「このページのこれが欲しい」ってお問い合わせを受けることも多いようなので、分かりやすいように。
次回も素敵なものを一緒に作れるように、緊張もあるけど楽しみです!

CL : EVEX by KRIZIA / @evexbykrizia_official
AD+D : YUMI IDEI(OUWN) / @yumi_idei

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聞き手 ・ 執筆 : 星成美

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