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Anterior Drawer Test:足関節前方引き出しテスト

Anterior Drawer Testは、足関節の捻挫後などによく行うテストです。前方へ引き出すテストですので、膝関節(ACL損傷の検査)、肩関節(前方不安定性の検査)などありますが、今回は足関節のものをおさらいします。


結果からなにが考えられるのか?

前距腓靭帯損傷の有無
距腿関節の構造的不安定性の有無

松村 将司, 三木 貴弘. 適切な判断を導くための整形外科徒手検査法.メジカルビュー

前距腓靭帯損傷は足関節の内反捻挫にて起こりやすい怪我ですね。スポーツをやっている方は経験が多いのではないでしょうか。

検査方法

1 患者を背臥位もしくは座位。
2 膝関節屈曲位、足関節10-15°底屈位。
3 一方の手掌で患者の足底を支え踵部を把持、他方の手で下腿遠位を前方から把持し、固定する。
4 踵部後方から前方に移動させる力を加える。

松村 将司, 三木 貴弘. 適切な判断を導くための整形外科徒手検査法.メジカルビュー

検査の目的は前距腓靭帯損傷や距腿関節の構造的不安定性の有無の検査ですので、下腿遠位を抑える際は脛骨と腓骨をしっかり抑えるように意識しましょう。足関節は背屈で関節安定性がまずため、底屈位での検査となります。

陽性時の所見

検査側の外果の前にくぼみが出現する。

反対側と比較して前方移動量が大きい。前方移動量に関しては5段階評価
0:低可動性
1:正常
2:軽度の弛緩
3:中等度の弛緩
4:過度の弛緩

陽性の場合は前距腓靱帯になんらかの損傷の可能性がある。

松村 将司, 三木 貴弘. 適切な判断を導くための整形外科徒手検査法.メジカルビュー

前方への移動量が大きければ大きいほど不安定であると考えられます。グレードに分かれていますが、どのくらいが軽度でどのくらいが過度かは判断が難しいそうですね。

注意点

急性期では、疼痛や筋の防御性収縮により評価精度が低下するため、受傷5日後以降に評価することが望ましい。

松村 将司, 三木 貴弘. 適切な判断を導くための整形外科徒手検査法.メジカルビュー

受賞直後の評価は難しそうですね。ただ、こういった不安定感が筋の収縮で制御できるため、介入方法としても筋力トレーニングなどで安定性を促進することが考えられますね。

評価の精度

感度58-96%
特異度33-100%
陽性尤度比0.79-∞
陰性尤度比0.05-1.09

松村 将司, 三木 貴弘. 適切な判断を導くための整形外科徒手検査法.メジカルビュー

診断精度に関してはこちら

ばらつきが大きいので、使用方法には注意が必要かもしれませんね。

関連する文献

Anterior Drawer Testに関連した文献を探してみました。

Yasutaka Murahashi, et al. High reproducibility of a novel supported anterior drawer test for diagnosing ankle instability. BMC Musculoskelet Disord
. 2023 Feb 27;24(1):148. doi: 10.1186/s12891-023-06246-8.

「足首の不安定性を診断するための新しいサポートされた前方引き出しテストの高い再現性」という論文です。
前方引き出しテストの再現性と、新しい方法での前方引き出しテストの再現性を報告しております。
結果としては、新しい前方引き出しテストは、検査者間信頼性が高く、足首の不安定性を手動で簡単に検査できるとのことです。
若手セラピストでは新しいテストの方が評価精度が高かったそうです。

以下の写真のaが従来の方法、bが新しい方法です。
新しいといっても、下腿を板などの乗せて安定させて行っているだけですが、評価精度にも影響を及ぼすことがわかりました。熟練のセラピストでは優位な差がなかったので、各テストもしっかりとした練習が評価精度につながることを改めて認識しました。


Yasutaka Murahashi, et al. High reproducibility of a novel supported anterior drawer test for diagnosing ankle instability. BMC Musculoskelet Disord. 2023 Feb 27;24(1):148. doi: 10.1186/s12891-023-06246-8.

ではでは。

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