「断熱すると まちが儲かる」のロジックを紐解いて見えること
「風が吹くと桶屋が儲かる」
桶屋さんのセンスを見習いたいと思うこの頃。
今回も、岩手県紫波町の事例から。省エネ住宅などのエネルギー循環が、地域にどんな影響を与えるかというテーマです。
日本のエネルギーの現状
まず家庭でのエネルギー事情ですが、
左はエネルギーの使い道。暖房や給湯に54.8%使ってます。
右はエネルギー源。電気とガスで100%近いです。
ちなみに日本の発電燃料は、石炭と液化天然ガスがメインで66.8%ほど
日本は国産資源に乏しいので、エネルギー自給率はたった9.6%
我々が使う電気やガス、エネルギーはほとんど海外から購入していることになります。
ちなみに化石燃料の輸入額が年間24兆円のデータがあり、これって国内で稼いだお金が海外に流れている話で、ものすごく大きな市場。
紫波町での取組は?
紫波町は、このエネルギー問題に着目して、暮らしの改善、外部に出ていくお金の削減、エネルギーの循環に取り組んでいます。
①断熱性能の高い住宅の開発
日本ではヒートショックで年間19,000人もの方が亡くなっています。
住宅は無断熱であることが多く、約76%が断熱できていない。まだまだ日本の住宅は、夏に熱く・冬に寒いのです。
そこで紫波町は「紫波型エコハウス基準」を独自に定め、断熱性能の高い分譲住宅をオガールエリアに建設。
一般的な性能の住宅のエネルギー消費量に比べ1/2~1/3の消費量になるよう設計されているようです。ちなみに断熱は、外からの熱も遮断するので夏も涼しい。
高いエコハウス基準をもつドイツのパッシブハウスが参考であるとのこと。
②地域内で産業をつくる
紫波町のエコハウス、当時市内には、建てられる技術のある工務店がなかったようです。
通常は、大手ゼネコンにお願いしそうなところ。
断熱住宅の専門家を呼んで地元職人に技術を伝え、地元工務店が建設できるようにしました。するとエコハウスの注文は予約待ちになるほど。
技術レベルも上がり、住宅コストが坪85万→65万と下がったのです。
さらに、住宅に使用する木材も紫波町産にこだわる徹底ぶり。
③地域内循環
さらに化石燃料で発電して暖房するより、
最初から熱で供給する方がエネルギー効率が高いので、間伐材をチップ化してエネルギーステーションから住宅に熱供給を行っています。
ざっと流れをまとめると、
・地元の木材&工務店で、エコ住宅を施工。
・間伐材の熱エネルギーで電気代の負担を軽減。
・省エネ&熱供給で光熱費を軽減。
すると、林業や建設業が儲かる。働く人やエコハウス住民も含め、地元の消費にお金が回せる。
そんな理屈を実現していることになります。
まだまだ先を行く海外
海外にも目を向けてみると
熱需要の大きい北欧ではエネルギー政策が進んでいて、例えばデンマーク。
コージェネレーション(熱源で電気と熱をつくる)が発達し、デンマークの家庭の63%が地域熱供給に接続されています。
さらに、1985年から2015年までの発電設備の様子を見ると興味深いのは、
2015年には自然エネルギーが増えて、かつ発電拠点が分散しています。地域ごとにエネルギーを作る社会に見事にシフトしています。
出典:デンマークエネルギー庁「Overview map of the Danish power infrastructure in 1985 and 2015」
そのほか環境分野で面白いのは、ごみ焼却・発電施設の「Amager Ressourcecenter」
ゴミで発電する以外に、この施設ではスキーやクライミングができるほか、環境教育に取り組んでいたり。なんとバーもあったりします。
デンマークは包括的アプローチといって、
一石五鳥くらい、同時に色んなハッピーを達成しようという考えが浸透しています。
この施設はコミュニティを育み、健康が増進し、ゴミ問題を身近に考える機会になる。小さなきっかけから、ポジティブループを引き起こす仕掛けをデザインしている。というところに大きな学びがあると思います。
日本のゴミ処理場&プールといった施設だけで完結せず、周辺住宅にも熱が供給されるといった、エリア一帯への循環が組み込まれています。
デンマークなど北欧の事例は面白いので、また触れていきたいと思ってます!
まとめ
紫波町やデンマークは、風が吹くと桶屋が儲かる仕組みを、あらかじめ準備していたんだなと。
まちが豊かになると同時に課題も解決される。
あらゆるコンテンツを編集し、ポジティブな連鎖反応を起こすデザインセンスが求められていると感じました。
分野は違えど、これからの都市経営に重要なポイントだと感じます!
本日もありがとうございました!
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