僕はおまえが、すきゾ!(9)
優作は僕を古賀さんに紹介でもするようなつもりで、一緒に食事をしようと提案してきた。それは、古賀さんの事をよく知って貰いたいという優作の僕への友情の印だった。僕は古賀さんの事など、まるで興味は無かったが、(むしろ彼女は敵だったが)、古賀朝子の事を偵察する意味では、絶好の機会なのだと、僕は古賀朝子と優作と僕との会食に同席する事を快諾した。
この会食には、もう一つの優作の企みがあった。それはこの会食が優作と古賀朝子が一緒に時を共有する初めての時の会食だったからだ。何とも不甲斐ない男であろうか、優作め。一人でデートも出来ないとは。しかしこれは絶好のチャンス。僕は古賀朝子の事が嫌いだったし、むしろ僕は基本的に古賀朝子と優作が釣り合っていないと考えていた。優作を古賀朝子の魔の手から助け出すのも(宏人の勝手な思い込み)、親友の僕の仕事だと思い、会食に付いて行く事になった。
「何、食べよっかなー」
勝手にしろ。
「何、着てこうかなー」
好きにしろ。
僕は僕の目の前で、浮かれ踊る優作を前に、呆れ果てていた。
優作は彼女のどこがいいと言うのだろう。
古賀朝子に優作が惹かれるような魅力がどこにあるのだろうと思った。優作のタイプは、橋本環奈よりも木下優樹菜ではなかっただろうか。
「お前、古賀さんの前で、変な事言うなよ」
優作が僕に言った。
確かに優作と僕の付き合いの長さから、優作の暴露話をするのも、一つの作戦かも知れない。しかし、そうすると僕は古賀朝子どころか、優作の怒りも買いそうだ。
それは避けたい。あんな女の為に、優作との友情を壊すのは、馬鹿らしい行為だ。
優作は女子には優しいが、男には厳しい男だ。
いや、優作は男女区別なく人には優しいが、僕に対しては、態度が全く違うのだ。どう違うかと言うと、例えば古賀朝子には笑顔を向けるが、その次の瞬間には、僕に向けて罵声を浴びせ掛ける。優作の心ない言葉にどれだけ何度心が折れかけた事か。そんな事を考えていると、頭がくらくらしてくる。
隣を見ると、優作が嬉しそうに、食事に着て行こうという服を姿見を見ながら、体に当てがっていた。
僕はこれから起きる出来事を思い、ため息を吐いた。
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