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地道にやり続けること

芸術の秋ということで、毎年この時期は文化・芸術に関連したお仕事が増えてきます。

昨日は、地元の宇部市で「第30回UBEビエンナーレ(現代日本彫刻展)」の一次審査のインターネットライブ配信を担当してきました。創業以前の2010年から、かれこれ10年以上関わっているライフワークのようなお仕事です。

地元民にとって、もっとも身近にある芸術が野外彫刻です。その歴史ある彫刻展に仕事として関わり続けることができているのは、地元の事業者として冥利に尽きます。

60年以上続く世界最古の野外彫刻展

UBEビエンナーレ(うべビエンナーレ)は、山口県宇部市で2年に1度開催されている、野外彫刻のコンクール・展覧会です。戦後のまちの美化と心の豊かさを求める市民運動をきっかけとして、1961年から続いている世界で最も歴史ある野外彫刻の国際コンペティションです。

宇部市は明治以降、石炭産業を中心にまちの基盤を築きました。戦後は工業都市として発展する一方、その代償として煤塵による大気汚染など環境問題が深刻化します。そのなかで、生活空間を住みよいものへと変えていこうと、「緑化運動」や「花いっぱい運動」などの市民活動が活性化しました。

1958年、宇部市は花の種子を購入するために集められた基金の一部で、ファルコネの「ゆあみする女」という一体の彫刻のレプリカを購入します。それを現在の宇部新川駅前広場の噴水池に設置したところ、市民の間で好評を得ました。

「ゆあみする女」のレプリカ(ubebiennale.comより引用)

やがて、手頃な作品を安易に設置するのではなく芸術性の高い彫刻を集め、青少年の教育や若手芸術家の育成にも寄与しようという気運が高まります。そして1961年、ときわ公園を舞台に日本初の大規模な野外彫刻展「第1回宇部市野外彫刻展」が開催されました。

これが、現在に続くUBEビエンナーレの始まりです。

1年目の模型審査をライブ配信しました

UBEビエンナーレは、2年に1度のサイクルで開催されますが、正確には2年間かけて作品が選定され、受賞作品が決定するというものです。1年目には模型による一次審査によって、15点が実物制作指定作品として選定され、それが翌年に約10倍の実物となって本審査が行われます。

今年は一次審査の年ということで、模型審査の様子をライブ配信しました。今回は初めて模型を展示している大ホールでの審査の様子をメインに、映像のみ音声なし(BGMあり)という構成にしました。

期間限定でアーカイブが視聴できます。

機材は下記のような構成です。

・配信PC:ASUS FX505DT (AMD Ryzen 5 3550H /16GB)
・配信ソフト:OBS Studio
・スイッチャー:Blackmagic Design ATEM Mini Pro ISO
・カメラ:SONY PXW-X70FDR-AX700
・ケーブル:ANNNWZZD HDMI光ファイバーケーブル 50M
・ネット回線:WiMAX Speed Wi-Fi HOME 5G L12(パケット無制限)

配信をされたことがない方にはピンとこないと思いますが、これまでにないぐらいの軽装備で配信に臨みました。

10年で変化したライブ配信のスタイル

この10年のあいだに、ライブ配信の環境は大きく変化しました。

初期の機材はすべてアナログで、赤白黄のRCA端子で映像と音声を入力していました。アナログ信号は伝送距離に応じて減衰するので、長い距離を延長した際には画質が悪くなったり、映像と音声のズレが生じたりしたりして難儀していました。

それがHDMIやSDIといった規格が誕生したことで、デジタル映像信号と音声信号を1本の同軸ケーブルで送ることができるようになりました。もはやHDMIを延長するためのエクステンダーすら要らず、50Mぐらいならケーブル一本で完結できます。遅延や劣化もほとんどありません。

配信するプラットフォームは、当初はUstreamというライブ配信の老舗的なサービスを使用していました。現在はもうサービスが終了してしまったため、残念ながら当時のアーカイブを見ることはできません。

回線速度も今よりもずっと遅く、上りが1Mbps出ればよいほうで、モバイル回線を使用した際には、300Kbpsなんてこともざらにありました。なので、当然ながら画質はガビガビのモザイク状態です。

2010年の配信はこんな画質でした。

それが今や、WiMAXなどのモバイル回線でも上り20Mbpsを出せるようになり、YouTube LiveHD画質の安定配信が実現できてしまうという、かつての苦労はなんだったのかというぐらい、手軽に高品質のライブ配信ができるようになりました。

続けることで見えてくる世界がある

このような変化は、10年単位で同じことをしつこく続けてきたからこそ見えたものです。こんなに簡単になったのだから、みんなもっとライブ配信をやったらいいのにと、やっている側の人間は思うわけです。

とはいえ、未経験の方が始めるハードルは依然として高いのだろうなとも思います。明確なマニュアルがあるわけではないうえ、色々な分野の知識が必要になってくるため、何から手をつけたらよいか分からない、と思われる方も多いと思います。だからこそ、仕事として依頼をいただけるわけです。

なにかを始めるときに、それを10年続けようと思って始める人は少ないでしょう。最初はなんとなく興味を持って、寄り道をしながら手探りで取り組んでいくうちに、それなりに道筋が見えてきて、色々なことが分かってくる。分かると面白くなるので、続けることができる。そして気がついたら10年が経過していた…そんな感じでしょう。

私もライブ配信を始めた頃は、10年後もそれをやっているとは考えてもいませんでした。機材を変え、サービスを変え、変化しながら今も続けていられるのは、ずっと何かしらの面白さを感じているからなのでしょう。

新しいことを始めるときは、割と軽はずみに始めたほうが、意外と長く続けられるのかもなと、自分を振り返って思う次第です。

では。


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