手持ちのカードで勝負する
前回の投稿で、ポートフォリオワーク実践のポイントとして、複業する仕事の業界を「ずらす」ことだと書きました。今回は、この「ずらす」テクニックについて書いてみます。
前回の投稿はこちら。
自分を変えずにチャレンジする戦略
「アンゾフの成長マトリクス」をスキル×業界に置き換えたものでいうと、「③既存のスキル×新しい業界」が「ずらす」にあたります。自分を変えずにジョブチェンジする戦略です。
新しい領域にチャレンジする際は、新しい能力や資格を身に付けなければいけないと考えがちです。しかし、既存のスキルで展開できるのであれば、これほど楽なことはありません。
市場価値があるスキルを水平展開
そこで役に立つのが「水平思考」です。心理学者であるエドワード・デボノが発明した発想法で、既成の理論や概念にとらわれずアイデアを生み出す方法です。
「水平思考」といえば、任天堂の伝説的開発者・横井軍平氏の「枯れた技術の水平思考」と呼ばれる発想哲学が良く知られています。「枯れた技術」とは、「すでに広く使用されてメリット・デメリットが明らかになっている技術」のことで、個人に置き換えると「市場価値があるスキル」と言えます。
ここでは市場価値があることがポイントで、いま対価を得ることができているスキルを、異なる業界で活かすには?という風に考えるのがミソです。
私自身、システムエンジニアをしていた際に「人の話を訊いてまとめる」というスキルを身に付けました。そのスキルを応用して、インタビュアーやファシリテーターという新たな領域を開拓しました。肩書きではなくスキルのほうに視点を置くと、新しい領域に水平展開しやすくなります。
ワークマンに学ぶ水平思考と「しない」こと
この水平展開戦略で、大成功を収めたメーカーが「ワークマン」です。
同社は、作業服という領域で40年間独走してきた「低価格機能性ウェア」という軸足をそのままに、アウトドアという新しい領域に展開して、4000億円の空白市場を開拓しました。商品を変えずに客層を広げる、「ワークマン」から「ワークマンプラス」への水平展開です。
そんなワークマンの基本戦略のひとつが「しない経営」です。これは、なにを「しない」かを明確にして、「最重要目標に集中し、それ以外はしない」という戦略です。数あるワークマンの「しない」のなかでも、特に興味深いのは、社員に頑張らないことを推奨していることです。
頑張り続けないと生き残れないという状況では、いずれ疲弊してしまいます。頑張らないで生き残るためにも、手持ちのカードで勝負するという発想が重要になります。
手持ちのカードを把握する
チャールズ・M・シュルツの漫画「PEANUTS」に、次のような言葉が登場します。
配られたカードで勝負するには、手札を把握することが必要です。今回は「市場価値があるスキル」という「強み」に焦点を当てて話を進めてきましたが、手持ちのカードには「弱み」も含まれています。
「強み」と「弱み」をいずれも受け入れたうえで、ではどのように立ち回っていけばよいだろうか?と考えるのがポイントになります。「強み」と「弱み」は表裏一体で、それを活かすも殺すも自分次第なのです。
次の投稿では「強み」と「弱み」について書いてみます。
では。
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