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あり方をデザインする

私は自社の仕事を語るうえで、デザインという言葉を極力使わないように心がけています。

近年は「デザイン思考」や「デザイン経営」などが普及して、デザインの定義も多様になってきましたが、一般的にはグラフィックデザインやロゴデザインといった、表層のイメージが強いのではないでしょうか。

なので、所謂デザイン会社と区別するために、実際は仕事のなかでなにかしらデザインはすれど「わたしたちはデザインの専門家ではありませんよ」という態度を、あえて取るようにしています。

会社の生存戦略的としてそのようなスタンスを取っている面もありつつ、煌びやかなアウトプットができないコンプレックスから来る天邪鬼的な側面もあったりします。

キッズデザイン賞&グッドデザイン賞をW受賞

そんなわたしたちが携わる「未来の山口の授業 at School」というプロジェクトが、このたびデザインを冠に掲げる賞を受賞しました。

キッズデザイン賞グッドデザイン賞のW受賞です。

第17回キッズデザイン賞 経済産業大臣賞(優秀賞)

2023年度グッドデザイン賞

「未来の山口の授業 at School」は、教員や児童たち、地域のメディアアートセンターやファブラボ、エンジニアらがともにすすめる、手作りの授業開発プロジェクトです。テクノロジーの応用によって可能となる表現や創造性、共創のあり方について学べる体験型の授業を設計しています。

プロジェクトのルーツは、山口情報芸術センター[YCAM]が2016年から展開している、次世代に向けた新たな教育モデルを世界に発信する取り組み「未来の山口の授業」にあります。

2021年には、文部科学省の GIGAスクール構想などの影響で、急速に進む教育現場のICT 化に対応した授業開発を課題とする、山口市教育委員会との共同事業がスタート。

そこに、プログラミング教育必須化に伴う実証事業を展開していたファブラボやまぐちが合流し、公教育と地域教育とが知見を共有し地域で教育を支える仕組みづくり「未来の山口の授業 at School」が始まりました。

ファブラボやまぐちを通した教育との関わり

ファブラボやまぐちは、2015年に「市民工房設置研究業務・デジタル工作機械活用講習会開催業務」という山口市の委託事業からスタートしました。

3Dプリンタやレーザーカッターなどのデジタル工作機械を完備し、誰もがものづくりができる環境をサポートすることによって、山口市に新しい産業や、新しい学びの場をつくりだし、世界に発信することをめざして日々活動しています。

2015年のファブラボやまぐち

ファブラボやまぐちを運営する目的は「自分たちに必要なものを自ら考え、自らの手でつくる、ものづくり人材の育成」です。持続可能な体制を作るため、機材の利用料をいただいてはいますが、いわゆる営利目的の施設とは少し性質が異なります。

2016年、総務省がプログラミング教育を推進する人的基盤を構築するための実証事業「若年層に対するプログラミングの普及推進事業」において、ファブラボ鎌倉大殿小学校と連携したメンター育成事業を実施。その頃から、プログラミング教育を通して、学校教育現場と関わるようになりました。

また、2017年から2019年にかけて、一般財団法人たんぽぽの家が主宰する福祉×現代技術の実験的で実践的な取り組み「IoTとFabと福祉」というプロジェクトに参加しました。

山口エリアでは、周南あけぼの園・光あけぼの園 × 山口大学 国際総合科学部 × ファブラボやまぐちという座組でプロジェクトを展開し、大学からインターン生を受け入れ専門人材の育成に取り組んだりしました。

2019年からは、元中学校の美術教師という異色のキャリアを持つスタッフが入社してくれたことで、より学校教育現場との関りが強くなっていきます。そしてGIGAスクール構想を契機に「未来の山口の授業 at School」へと繋がりました。

「自ら考え、自らの手でつくる」をサポート

上記のようなプロジェクト以外でも、中高一貫校でアプリ開発アドバイザーを担当したり、子ども向けのテクノロジー体験イベントを企画運営したり、デジタルハリウッドというスクールでトレーナーを担当したりと、わたしたちの仕事にとって教育はとても重要な要素です。

また、課題解決型のアイディアソン・ハッカソンのファシリテーターなども担当させていただくことがあり、これらも「自ら考え、自らの手でつくる」の精神を啓蒙する活動の一環として取り組んでいます。

これらのプロジェクトに関わる動機として、自社のWebサイトにも掲げている「すべての人が隔たりなく、デジタル技術の恩恵を享受できる世界をつくる。」というミッションがあります。

わたしたちはデジタル技術の専門家として、デジタルクリエイティブを通して、関わる人たちをサポートすることを生業としています。

自分たちが何を目指しているか分からなくなったとき、ミッションに立ち返ることでどのようにふるまえばよいか?を思い出すことができます。

自らのあり方をデザインしよう

デザインという言葉の語源は、ラテン語の「designare」だといわれています。 designareは「計画を記号に表す(=図面に書き表す)」という意味で、当初デザインという言葉は「設計」という意味で用いられていたことが伺えます。

自らのあり方を設計するためには、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)のような行動指針であったり、パーパスのような存在意義を表す言葉だったりを定めることが有効です。

MVVやパーパスを作成したら、それを他者に分かるように公開しましょう。わたしたちもWebサイトに前述のミッションを掲載して一年半、少しずつ自社のスタンスが認知されているのを実感しています。

あり方を設計するうえでは、自分たちがどう考えているのか以上に、他者からどう見えているのかが重要です。それは、これまでどのような仕事に携わってきたかという実績が補完してくれます。それを指してポートフォリオと呼んだりもします。

そういった意味では、今回のキッズデザイン賞やグッドデザイン賞のような実績は、客観的評価としてとても分かりやすく、非常にありがたいです。

多くの人は、知らないものや理解できないものに、興味を持つことはありません。何をやっているか分からない知らない人と、一緒に仕事をしたいと考える人は稀でしょう。

自分たちが得意なこと、やりたいことを実現するために、自分たちがどのような存在で、どんなことに取り組んでいるのかを、他者に分かるようにしっかり伝えていきましょう。

では。

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