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スマートな目標を設定する

前々回の記事の最後に、「適切な目標設定のコツについて書いてみようと思います。」と書きました。

今回は一週遅れでそのことについて書いていきます。

バックキャスト思考についておさらい

前々回の投稿内容を思い出すために、まずはバックキャスト思考について、おさらいをしていきます。

バックキャストは、未来の目標やビジョンを描いて、そこに向かっていま何をすればよいかを考える思考法です。そして「ありたい未来の姿」から逆算するバックキャスト思考が、肯定的な未来志向に役立ちそうだという話でした。

このときに、思い描いた「ありたい未来の姿」が、あまりにも現実離れしたものだと、そこに辿り着くまでに頓挫する可能性が高いので、そうならないためには適切な目標を設定する必要があります。

大きな目標を細かく分解して行動に移す

目標の達成については、違った観点で過去にも書いたことがあります。こちらの投稿では「具体的な問いを立てる」という話を書きました。

具体的な問いを立てる目的は、私たちの脳の「わからないことをわかろうとする」という性質を利用するためです。目標もこれと同じで、まずできるだけ具体的なゴールを設定して、そこへの道筋を具体的な行動にまで分解して、ひとつひとつ達成していくという手法を用います。

このとき、ビジネスにおける具体的なゴールのことを、マーケティング用語でKGI(Key Goal Indicator)、そしてKGIを達成するためのプロセスにおける中間目標をKPI(Key Performance Indicator)と呼びます。

プロセスを図示すると下記のようになります。

ビジネスにおける目標達成のプロセス

以前紹介した「WBS(Work Breakdown Structure)」と同じ考え方です。

適切なKGIを設定するSMARTフレームワーク

KGI・KPIのIIndicator)を日本語に訳すと、対象の状態を知る手がかりとなる指標のことです。目標の状態を知るためには、その目標が達成されたのか・達成されていないのか、達成するためにはどんな行動をどのぐらいすればよいのかを、より解像度高く確認できるようにしておく必要があります。

解像度の高い目標を立てるときに使えるのが、SMARTフレームワークです。

Specific(具体的)
Measurable(測定可能)
Achievable(達成可能)
Relevant(関連性のある)
Time-bound(期限がある)

SMARTフレームワーク

例えば「売上をあげたい」というような目標は、抽象的で解像度が低く、すぐに行動に結び付けることが難しいです。そこで、SMARTフレームワークを使って、解像度を高めてみると下記のようになります。

S:ネットショップの売上を伸ばす
M:ネットショップの月商
A:50万円から100万円にする
R:「売上をあげたい」と関連性がある
T:1年後

これを一文にまとめると、下記のように具体的で測定可能、かつ期限付きのKGIができました。

1年後にネットショップの売上を月50万円から100万円に増やす

このとき、適切な値を設定するのが難しいのは、「Achievable(達成可能)」と「Time-bound(期限がある)」ではないでしょうか。

例えば「1年後の売上を月50万円から1億円にする」だと、誰が見ても達成可能性が低い目標だということは分かりますが、ではどのぐらいの目標値が妥当なのか?と問われたら、判断が難しいところです。そもそも、妥当かどうかで目標値を設定していいの?という疑問も沸いてきます。

なので、一旦ここでは仮のKGIということにしておいて、続いてKPIを設定していきます。

KGIをばらしてKPIを設定する

KPIは、KGIを達成するためのプロセスを細分化していきます。例えば下記の例では、売上を増やすための要素として「客数」「客単価」という2つのKPIを設定して、さらに「客数」を「アクセス数」「購入率」という2つのKPIに分割しています。ここからさらに細かくKPIを細分化して、最終的にそれを達成するためのアクションを設定します。

月商100万円を達成するためのKPIツリー

このとき、KPI同士が「客数×客単価」のような掛け算の関係になることもあれば、「商品カテゴリーAの売上+商品カテゴリーBの売上」のような足し算の関係になることもあります。

ここで、「客数」「客単価」に設定した目標値の達成可能性が極めて低い場合は、KGIの「Achievable(達成可能)」または「Time-bound(期限がある)」を見直す必要があるかも知れません。KGIの段階では妥当性が判断できなかった目標値も、具体的なアクションまでばらしてみると、現実的か否かの判断がつきやすくなります。

とはいえ世界は不確実なもの

SMARTフレームワークを使って、解像度の高いKGI・KPIを設定することで、目標達成に向けていつまでに何をすればよいかが明確になり、具体的な行動を起こしやすくなります。

とはいえ、KGIはあくまで現在地から見たゴール設定なので、世界の情勢が変化していくなかで、当然ながら達成可能性は変動していきます。極端な例を挙げると、自社が販売している商品がネット販売禁止になってしまうと、ネットショップで売上を増やすという前提が無効になってしまいます。

このように、中長期的な数値目標の達成にこだわり過ぎると、世界の変化に順応できなくなるリスクを抱えています。特に変化が激しい現代においては、KGI・KPIは短期間で設定して、トライ&ラーンを短いサイクルで繰り返していくことが必要だと考えています。

そうなると、長期的な指針をKGIで示すのは難しそうです。そこで、KGIのような定量的なゴールと共に、定性的なゴールを掲げていくことも必要になります。定量と定性の2つの目標を両輪にしていくことが、肯定的な未来に向かっていくための良策ではないでしょうか。この件については、またいずれ書きたいと思います。

では。



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