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藤井聡太氏の5連敗が新聞記事になる件

▼「負けたこと」が記事になるプロ棋士といえば羽生善治氏だったが、「特定の棋士に連敗していること」が全国紙の記事になった例は寡聞(かぶん)にして知らない。

▼2020年9月13日付の読売新聞の見出しが印象的だった。適宜改行と太字。

〈藤井二冠が5連敗 豊島竜王に〉

〈将棋日本シリーズ(JT杯)の2回戦が12日、東京都内のスタジオで行われ、藤井聡太二冠(18)が豊島将之竜王(30)に敗れた。

藤井二冠と豊島竜王はこれまで公式戦で4回対戦して藤井二冠が4敗。今回の敗北で豊島竜王に対し、5戦全敗となった。

対局後、藤井二冠は「見落としがあって苦しくしてしまった」と、豊島竜王は「相性はよくわからない。勝っているのはたまたまです」と話した。〉

▼2020年9月15日現在の将棋棋士レーティングランキング。

1 藤井聡太 二冠 1980.8
2 渡辺明 名人 1939.5
3 永瀬拓矢 二冠 1937.2
4 豊島将之 竜王 1911.3
5 千田翔太 七段 1830.4
6 羽生善治 九段 1817.7
7 斎藤慎太郎 八段 1810.0
8 菅井竜也 八段 1800.4
9 佐藤天彦 九段 1777.2
10 糸谷哲郎 八段 1773.6

▼こちらは棋士ランキング。

1 藤井聡太二冠 1988 
2 渡辺明名人 1951 
3 永瀬拓矢二冠 1945 
4 豊島将之竜王 1923 
5 千田翔太七段 1842 
6 羽生善治九段 1827 
7 斎藤慎太郎八段 1822 
8 菅井竜也八段 1810 
9 佐藤天彦九段 1787  
10 木村一基九段 1786 

▼ということで、レーティングでだいたい勝敗がわかるものなのだが、藤井・豊島戦はこの例外であることがわかる。

▼藤井氏の5連敗は、読売だけが報道したわけではないが、読売が報道する理由は、竜王戦が読売のものだからだ。

将棋ブームを下支えしているのは新聞業界であることがよくわかる。逆に、新聞業界が大スポンサーでなければ、ここまで将棋ブームが高まることはなかっただろう。

▼以前も書いたが、竜王戦は将棋界で最も賞金額の高いタイトルであり(優勝賞金は4000万円を超える)、その竜王位に豊島氏が就いている。

もしも豊島氏と藤井聡太氏とが、竜王戦の7番勝負を戦うとすると、その時は、今よりもはるかに大きな藤井聡太ブームが吹き荒れると思う。

それよりも大きなブームの波が起こるのは、朝日新聞と毎日新聞が主催する名人戦に登場する時だろう。

(2020年9月16日)

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