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将棋の歴史上初めて「女性のプロ棋士」が生まれるかもしれない件

▼数カ月間、このメモを放っておいたら、毎日更新している時と閲覧者数があまり変わらず、拍子抜けした。そして、最も閲覧者数が多いのが、マスメディアについてのメモではなく、個人的な趣味の話だったのにも、拍子抜けした。去年の3月に書いた、将棋の話。

将棋のトッププロに見えている残酷な現実の件

上記メモで紹介した大崎善生氏は、将棋業界の書き手のなかで群を抜いて筆力のある人だ。代表作は映画にもなった『聖(さとし)の青春』。

▼大崎氏の最近の記事が面白かった。上記のメモを気に入った人なら、きっと下記の記事も興味深いと思う。

前回と同じく、日本経済新聞の2020年2月2日付。今度は朝刊。

タイトルは「若き戦士たち」。

▼要するに、もしかしたら史上初めて、女性がプロ棋士(四段)になるかもしれない、という話だ。これが実現すれば、今をときめく藤井聡太氏のプロデビューよりも大きなニュース価値がある。

〈西山朋佳奨励会三段。現在は女流三冠王でもある。地獄のリーグ戦ともいわれる奨励会三段リーグ30人のうちのたった1人の女性だ。この中から上位2人が晴れてプロ棋士、四段になることができる。〉

西山氏は24歳。四段になるための年齢制限が迫りつつある。

▼これまで最もプロに近づいた女性棋士は、「出雲のイナヅマ」と呼ばれる里見香奈氏。年齢制限の壁に阻まれた。女流プロの世界ではほぼ無敵の状態が続いていたが、最近は、西山氏のほうが分(ぶ)がある。

大阪から東京に出てきた西山氏。進学した慶応大学を休学した。

〈女性の奨励会員がアパートで独り暮らしをしながら三段リーグに挑む。将棋連盟に長く勤め多くの奨励会員を見てきた私にはその、想像を絶するような大変さがよくわかった。つきまとうだろう経済的不安や、たった1人の女性という孤独感。その頃彼女はいくつかの研究会を自分でストップしてしまい、その結果何をしていいかわからないという状態に陥っていた。

 そこで私は古い付き合いの信用のできるトッププロ3人に電話をして、将棋を教えてあげてくれないかと頼んだ。3人はすぐに快諾してくれた。女の子が1人東京で歯を食いしばって頑張っているのだ、見過ごすことはできないだろう。皆の気持ちは一緒だったと思う。それと同時に高名棋士を交えた研究会をスタート。これで生活のリズムが整い、いい方向へ歯車は回りだした。

 トッププロの稽古(けいこ)は厳しい。どうしても敵(かな)わないと泣きが入ることもあったが、西山は耐えた。

▼この、「どうしても敵わない」という感覚にぶちあたったことが、西山氏の実力の底上げに直結したのだろう。大崎氏は大きな仕事をした。

〈あれから2年が経つ。西山は今年度、3度のタイトル戦で里見香奈四冠をことごとく退(しりぞ)けて、女流三冠となった。初めて会ったときとは見違えるような実力を身に着けている。しかし奨励会員である西山は出る棋戦が限られており、これ以上タイトル戦は増えない。つまり出場可能な棋戦をすべて制してしまったのだ。〉

▼2020年2月初旬の時点で、西山氏は三段リーグで10勝4敗。全体の4位につけている。これがどれほどすごいことか。あの里見香奈氏でも、3段リーグで一度も勝ち越せなかったのである。

▼残り4戦。1位と2位は11勝3敗。西山氏は4戦全勝すれば、プロ入りがかなり濃厚だ。

▼次の勝負は2月16日。最終決戦は3月7日。いずれも1日に2局指す。「地獄」の星取表は下記のサイトで見ることができる。

(2020年2月7日)

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