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VRをスマホのように利用するためには、まだまだ問題が山積みなんだよなぁ。

ハイライト
・VR市場は縮小中?
・ハードウェアとメンタルの問題を整理
・3D酔いはどんどん解決されつつあるぞ~!


🎈VR市場は、しぼんでいく途中?

VRやAR技術は華々しい成果を上げ、ますます日常に根付いていく...ように思われましたが、近年、その市場は少しずつ縮小しています。

IT専門調査会社 IDC Japan 株式会社が実施したアンケートによると、VR/AR技術への国内企業の投資意欲は減少傾向にあります。

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さらに日本国内にとどまらず、アメリカの市場も縮小傾向です。

アメリカVR

2016年にはベンチャーキャピタルはVR関連企業に9億ドル出資していますが2018年には2億8000万ドル、つまり3分の1以下へ急落しています。

VR技術は夢のある技術です。でも、お金の流れが滞っています。

一体なぜなのでしょうか・・・?
そこには、さまざまな問題が隠れているハズです。
VR技術がスマホのように普及する日は来るのでしょうか?

今回は、VR技術が私たちの身近なモノにならない理由を紐解いていきましょう!


⚙️ハードウェアの問題:HMD編

「VR」と聞いて真っ先に思い浮かべるのは、Playstation VRやOculus、VIVEのような、頭にかぶるタイプのデバイスでしょう。これをヘッドマウントディスプレイ(HMD)と呼びます。

HMDタイプのVRシステムは没入感が非常に高く、VR空間に文字通り飛び込むことができるのですが、いくつかの制限があります。

1つ目は、コードの多さです。私もVIVEのセッティングをした経験があるのですが、とにかくコードが多すぎ。さらに部屋にポールを立てたりといろいろ大変でした。

最近は、Oculusクエストのように「コード無し」でVRを体験できるものもあるので、解決しつつある問題とも言えますが、一般的に普及するにはまだまだ時間がかかりそうです。

2つ目は、解像度の問題です。HMDの性質上、ディスプレイは目の近くに位置するため、解像度を高めるためには通常のPCディスプレイよりもさらに発光素子を小型化する技術が必要となります。

解像度に限界がある以上、VR世界は「現実世界よりも画質が劣化」した世界にほかならず、普及を妨げる要因になってしまっています。

3つ目は、形です。HMDはヘルメット状になってしまう為、現実世界の他の人と関わることが難しく、接触事故を引き起こしたり、コミュニケーションの問題を引き起こす原因となり得ます。

この形状を持っている限り、HMDは「家や室内で使うモノ」という限界を超えることはできないでしょう。


👀ハードウェアの問題:ウェアラブル編(AR)

SF映画が現実のモノになったかのように発表されたGoogle Glassですが、未だ広い市場展開はできていません。ゲームだけでなく誰にでも利用可能なスマートデバイスとして、期待度は非常に高いものです。

Google GlassはHMDに比べて小さく、実用的で、未来的なイメージのあるウェアラブル端末です。しかし、今のところは操作性の悪さなどが噂されており、まだまだ改良が必要な分野であることに間違いはありません。

手ごろな価格で販売されたら、市場の主流はスマートフォンからウェアラブル端末に移行すると考えられていますが、今のところそれがいつなのかはわかりません。


💫VRにおける3D酔いについて

主にHMDタイプのVRシステムでは、頭痛や吐き気などのいわゆる「3D酔い」症状が報告されています。2017年の3D酔いを検証する実験では、酔いやすいタイプのヒトは実験の翌日にわたって深刻な頭痛や吐き気に悩まされることもあったようです。

フレームレートを上げることで3D酔いが軽減されることはよく知られており、今後はデバイスの性能アップによって改善される可能性が高いです。

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左:dDOF適用アリ 右:適応ナシ

また、2015年の実験では動的被写界深度(dDoF)を実装することで、3D酔いがかなり軽減することが示されました。動的被写界深度とは、いわゆる「ボケ」を視界に合わせてどんどん適応していく技術のことです。

不快感、頭痛、目疲れ、吐き気、めまいなど様々な症状に有効だったので、非常に私たちに優しい技術と言えます。

私たちの視界は、ピントが合っている部分以外はボケています。
左側の方が実際の視界に近いというワケ。
おそらく脳は、全面クッキリ見えすぎた画像を処理しきれないのでしょう。

こんな感じで、3D酔いに関しては技術面でかなり進歩しています。さらなる改良によって、かなり起こりにくくなることが予想されますから、今後はあまり心配ないかも。

テクノロジーの進歩で変えられる部分はこんな感じ。

次は、社会的な問題や倫理的な問題にシフトして、VR技術を広く普及させるための問題点を考えてみましょう。


😇メンタルへの不安

SecondLifeというゲームをご存じですか?若い人は知らない方も多いでしょう。このゲームは15年以上も続く仮想世界です。アバターを作り、自分の分身としてコミュニケーションをとったり、創作活動をしたり、働いたりすることができるサービスです。

2006年にはトヨタや日産がSecondLife内で出店するなど、話題性も大きくユーザー数も他のゲームより圧倒的に多かったので、バーチャル空間でのヒトのコミュニケーションにはSecondLifeを題材にした研究も多く、VR技術やAR技術を考える際には良いモデルケースとなります。

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2016年の研究では、SecondLifeでアバターがわいせつな暴行を受けたことが報告されています。もともとSecondLife内にはアダルトエリアが設置され、その内部ではそういった表現が許されているのですが、この例はパブリックスペースでなされたもので、ユーザーは酷いショックを受けていました。

現在のVR空間は、Second Lifeに比べ没入感が高く、
もっと大きなダメージが発生する可能性が危惧されています。

VR空間でのコミュニケーションは、開発者側とプレイヤー側両方で、このようなメンタルへの不安をひとつづつ潰していく必要があり、まだまだ過渡期であることを知っておく必要があります。


🔒プライバシーは守られるのか?

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Google Glassは、目の動きを追跡することで着用者が何を見ているのかを確認することができる技術が使われており、この技術はGoogleが特許をとっています。誰がいつ、Google Glassを装着し、何を見ているのか。正確な情報を記録されています。

VR技術にも同様の問題が隠れています。

VRをプレイしていると、プレイヤーの性格や、他者との関わり合いや問題解決法などのプライバシー情報が全て記録される可能性があります。VR空間はデジタル空間ですから、全て記録の対象となり得ることを知っておく必要があります。

これらのプライバシー情報の利用には、どのような制限と自由が必要なのか、大きな議論が巻き起こっています。


😔脱社会化の不安

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VR技術は、仮想世界と現実世界の区別をなくしていきます。技術が進歩すればするほど、「現実」と「仮想」の区別がつかなくなるという恐怖は昔から広く叫ばれています。

バーチャル世界が広がっていくと、現実空間で否定的な言葉を言われたときの対応や、口論の解決法など、社会的な対処能力が失われることが危惧されています。

ある論文では、ある日本のオタク男性がリアルの関係よりもバーチャルな女性を好むことを例に出しています。彼らは「本物の彼女とは結婚を考えなくてはいけない。だから3次元の女性と付き合うのはためらってしまう」と主張していることを本気で心配していました。

これを冗談と捉えてよいのか、今は誰にもその答えは分かりません。


まとめ

広くVR/AR技術が普及するためには、ハードウェアの問題やメンタルの問題、倫理的な問題などが山積みです。VRへの出資額減少は、これらの現実的な問題が広く認識されてきた証とも言えます。

今回はネガティブな情報をたくさん掲載しましたが、実は、VR技術は夢のある技術で、医学やメンタルケアへの応用も広く検討されています。

痛みやファントムペインの治療、認知症への応用、リハビリやPTSDの治療などなど、期待される効果は数えきれません。

したがって、VR技術への問題へとしっかり向き合い、それらを解決していくことで、私たちの生活が一層豊かになることでしょう。前向きに問題を解決していきましょう。




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引用

Ali, Nabeel Salih, and Mohammed Nasser. "Review of virtual reality trends (previous, current, and future directions), and their applications, technologies and technical issues." ARPN Journal of Engineering and Applied Sciences 12.3 (2017): 783-789.

Han, Jungmin, Seon Hee Bae, and Hyeon-Jeong Suk. "Comparison of visual discomfort and visual fatigue between head-mounted display and smartphone." Electronic Imaging 2017.14 (2017): 212-217.

Carnegie, Kieran, and Taehyun Rhee. "Reducing visual discomfort with HMDs using dynamic depth of field." IEEE computer graphics and applications 35.5 (2015): 34-41.

Royakkers, Lambèr, et al. "Societal and ethical issues of digitization." Ethics and Information Technology 20.2 (2018): 127-142.

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