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アスリート2.0。頭を使うアスリートのアドバンテージを探る。

アスリートにもエビデンス(科学的根拠)が求められる時代です。

アスリートの選手生命は、決して長くありません。サラリーマンが60代になっても余裕で働き続ける世の中ですが、アスリートはそうはいきません。限られた時間の中で、最高のパフォーマンスを発揮する必要があるのです。

アスリートには、「意味のある」トレーニングを「最高効率」で行うことが望まれます。すると、必然的に頭を使う必要があるのです。

来たるアスリート2.0に向けて、「頭」の必要性をご紹介していきます。
アスリートじゃない人でも、頭と体の思わぬ繋がりを見ることができる良い機会かもしれませんよ。

🏃‍♂️「無心で走る」は通用しない

頭を使うランナーは、早く走れる。

普通のマラソンの約2倍。80kmもの長距離で最高標高2238mにも達する過酷な状況を走るレース。それが「ウルトラマラソン」です。

パドヴァ大学の研究チームは競技にチャレンジした屈強な30人のアスリートに協力してもらうことに成功します。タイムの早いグループと、遅いグループに分け認知機能テストを行ってもらったのです。

認知機能が高い方がタイムも早いのでは・・・?
と考えたのです。

アスリートが行った認知テストを用意しました。
実際に体験してみましょう。

「タップ」と書いてあるときはタップしてください。
「ストップ」と書いてあるときは、何もしてはいけません。

どうですか?「ストップ」の時に思わずタップしちゃいませんか・・??
実は、タイムの早いグループは「ストップ」の時にタップする確率を低く抑えることが出来ました。

早いグループの正答率は85%。
遅いグループの正答率は65%だったのです。

このテストは、「衝動性」をコントロールできるかどうかを測るテストです。ウルトラマラソンはとても長い距離を過酷な環境で走るレースです。小石や岩が多い地形を安定して走るためには、刺激に反応して動きをコントロールする必要があります。

つまり、自分をコントロールする「脳」機能
アスリートのタイムを大きく左右しているのです。

🤯「脳」が大切なのは、もちろんランナーだけじゃない

サッカーは「チェス」だ

日本代表を務めた経験もある「オシム監督」に数学的素養があったのは、良く知られています。彼は「サッカーの道を歩んでいなければ数学の教授になっていたかもしれない。」と語っています。

サッカーは、戦略的なスポーツです。

プレイヤーは、常に状況を評価し、過去の経験と比較し、新しい可能性を生み出し、行動を迅速に決定しなければなりません。それだけでなく、敵の計画をすばやく阻止する必要があります。

したがって、サッカーのチームプレーヤーにとって、状況把握能力や、プレイの創造性など「脳」機能は非常に重要です。

2012年にカロリンスカ研究所で行われた実験では、Design Fluencyというテストを使って、サッカー選手のクリエイティビティを調べました。Design Fluencyは、クリエイティビティと脳の実行能力を測定するテストです。

Design Fluencyの例:
Q. 4つの点を使ってなるべくたくさんの図形を書いてください

その結果、成績が高いサッカープレーヤーほど、Design Fluencyスコアが高い傾向にありました。面白いことに、Design Fluencyスコアが高い人はアシストを決めてチームに貢献することが出来たのです。

言われてみれば、サッカーのアシストって芸術的ですよね。
クリエイティビティがある人の方が、成績が高いのは納得できます。

同じように、脳機能が高い方が有利だという研究結果が出ているスポーツはたくさんあります。バスケ、テニス、サイクリング、野球などなど...

んじゃー、とりあえず脳トレでもすっか!
って思った人の前には、大きな落とし穴が潜んでいます。

💪脳トレには意味がない

今までの話だと、頭が良い方が運動にも有利なんだから、頭を鍛えた方が良いと思うのは当然。でも、残念ながら脳トレは時間の無駄かもしれません。

1990年台から脳トレの研究は盛んに行われていて、さまざまなテストが開発されました。そのほとんどは効果のないテストだと後に判明しますが、未だ根強く支持されている脳トレがあります。

それが「N-back課題」です。

最近だとメンタリストDaigoさんが紹介していて有名になりました。
その影響もあって、いろんな人が試しているようです。

しかし残念ながら、N-back課題をやっても脳機能はほとんど向上しません。

例えば、2013年に発表され641回も引用されているJournal of Experimental Psychology誌に掲載された論文では、「N-back課題をトレーニングすると、N-backのスコアは上がる。しかし、ほとんど認知機能にポジティブな影響を与えることはない」とされています。

さらに、イリノイ大学で2016年に行われた研究や、2017年にPsychonomic Bulletin & Review誌に掲載されたメタ分析なども同様の結果を示しています。

↑に紹介したBlogでも、大した効果は出ていないので
気になる方は読んでみてください。

全く意味がないワケではありませんが、
「ほとんど」意味がありません。

では、どうするべきなのでしょうか?

🔎「衝動性」にフォーカスする

結局、サッカーの脳はサッカーをするのが一番の近道。他のスポーツでも一緒です。脳機能は「その機能を使おうとしないと伸びない」ということが有力なので、スポーツの能力を上げたいなら、スポーツをするしかありません。

とはいえ、↑のテストが上手い人はアスリートとしてのポテンシャルが高かったことは重要です。

そう、このテストの本質は「衝動性」をいかに抑えられるか

おいおい、スポーツは即反応できないと話にならないぞ!って?

安心してください。「反応するべき時に反応」し、「反応していけないときは反応しない」テスト。スポーツでも反応しなくていい時まで無駄に反応していたら、体力の無駄遣い。それでは勝てるものも勝てませんよね。エリートアスリートは、反応すべきポイントだからこそ判断し、行動を修正するのです。1~100まで全て判断しているワケではありません。

衝動を抑え、一瞬で判断する。
それが重要です。

「一瞬で判断する力」はスポーツはもちろん、緊急度の高い判断を必要とされるすべての人に役立ちます。この本は日本初の国際宇宙ステーションのコマンダーを務めた宇宙飛行士、若田光一の書。

判断力の重要性という意味では、宇宙飛行士とスポーツマンはよく似ています。小難しい理論が沢山、というより役立つスキルが沢山書いてあります。あまり本を読んだ経験がないヒトにもオススメの一冊です。

今回のギモンの提供者

今回のギモンは、サークルメンバーのNUまゆげさんの提供でお送りしました!アスリート系・健康のギモンをバンバン出してくれるNUまゆげさんに感謝!ありがとう😄

おしまい!

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引用

Cona, Giorgia, et al. "It’sa matter of mind! Cognitive functioning predicts the athletic performance in ultra-marathon runners." PloS one 10.7 (2015).

Vestberg, Torbjörn, et al. "Executive functions predict the success of top-soccer players." PloS one 7.4 (2012): e34731.

Redick, Thomas S., et al. "No evidence of intelligence improvement after working memory training: a randomized, placebo-controlled study." Journal of Experimental Psychology: General 142.2 (2013): 359.

Simons, Daniel J., et al. "Do “brain-training” programs work?." Psychological Science in the Public Interest 17.3 (2016): 103-186.

Soveri, Anna, et al. "Working memory training revisited: A multi-level meta-analysis of n-back training studies." Psychonomic bulletin & review 24.4 (2017): 1077-1096.

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