経皮毒は本当に存在する_界面活性剤ごとに比較してみた__陰イオン系_アミノ酸系_

経皮毒は本当に存在する?界面活性剤ごとに比較してみた。【陰イオン系・アミノ酸系】

■そもそも経皮毒とは?

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経皮毒とは『皮膚を通して、体の中に有害物質が入り、毒性を示す物質』といわれています。

しかし、経皮毒という言葉に明確な基準は存在しません。竹内久米司氏や、稲津教久氏によって作られた造語で、そもそも科学的な学術用語ではありません。

英語にも経皮毒に対応する言葉は存在しません。”Dermal poison”や”Dermal toxicity”という言葉になると思われますが、アメリカ国立医学図書館の登録しているMeSH termという索引には一切登録されていません。

それ故に、厳密な定義をすることができません。


この時点でかなり胡散臭い”経皮毒”ですが、しっかり検証しなければそれが本当かウソかを見抜くことはできません。

今回は”シャンプーやボディソープに使われる界面活性剤”が、実際に”経皮毒として働くのか?を科学論文を使用しながら徹底的に検証します!


■実際のところ、皮膚に毒が吸収されるなんてことあるの??

湿布薬

結論から言うと、皮膚から何かが吸収されることはあり得ます。
しかし、体に入ったら毒性が出るというのは、間違いです。

一旦考えてみましょう。

『捻挫や肩こり、腰の痛みなどが出たときに、シップ薬を貼った経験はありませんか?』

なぜシップ薬が効くのでしょうか?それは、シップ薬の成分が体の中に入って効果を発揮するからです。皮膚は外界からの物質をシャットアウトする完璧なバリアではありません。ある程度の吸収性があることは事実です。

しかし、湿布薬の痛み止め成分は、飲み薬とまったく同じものもあります。それにも関わらず、湿布薬をいくつか貼ったところで胃腸障害の副作用が出ることはほとんどありません。

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https://medicalnote.jp/contents/180220-004-AQより引用

これは、湿布薬の成分は皮膚を通過して真皮まで移動するものの、皮下組織を通過して、血管まで入り込んで移動するとは限らない。ということを示しています。

経皮毒が本当に存在するなら、循環血中もしくは、他の臓器に毒物が検出される必要があります。しかし、そのようなデータは見つかりませんでした。

さらに、体に入ったところですぐに分解されてしまう成分は、蓄積もしなければ、毒性を発揮する事もありません。”経皮毒”があるなら、分解を受けにくい構造を持つことが必要です。


■毒性は界面活性剤のせいだ!のウソ。

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・界面活性剤は油汚れを落とすために必要な成分
・界面活性剤にも強いものと弱いものがある

”界面活性剤が入っていないから安全”とか”界面活性剤が入っているから危険”。そんな議論がありますがどちらも間違いです。

界面活性剤は水と油を混ぜて流しやすくする性質があります。ただ水をかけても油は流れないので、界面活性剤を入れ込むことで油汚れを効率的に落とすことができます。

しかし、通常のシャンプーやボディソープに含まれる濃さの界面活性剤で毒性を発生するようなものはありません。

そりゃぁアレルギー体質のヒトがアレルギーを発症する可能性はありますが、これは毒性とは全く別の話です。アレルギー体質の場合は、界面活性剤が入っていなくてもアレルギーを発生する可能性があります。

界面活性剤の種類の中でも、すごく毒性の強いものもあれば、毒性の低いものもあるということを理解しましょう。種類がたくさんあるので、すべてを覚えようとしたら難しいですが、今回のnoteを読めば、選ぶべき界面活性剤を含んだシャンプーやボディソープに出会うことができます。

界面活性剤=悪としか考えられないのは、
良いもの・悪いものの種類を覚えられない頭の悪い人の思考です。
そんなものは今すぐごみ箱に捨てて、使える知識を身につけましょう。


■よく聞くラウリル硫酸Naやラウレス硫酸Naってなに?

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ラウリル硫酸Naやラウリル硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸Naは陰イオン界面活性剤と呼ばれています。

安価で強力な洗浄力を持つため、非常にたくさんのシャンプーやボディソープに含まれています。そのため、値段だけでシャンプーを決めると、たいていこれらの界面活性剤が入っています。

昔から刺激性や毒性が報告されている物質なのですが、実は使ったらアウト!というほど強力な毒性を持つわけではありません。


■よく聞くラウリル硫酸Naやラウレス硫酸Naの毒性って?

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2015年に行われた大規模レビュー研究から、ラウリル硫酸Naやラウレス硫酸Naの毒性について考えてみようと思います。

■皮膚毒性

「ラウリル硫酸Naを24時間皮膚に着けたとき、濃度が2%以上だと発生」

することが知られています。

シャンプーやボディソープを使う時間は数分ですから、実際にはこれだけの短時間で皮膚毒性が出てくることはほぼないといえます。さらに、ラウリル硫酸Naの濃度は1%程度に控えるよう推奨されており、シャンプーの中でも濃度2%を超えるものは少数。直ちに有害である可能性は極めて低いと言わざるを得ません。


■脱毛

「ラウリル硫酸Naは毛包に蓄積する可能性がある」

これを根拠に脱毛の原因としている文献が多数あるものの、”ラウリル硫酸Naを使用しているヒトの髪が抜けやすい”ことをしめす根拠はありません。


■発がん性、臓器毒性

皮膚からラウリル硫酸Naは吸収されますが、大部分は皮膚表面や皮膚中に残ります。したがって、血流にのって臓器に運ばれることはほとんどありません。

さらに、血流にのって運ばれたラウリル硫酸Naは、肝臓で速やかに代謝されて尿や、便、呼気などから急速に排泄されることが分かっています。

これらのデータを踏まえると、ラウリル硫酸Naが臓器に蓄積して毒性を示すのはかなり難しいのではないかと考えられます。

実際に、ヒトでラウリル硫酸Naが原因の発がんや臓器毒性を示した発表は見つかりません。何億人というヒトが、ラウリル硫酸Naに触れているのにも関わらずです。


■まとめ

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ラウリル硫酸Naは確かに高濃度では危険性が0とは言えませんが、短時間触れるだけで重篤な障害を引き起こす可能性はかなり低いです。

ほかにも推奨する界面活性剤があるため、わざわざ積極的に使用する必要はありませんが、特にラウリル硫酸Naがゼッタイダメと主張する根拠はありません。使っているヒトをバカにするのはやめましょう。

ラウレス硫酸Naは、ラウリル硫酸Naの毒性をマイルドにして、使いやすいようにデザインされた物質です。しかし、私はさらに毒性の低いアミノ酸系を推奨しています。


■何が安全で、何が危険なの?

洗浄力

大人女子のための美肌図鑑より引用

界面活性剤は大きく4つに分けられます(すべて覚える必要はありません)

①アルキル硫酸系:ラウリル硫酸Naやラウレス硫酸Naなど
②せっけん系:オーガニック石鹸、石鹸など
③カルボン酸系:スルホコハク酸Na、ラウレスカルボン酸Naなど
④アミノ酸系:ココイルグルタミン酸Na、ラウロイルグルタミン酸Naなど

人間の皮脂をいい感じに洗い流してくれるのは③カルボン酸系、④アミノ酸系の2種類です。

①や②は洗い流しすぎてしまうことで乾燥を引き起こしやすいので、普段使いは③④でOK。

推奨は、”ココイルグルタミン酸Na””ラウロイルグルタミン酸Na”などのアミノ酸系と言われる界面活性剤です。

この辺の知識は小難しいのですが、大人女子のための美肌図鑑で詳しく解説されています。もっとケアの方法や、シャンプーの選び方について詳しくなりたい人は必見。分かりやすくまとめてあるので、とてもおススメの一冊ですよ。

■安全性の根拠まとめ

それぞれの安全性について証明されている成分をご紹介していきます。

遺伝毒性なし:ココイルグルタミン酸Na、ラウロイルグルタミン酸Na

発がん性なし:アミノ酸系の界面活性剤すべてで報告なし

かゆみなし:ココイルグルタミン酸Na(10%までOK)
      ラウロイルグルタミン酸Na(10%までOK)

皮膚刺激性なし:ココイルグルタミン酸Na(5%までOK)
        ラウロイルグルタミン酸Na(5%までOK)

ちなみに、5%以上の濃度でシャンプーやボディソープを作ることは稀なので、ほとんど濃度については考える必要はないかと思います。

つまり、”ココイルグルタミン酸Na”と”ラウロイルグルタミン酸Na”などのアミノ酸系の界面活性剤をメインとするシャンプーやボディソープを選んでおけば間違いはありません。


■科学的根拠的にオススメのシャンプー

男性用ならVITALISMが断トツでオススメ。メインの界面活性剤を安全性の高いココイルグルタミン酸Naとしながらも、ココイル加水分解コラーゲンKという高級保湿成分を含有しています。頭皮の環境も整える効果があるため、ストレスフルな生活を送る男性にピッタリのシャンプーです。


女性にオススメなのはナプラのケアテクトHBヘアカラーで髪にダメージを負いやすい女性のために、ダメージケア成分ヘマチンを配合している安心処方。アミノ酸系以外に、スルホコハク酸系などの界面活性成分を含むことで洗浄力を上げていますが、むしろワックスやヘアスプレーを使っている人の場合、しっかりとそれらの異物を洗い流すために有効に働くと考えられます。


■オーガニック石鹸ってカラダにいいんでしょ?

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私的には全くオススメしません。

というのも、石鹸はラウリル硫酸Na、ラウレス硫酸Naについで洗浄力の高い界面活性剤です。肌から必要な油分を奪い、天然の保湿成分を分泌するたんぱく質を破壊してしまう可能性があるといわれています。

オーガニックという言葉はいかにも安全そうですが、天然だから安全とも言えません。さまざまなハーブ成分や香り成分が入っていることで、逆にアレルギーの発生率が高い傾向にあるのです。アレルギー体質の方にとって、いくつかのオーガニック石鹸を試すことはかなりリスキー。逆に肌トラブルの原因となるかもしれませんよ。


■シャンプーやボディソープに触れた後は肌が乾燥するから...

肌の乾燥は肌トラブルの原因。発疹やニキビ、謎のブツブツの原因となります。お風呂に入った後は必ず保湿をしましょう。


保湿をしたことのない男性のために


■肌トラブルの原因・よい化粧品の選び方を知りたいヒトのために。

大人女子のための美肌図鑑がオススメです。この本はかなり参考になります。

極端なアレルギーの話もなく、高価なのに効果がない化粧品を無駄にそろえる必要もありません。実際の科学的な知見に基づいて、大事なことだけちゃんとやる。という基本的な立場を守りつつ、肌を最高の状態に作り上げる方法が書いてあります。

無駄に化粧品をそろえて散在するよりも、一冊家に置いておくのが推奨の本ですよ。化粧品は高いので、最終的なコスパは本の方が明らかに上ですよ!


おしまい

このnoteは、世界中の論文を読み漁ることが趣味の私が、普段の生活や健康、美容などについて、根拠に基づいた意思決定をするための知識を提供していくnoteです。アナタの時間をもっと楽しいことや自分の興味のあることに使うための情報を集めて書いていきます!

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引用

Bondi, Cara AM, et al. "Human and environmental toxicity of sodium lauryl sulfate (SLS): evidence for safe use in household cleaning products." Environmental health insights 9 (2015): EHI-S31765.

Burnett, Christina L., et al. "Safety assessment of amino acid alkyl amides as used in cosmetics." International journal of toxicology 36.1_suppl (2017): 17S-56S.

https://cosmetic-ingredients.org/surfactant/ココイルグルタミン酸naの成分効果と毒性/

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