見出し画像

敗金主義者と教育

 5月に入って天気も変わりやすく、誠に落ち着かない日々が続いている。暖かい方が気分は優れるが、暑過ぎては体がまいる。人間というのは動物なのである。自然の環境に左右される者だ。
 しかし、やはり他の動物と違うのは「知識の蓄積」をしてきたことだろう。記憶媒体の発明(文字)、そして教育がそれを実現してきた。
 人は教育されることで、「常識」を無意識に押し込み、そのあいた容量で新しい知識を仕入れ、思いも寄らない発明をして次に繋げ続けてきたわけだ。現代人には教育の重要性、必要性を改めて議論することもないだろうが、この現代だからこそ改めて考えてみる側面もあると思うのだ。

 まず、公教育と言うのは「洗脳」に他ならない。特に日本の学校教育はその傾向が強い。考えるより覚えることの重要性が増すからだ。「理」系はその性格上その傾向が低いが、文系、特に歴史は恣意的な価値観が多分に含まれているようだ。そして、義務教育や高校大学において、音楽美術工作などの「アート」はおなざりだ。こども園の方がまだ取り組んでいる。日本におけるこの「理系」「文系」の区分に疑問を持った人がどれくらいいるだろう?大体の人間はこれで自分を分けてきたし、ただの得意分野の違いだろう、くらいに考えていはいないだろうか?テストの成績によって分けるのか、適正テストの結果で分けるのか?敗金主義者の私は実は50%50%だったので全く困ってしまったのは昔の話ではある。
 ただ、ここで言いたいのは新しい事実である。
 それは教育において実は「理系」「文系」は概ね繋がっており、分けられるべきは「理:物理世界:現実世界」か「アート:精神世界」であるということなのだ。
 実は「法律」も「理=自然法則」であるとしたらどうだろう?人の営みの積み重ねである「歴史」はこのどちらもを必要とするだろうし、文学は「アート」の範疇だろうし、医学は「理」だろうが「精神医学」は「アート」が必要になってくるだろう。哲学とは「常識がなぜ常識たり得るのかに答える学問」だとしたらそれは「理」であるし「アート」でもあるわけで、まさしく根本を考える必要が出てくるだろうが、そこに行き着くのは「自分の意識」が「物理世界」と「精神世界」の二つの世界を行き来する存在である事実なのであるわけで、それこそが教育として学ぶべきふたつの重要な要素なのだから、それを「教育」の分類の最初に持ってくるべきと思うが如何だろうか?大学ではなぜそれを教えないのか?いや、教えられる先生が存在していないと言うことなのかもしれない。

 その大学であるが、今では研究や学問の追求よりも「職業訓練校」の側面が否めない。良い就職をするためのワンステップになっていやしないだろうか?だが、そんな大学で学んでいるとしても、やはり会社などに就職するとギャップが出てしまうのだからなんともがなである。
 それは、「教育」の性質が違うから当然なのだ。
お金を払って学ぶのと、お金をもらうために学ぶのでは、教える方も教わる方も立場が違ってしまう。それを理解できないとギャップが生まれるわけだ。
 さて、ここでお金の登場である。
 実は「教育」にも「経済」は影響するのだ。まず今の日本はデフレであるから成長は望めない。仕事も大きく増えはしない。しかし、人は歳をとるので人が入れ替わるわけだが、仕事の量が増えないのであれば、当然仕事は取り合いになってしまう。そうなれば先行して働いている立場の人が新しい人に仕事を教えるのは「不利」になってしまう。教育することが損となるわけだ。だから、教えないのが「合利的」となる。一方、新しい人は無理して仕事を覚えても給料が増えないのであればそれは短期的な「損」と考えるだろう。給料が上がらないのに責任ばかり取らされるのはたまらない。求められる以上の仕事を覚えても「不利」になるだけなら、成長しないのは「合利的」とも言えるのだ。こうなると誰も教育など必要としなくなってしまう。そして、知的衰退が進んでいく、と言うのがデフレスパイラルの負の側面だ。
 これがインフレで好景気なら話が逆転する。人を教えて育てた方が即時に利益につながるのだから。新しい人にもどんどん仕事が振られる。今いる人も人を育てなければ自分の負担が大きくなるだけなのだから否が応でも育てようとする。今だって人手不足が生じている場所はその傾向があるだろう。
 高度貨幣経済社会、資本主義社会では経済状況で人の在り方も左右されるのだ。これが機能しないのは「お金」に影響されない関係、親子と価値の繋がりにおける教育くらいだろうか。いや、実際はそれすらも影響を受けるだろう。
 全く、上記のことを自覚している大人がどれほどいるだろうか?
 ただ、人類は「教育」して今を築いてきた。それを蔑ろにしては衰退するだけなのである、と敗金主義者は考えるのであった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?