見出し画像

異世界ファンタジーの書き方

さて、ここからは、各ジャンルごとに、それぞれの書き方について述べていきたいと思います。なお、ジャンルの分け方は、カクヨムに基づいております。

異世界ファンタジー、現代ファンタジー、SF、恋愛、ラブコメ、現代ドラマ、ホラー、ミステリー、歴史・時代・伝記の計9種類について解説していきます。

1.世界観に関する注意点

異世界ファンタジーは最も人気のあるジャンルといっても過言ではないでしょう。そのパターンは、現在では大きく分けると二つになり、

・異世界転生(転移)物
・そうでないもの

となっています。これをさらに細分化すると、追放系とか、スローライフ系とか、様々なものが出てくるわけですが、あまりにも数が多いので、ここでは詳細は割愛します。

この基本を押さえた上で、さらにもう一つ、大きな区分けについて話をすると、世界観がどうなっているか、です。

現在、主流を占めているのは、小説家になろうに端を発する世界観、いわゆる「ナーロッパ」になります。このナーロッパを理解するには、いま流行っている異世界ファンタジー物を片っ端から読むのが最適ですが、一度学んでしまえば、難しい世界観の説明は不要となる、というメリットがあります。

作者も読者も、すでに世界観については共通の認識を持っているので、あえての説明がいらないのです。

すなわち、ジャンルとしてはさらに以下の通り四つに細分化できると言えましょう。

①異世界転生(転移)物 × 世界観:ナーロッパ
②そうでないもの    × 世界観:ナーロッパ
③異世界転生(転移)物 × 世界観:オリジナル
④そうでないもの    × 世界観:オリジナル

基本的に、いま書くのであれば、①か②で攻めていくのが無難です。なぜなら、読者層が、オリジナルの世界観についてこれない可能性があるからです。

とは言っても、和風ファンタジーや、中華風ファンタジーも人気作品はありますので、そのあたりを狙うのであれば、独自の世界観でも問題ないでしょう。

一つ、残酷な事実を話しますと、いまどきの読者にとって、『ロードス島戦記』や『スレイヤーズ』は古典に入ってしまう、ということです。

『ロードス島戦記』はともかく、『スレイヤーズ』まで⁉ と思うかもしれません。そう、時代が変わったのです。

私と同じ四十代の小説家となると、自分ならではの、独特の世界観を持つファンタジーをぶつけたい、という気持ちが強い人も多いと思いますが、それはあまりにも無謀な挑戦です。

少なくとも、オリジナルの世界観で勝負するのであれば、「ナーロッパとは何か」を理解した上で、そことの差別化を図りながら書くつもりで執筆しないといけません。そうしないと、読者との認識のズレが生じてしまい、どんどん独りよがりな作品へと仕上がっていってしまいます。

2.ストーリーに関する注意点

①異世界転生(転移)物 × 世界観:ナーロッパ
現代においては、極めて王道なジャンルと言えます。それゆえに、ライバルも多い激戦区です。異世界転生物は下火になるどころか、一代ジャンルとして確立されたものと私は考えています。

このタイプのストーリーで気を付けたいことは、異世界へ行く、という行為にどういう意味を持たせるか、です。
人生詰んだ中年サラリーマンが転生して異世界へ行くのと、意気軒昂で順風満帆な高校生が転生して異世界へ行くのとでは、その重みが異なってきます。

基本的には、現実世界で辛い思いをしていた主人公が、異世界へ行くことによって第二の人生を歩み始める、という展開にするのがベターでしょう。これは、読者が自分の辛い境遇を主人公に重ね合わせるので、その主人公がハッピーになっていく様を見ることに、喜びを感じられるという効果があります。

②そうでないもの    × 世界観:ナーロッパ
異世界転生でないもの、すなわち、異世界の現地人だけで物語が進むジャンルです。主人公も現地人なら、ヒロインや敵も現地人、です。

このタイプで多く見られるのが、「ざまぁ」系です。主人公は何らかの理由で迫害されていたり、あるいは冒険者のパーティから追放されたりして、不幸な境遇を背負っています。ですが、実は主人公はものすごい能力を秘めている、あるいはものすごい能力を後天的に手に入れることで、あとで自分に酷い思いをさせてきた連中に復讐する。ざまーみろ、だから、「ざまぁ」系なのです。

この「ざまぁ」系は、よく、特に社会人に刺さるジャンルだと言われています。社会の理不尽さを経験している読者にとって、主人公を迫害する連中はまるで自身のクソ上司と同じような存在だと感じることでしょう。そうやって感情移入した果てに、「ざまぁ」をすることで、溜飲が下がる、という仕組みになっています。

その他にも細かく分けると、色々な書き方がありますが、ナーロッパのテンプレさえ押さえていれば、書くこと自体は苦労しないでしょう。

問題は、次の二つです。

③異世界転生(転移)物 × 世界観:オリジナル
④そうでないもの    × 世界観:オリジナル
これらに関しては、上手くヒットすれば爆発的な人気を獲得する可能性を秘めていますが、しかし、まずヒットの土台に載せることが難しいものとなっています。

何よりも、世界観の説明を入れないといけないのが、厳しい。

そして、作者的にも、世界観をしっかりと作り込む必要が出てきます。これは、かつて私が電撃文庫の編集者に言われたことですが、「オリジナルのファンタジーを書くのなら、世界観の作り込みは大事です。それこそ歴史に関することまで詳細に詰めないと、あとでボロが出てきます」とのことで、それを受けて、じっくりと世界観を練り込みました。

参考までに、『一〇八星伝 天破夢幻のヴァルキュリア』でどんな設定を作ったか、画像でお見せしたいと思います。

結局打ち切りになったので、作中で出てくることはなかったのですが、並行世界の概念もあるため、その設定資料等も混じっています。

ここから先は

1,878字 / 4画像
この記事のみ ¥ 100

記事を読んでいただきありがとうございます!よければご支援よろしくお願いいたします。今、商業で活動できていないため、小説を書くための取材費、イラストレーターさんへの報酬等、資金が全然足りていない状況です。ちょっとでも結構です!ご支援いただけたら大変助かります!よろしくお願いします!