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テーブルの上にグミがあった
家に帰るとテーブルの上に小皿が置いてあって、そこには色とりどりの小さな粒が積まれていた。赤色、黄色、緑色。それらはシーリングライトの光を鈍く反射させている。
「めずらしいね、グミなんて」
僕は小皿から赤色のグミをひとつつまんで、ソファに座って本を読んでいた同居人に言った。グミを近くで見ると熊のような形をしていた。
「ちょっと口が寂しくなったから」と同居人が本から顔をあげて言った。
手
2020年夏ごろに書いた小話
アイスティーを二杯入れて、リビングに運ぶとリンカリンネがカーテンをすべて開いて窓に手を触れ、その向こうの景色を見ていた。
子供たちの声が聞こえる。
僕の住むマンションのすぐ向かいには公園がある。割と大きめな公園で、ブランコや滑り台、アスレチック遊具などの定番どころがあり、野球のグラウンドがあり、夏になると幼児が遊ぶような大きさのプールも開放される。
テーブルにアイスティーを置いて、リンカリ
路地裏のリンカリンネ
川沿いには今にもつぶれてしまいそうな木造アパートが連なっており、何だか南こうせつの曲に出てきそうな風景だと思った。先ほどまではいやに暑かったが、いつの間にか随分と涼しくなっていることに気がつく。川の冷えた空気を風が運んでくれているからだろう。
木造の建物と建物のあいだの路地に何故だか強い興味を惹かれることがある。決して薄暗いところが好きだというわけでもないのに。狭い場所が好きってわけでもない。