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掃除によって自己を拡張する~SICF21出展作・岡谷祥平「掃除の時間」

しばらくSICF21出展作から気に入った作品を丁寧に紹介しようかなと思っています!チケットは完売でしたが、もともと人数をかなり絞っていて、通常より人の入りがぜんぜん少なかったんだそうです。素晴らしい作家さんたちが少しでも見つかりますように!(A日程はちゃんと見られてないので、ほぼB日程からです、すみません!)

一番好きな作品はこちら。岡谷祥平さんの「掃除の時間」です!

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パフォーマンスアート、体験型アート、インスタレーション、みたいなジャンルになるかなーと思うのですが、汚れた壁と古い自転車の汚れを掃除しつづけるという作品です。

来た人が一緒に掃除することもできます。(コロナ対策としてゴム手とかが用意されていました)

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ご本人が介護の現場で働いていて、仕事として一日中掃除しつづけていて、さらに家でも掃除するとすると、日常のほとんどが掃除の時間になるみたいです。

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私がおもしろいなと感じたのは、作家の狂気性なんですね。SICFは44000円のブース費用がかかります。その金額を払ってきれいなブースにわざわざ汚れている壁を設置し、汚れてる自転車を置き、それを自らずっと掃除しつづけているって、冷静に考えるとけっこう狂ってませんか?

また、想像がつくように、こういう作品って売れないですよね。こういう作品で生きて行こうとしたら、美術館からパフォーマンス代をもらうか、美術助成金をもらうか、アートフェスとかで招待されるとかじゃないと厳しいです。あるいは今だったらビデオアートとしてYouTubeにあげるとかもあるかもしれませんが、それでもほとんど見られないはず。

この状況でコロナ対策もして、大掛かりに設置して、ひたすら掃除し続ける。やってることは「掃除」なので、やろうと思えばだれでもできるはずですが、こんなに準備して時間もお金もかけて掃除する人ってほとんどいないと思うのです。

それをやる、やりたい、やらねば。

そういう作家の真摯さみたいなのに、とても惹かれるのです。私もインスタレーションをメインにつくる作家なので、大型作品が売れにくいのはよく分かっています。

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SICFにギャラリストの方がちょっと来てくださっていて、話を聞いたら日本は特に立体が売れないのだとおっしゃってました。器みたいなものは売れても、立体作品になると売るのが難しいと。

最初から絶滅危惧種みたいなものに生まれついていて、それでも生きようとしている姿に、私は作家、あるいはヒトの生命力の強さを感じるのです。

同時に、こういう人に「YES」って言える社会はやさしいんじゃないかって思うんですね。自分の周りが岡谷さんみたいな人ばっかりで、ある人は掃除しまくってて、ある人はぼんやり空を眺めつづけていて、ある人はずっと歩き続けているとしたら。

自分も自分で、生きたいような生き方をしてもいいかもって思える気がするんです。そういう生き方の多様性、多くの人におかしいって思われてしまいそうな生き方に「YES」って言ってくれる作品(存在)だと思うのです。

だからこそ、こういう作品が存在することに、私自身もYESと言いたい。それが社会全体をやさしくするし、私がテーマにしている「社会治療」につながるなぁと思っています。

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自己拡張としての掃除

「掃除」という行為自体もとても興味深いものとして改めて考えてみました。掃除って「自分のテリトリー」を主張する行為だと思うんですね。

自分の家は自主的に掃除しますけど、基本的に他の人の家は掃除しませんよね。家の周り、自分ちの近所は掃除するけど、すごく遠くの土地とかなかなか掃除しないですし。

体のしくみも、老廃物を出すことで体の機能を保つわけなんですが、自分の家やその周辺を掃除することで、自分が快適に過ごせるエリアが拡張する気がしませんか。

私は海外に滞在する時も、だいたい自分の部屋を掃除するところから始めるのですが、掃除することでやっと部屋という空間が自分のエリアになったような気がして安心します。

「自己」の最小単位を「自分の身体と精神」と定義した場合、掃除によって精神が宿る身体が拡張します。町の清掃活動とかに参加すると、町が徐々に自分の一部であるように大事に感じられてくることがあります。

掃除という行為によって、自己が自在に変形、拡張、分裂するところにおもしろさを感じました。

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生きることは掃除すること

生きているとあちこちが汚れてきます。環境もそうだし、身体の中もそう。掃除によって汚れが落とされて環境が整うのですが、生きている限り掃除(=汚れを落とす)をしつづけるということは、掃除と生きることは同じことなのかもしれません。

汚れを苦しかったり辛かったりすることと捉えると、それを払っていくことが生きることなのかもしれない。なんだか、一切皆苦という仏教用語が思い起こされます。

それならばいっそ、掃除することそのものを楽しめてしまったら、自分の人生の意味や視点が変わるかもしれません。

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掃除で絵を描く人、なんなのww

こういう作家が元気に生きてる社会は、きっと楽しいと思うの。とても好きな作品でした!

作家さんのホームページはこちら。

※写真は作家さんの許可を得て掲載しています(ご本人も映していいとのことでした)。

岡谷さん、インスタやTwitterもあるので、気になる方はぜひフォローしておきましょう!

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超いまさら気づいたんですが、SICFのサイトに作品タイトルとか上がってないんですね。てっきり上がってると思って省略してたんですが、来場者には作品タイトルリストとか配られてたのかな、、?

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