【アート企画解説】アートフェスSICF21の出展企画書と実際の展示までの変更点
さまざまなジャンルのクリエイターによるアートフェスSICF21がいよいよ始まります!毎年開催しつづけてもう21回目ってすごいですね。
今年は緊急事態宣言のこともあって、5月から9月に延期。その影響もあって搬入が前日ではなく展示当日になったり、会場に来られない人のためのオンラインビューイング対応があったり、スタッフもアーティストも、関係者みんなががんばっている感じです。
オンラインでも現地にいる人との差が出ないといいけど、本人がその場にいるかいないかって、実のところけっこう大きいと私は思っています。入場料がかかるフェスなので、入場料払ってでも来たい人が来てくれる=そういう人とつながりやすいから。審査自体は作品が一番重要なので、本人がいなくても作品がどれだけ語ってくれるかがポイントですよね。過去に参加したことがある友人に話を聞いたら、名刺を大量に持って行け!と言われたので、これから参加される方も気にしておくといいかもです。
誰でも出せるアンデパンダン展的なものではなく、展示には審査があり、3~4倍くらいの倍率ですが通ると出展できるようなアートフェスになります。(応募審査は無料ですが、出展が決まると出展料はかかります)
私の応募時の企画はこんな感じ。
写真を2層に重ねて展示します。
下層:写真サイズ 200×206mm(1面 12行 8列), 一部を写真内の色でペイント, 両面テープかひっつきむしでボードに張り付ける。
上層:写真サイズ200×190㎜(1面 12行 8列), ボードにポールをかけ、テグスとクリップを使い、下層より約50㎜手前に吊るす。写真を一部切り抜き、下層が見えるようにする。
※上部にポールをかけるのが難しければ、写真を7列にしてボードの最上部に釘を打ってテグスで吊るします。
参考作品
韓国のF1963という美術館で2019年の12月に展示したものなんですが、写真なのか絵なのかよく分からない感じで、なんか気になる感じにできたので、これをさらに発展して大きくつくりたいなというのが企画のきっかけです。
4か月も延期になってしまったので、企画のコンセプト自体をさらに見直し、現在突き詰めている「社会治療」というコンセプトに沿うスタイルにするにはどうしたらいいかを改めて考えました。
結果、見栄えは似たなんですが、作品のコンセプトにより沿った感じに変更しました。まず、写真の選定を「目線の高さ」のものだけに限定。ビルから下を見下ろしていたり、海の中だったりみたいな写真は全部除外です。
自分が町を歩いている目線の高さのものだけを選びました。さらに切り絵するラインは、参考作品では細胞をイメージしたアメーバ状のうねうねなんですが、修正作では写真の地域の道路と川をトレースしてカットしました。
Googleマップでエリアの地図を切り出して写真に重ねてトレースして、プリントしてからペンで線を引いてから切ってる感じです。(ポスカはめっちゃ振ると復活することを学びました)
下層は写真に写っているもののカタチを強調してその場所から抽出した色の要素を塗った感じです。写真なんですが、半分が絵みたいに見えます。
上層:抽象的なラインをカット → その土地の「道路」をトレースしてカット
下層:撮影した場所の「形」をもとに抽出した色で塗り絵した作品
これを重ね合わせるわけですね。うねうねカットではなくなる分、切り取られる場所が均一ではないので、参考作品とはちょっと違う雰囲気になるかなと思っています。
みんなで社会を癒し、社会から癒される関係性を医療の未来像として掲げたとして、社会が発している声を日常でどこまで実感できるかって疑問なんですよね。「世界」っていう言葉を使った時、私たちはどこまで世界を分かっているのかっていうのは、ずっと考えていたことでした。
アメリカ、中国、フランス、ドイツって言われると4カ国なのに世界な気がしちゃう。タンザニア、フィリピン、ルーマニア、エストニアって言われると、一部の地域っぽい感じがしちゃう。写真は全部私が撮ったものなので、私が感じている「世界」です。
中央に会場であるスパイラルのある東京の青山や渋谷の写真を配置し、そこからいろんな地域につながるように写真を配置しています。隣り合う写真は「道の類似性」によって選んでいるので、物理的に離れていても「道の在り方が近い」ものが近くに配置されています。
トレースしてみると、道のつくられかたも都市によってぜんぜん違うんですよね。写真自体は人の目線の高さ(個人の象徴)で写されていますが、重ねて切り絵された「道」は都市を俯瞰して見た図(社会の象徴)です。
カンディンスキーが色と形で感情を表していたかと思うのですが、都市に使われているカタチや色は、そのまま社会が私たちに向けて発している「感情=声」ではないかと思うのです。
現在の状況的にこのインスタレーションは、ほとんど一人でまんなかに立って味わう感じになると思うのです。移動が難しくなってきても、この世界にはさまざまな都市があります。旅先のことを思い描きつつ、各都市が伝えようとしている言葉を視覚的に受け取り、私たち自身の言葉として返していく。
会場の外に出た時に、町の中にある形や色、道、それに対して自分がどう感じるか。好きな町はあるか、なぜ好きなのか。そういう都市と「私」との対話が生まれるといいなと思っています。
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ちなみに、参考作品の前段になるものを同じく韓国のHongti Art Centerというレジデンス先で発表していて、その時のインストールのしょぼさ記録がこちらです。
私はインスタレーションをメインにつくる作家なんですが、毎回違うタイプのインスタレーションをつくるので、設置に毎回苦労しています。もうやりながらうまくなるしかないですね。
今回の展示プランも初設置のスタイルなので、自分がちゃんとやれるのか、とてつもなくハラハラしています。っていうか、まだ制作も終わり切ってないんですが、、がんばるぞ!
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