桜 ハル

目に止まるようであればご感想をお願いします。 途中でも投稿しているので随時追加します。

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この場所で

 車を走らせる。目的地はない。窓を開けると入ってくる夜風を受けながら走った。  日が落ちて夜になるとたまらなくどこかへ行きたくなる。静かになった街を見て寂しさと安堵が押し寄せてくる、そんな感覚が好きだ。  人と関わることは嫌いじゃない。でも、心が疲弊すると一人になりたくなる。矛盾していると自分でも思う。  30分ほど走っただろうか、少し山を登ると住んでいる街が見渡せる場所があった。車を停め、降りると肌寒い。だか、空気は冷たく澄んでいて心地が良かった。  少し錆びたガードレー

    • 愛の比重

       愛はこの世で最も恐ろしい病だと思う。のめり込むほど重くなって抜け出せなくなって、上手く行かなかった時必ず傷が残る。それを分かっていて人はまた恋愛をする。  他人の前では、恋愛なんて入れ込んでも引きずっても意味がないなんて強がりよく言ってしまう。本当は言っていることとやっていることがまるで真逆だった。  好きな人ができて、大切にしたいと思った。同時に過去の恋愛を思い返す。終わり方がキレイではなかった恋愛ほどよく思い出せるものだなと思う。  久しぶりに元彼の友達に元気にし

      • 今をみつめて、

         重い瞼を開ける。いつも通りの代わり映えしない天井を瞼を上げた瞳は写す。目覚ましより早く目が覚めるようになったのはいつからだったっけ。考えても思い出せないことは考えるのを止めた。 「タバコ・・・。」  ベッドに沈んだまま、それに手を伸ばす。ひと息吸い込んでやっと脳が回る感覚がする。でも、だからといって起き上がる訳じゃない。また、一日が始まったと理解しただけ。後はそれを吸いながら、ボーッとくだらないことを考える。休日はだいたいこんな感じ。  大学を卒業して、仕事は忙しいけど給

        • morning glory

           朝が来る。私はほんの一瞬咲いて散っていく。咲いた私は朝日を見ることはない。  目が覚めると外はもう太陽が真上に来ている時間だった。暑さで少しベタつく肌を触りながらシャワーを浴びなきゃなと思う。隣で寝ていたはずの彼はいつの間にか出ていったようだった。いつものこと。いつから寂しいという感情に鍵をかけてしまったのか、バカになったあたしは何もなかったかのように今から1日を始める。  仕事中の昼休みに公園でコーヒー片手に一服していた時のことだった。小学校はなぜか休みだったようで子

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        この場所で

          Tattoo. another

          「側にいて。抱きしめて。離さないで。」 なんて言葉を言わせないようにしてるのは俺だろう。  日常の中に君がいる。ご飯を作るのは俺の担当。片付けは気がついたらいつもやり終わってて、洗濯物も何も言わずにしてくれる。俺は君を利用している事を自分で分かっている。多分君も分かっているんだろう、それでも何も言わないのは君の優しさだろうか。俺はズルい。大事なことは何も言わないで優しい君に甘えている。君はいつか損をするだろう、その時俺は君に謝れるだろうか。  君はいつか俺に愛想をつかすだ

          Tattoo.

          「側にいて。抱きしめて。離さないで。」 なんて素直に言葉にできるほど子どもになれない。  日常の中に君がいて、心はとても落ち着いている。なのにありがとうの一つも言えないあたしはきっとずっとズルいままなんだろう。君を利用している事を自分で分かっている。多分君も分かっているんだろう、それでも側に居てくれる君は優しすぎる。いつか損をするだろう、その時あたしは側で支えになってあげられるのだろうか。それまで側に居られるだろうか。  君はきっと蝶のようにどこかへ飛んでいってしまう。あ

          モンステラ

          「「明けましておめでとう。」」  真夜中、公園のベンチに座る。毎年必ず此処で新年の挨拶をするのが二人の決まりになって、もう7年になる。  大学4年の僕たちは、来年も此処でこうしているだろうか。僕と彼女は幼馴染で、幼稚園からずっと一緒にいる。中学生になった頃、どんどん可愛くなっていく彼女を一人の女の子として見るようになった。恋人じゃなくても隣にいることができる現状に亀裂が入ることが怖くて何も言えないままの僕は、とてもずるい人間だなと思う。 「もう今年から社会人だね。早く大人に

          モンステラ

          コーヒー

           目が覚めると隣には見慣れた顔の男が眠っている。その顔を見て微笑むことができたらどれだけ幸せだろうかと、少し心臓が痛くなった。 「はぁ、今日何曜日だっけ。」                             スマホを確認すると日付は土曜日になっていて、大きく伸びをする。起きる気配のない男を放置しベッドから抜け出した。散らかったものを拾いながら一つ一つ体につけていく。                           「おっけー、完了。コーヒー入れようかな。」