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愛の比重

 愛はこの世で最も恐ろしい病だと思う。のめり込むほど重くなって抜け出せなくなって、上手く行かなかった時必ず傷が残る。それを分かっていて人はまた恋愛をする。

 他人の前では、恋愛なんて入れ込んでも引きずっても意味がないなんて強がりよく言ってしまう。本当は言っていることとやっていることがまるで真逆だった。

 好きな人ができて、大切にしたいと思った。同時に過去の恋愛を思い返す。終わり方がキレイではなかった恋愛ほどよく思い出せるものだなと思う。

 久しぶりに元彼の友達に元気にしているか連絡を取った。みんな相変わらずだよと言う。一番辛い別れをした彼は、その時浮気していた女の子と結婚したらしい。

 不思議な感覚がする。当時記憶から消してしまいたいと思うほどだった彼の結婚報告は、聞いた時、幸せになれたのなら良かったと素直に思えてしまったから。

 巡り合わせとはよく言ったもので、今になってしまえば憎しみなど一つも残っていないことに気づく。一度好きになった、恋をした相手なのだから、結局は幸せであってほしいと思えていた。

 貴方は他の場所で他の誰かと幸せになれたのね、おめでとう。私は今も私が私らしく居られる場所で幸せでいます。だからどうか、もう間違えないで。あの時の様な事は二度としないでと願う。

 どちらか一方が偏った愛はきっと長くは続かない。私はこの事を別れを何度も繰り返して、過去を振り返って、今この歳になってようやく気づくことができたのだと思う。

 今の私を作り出したのは、過去の自分と私と関わりを持ってくれた人たち。だから、悔やんではいけない。嘆いてはいけない。断片的に、でも確実に、過去に愛は散りばめられていたと言えるから。

 過去を振り返ることを恐れてはいけない。また、未来を想像することも恐れてはいけない。受け取ってきた愛と渡してきた愛、これから受け取る愛と渡していく愛をも恐れる必要はない。

 この世の中を生きているすべての人が愛を紡ぐことを繰り返し、ときに失敗してそしてまた誰かと巡り合う。その中で、きっといつかどこかで、愛が重なった時、人はそれを運命と呼ぶのだと思う。

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