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Tattoo. another

「側にいて。抱きしめて。離さないで。」
なんて言葉を言わせないようにしてるのは俺だろう。

 日常の中に君がいる。ご飯を作るのは俺の担当。片付けは気がついたらいつもやり終わってて、洗濯物も何も言わずにしてくれる。俺は君を利用している事を自分で分かっている。多分君も分かっているんだろう、それでも何も言わないのは君の優しさだろうか。俺はズルい。大事なことは何も言わないで優しい君に甘えている。君はいつか損をするだろう、その時俺は君に謝れるだろうか。

 君はいつか俺に愛想をつかすだろう。俺はきっとその時どうすることもできない事を分かっている。ズルい俺には君を引き止める言葉をかけることができない。神様はきっと俺たちを同じ場所には導いてくれない。今の俺じゃ当たり前だろうなと自分で思う。

 俺はきっと最後まで君に甘えて、安全な距離を保つだろう。君が俺を大切に思ってくれている事は痛いほど伝わっているけれど、俺はそれを気付かないふりをする。いつか離れるときが来たとき、君にとって俺は最低な人間だったと忘れて幸せになって欲しいと願う。

「側にいて。抱きしめて。離さないで。」
 ズルい俺は今日も何も君に言わせないまま、君の隣で眠っている。

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