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いのること

手を合わせて祈るとき
名前を呼ぶと、伝わる、らしい。

向こうに確認を取ったわけじゃない。
届いてるよって返事が来ることもない。

でも朝晩に祈るときは
こころの中で皆の名前を呼ぶ。


* * *


いつだったか
うちに家系図ってあるの?と
両親に尋ねてみたことがある。

ちゃんとしたものは無かったので
二人の話を聞きながら
手書きで系図を作った。

母のおじいちゃんは
モテモテだったのよ、とか
情報つきで教えてもらった。

母にはお兄ちゃんがいたが
生まれて間もなく、天にのぼった。
生きていたら格好いい伯父さんだったろう。

父の家系では、
22歳で出兵して
南洋諸島で亡くなられた方がいた。

父の、従兄弟の娘さんで
若くに人生を断つことを選んだ方がいた。


ほんのりは、知っていた。
改めて名前を教えてもらい
朝晩、皆に呼びかけることにした。

ただ名前を呼んで
どうかお元気で、と。



そうしたら皆がそれぞれに
夢に出てきたことがある。

これもまた確認できないし
思い込みの可能性大なんだけど、

どこかアトリエみたいな部屋で
私が椅子に座って作業をしていたら
黒Tシャツにジーンズ、少し日焼けした、
岩城滉一さんのような格好いい伯父さんが
素の感じで話しかけてくれた。


線のほそい、物静かな男性は
白シャツにベージュのパンツ姿で
博物館の、東南アジアの展示を
穏やかに、見つめていた。

色白の女性は、凛とした美人さんで
長い髪をひとつにまとめ
白いワンピースを着て、
ふわっと笑った。


確信できるほどの感覚は、ない。
なんとなく、そうなのかなと思った。
そうだったらいいなと、思っている。



* * *


手を合わせないと
なんだか落ち着かない。
朝と晩、と言いながら
昼と夜明け前、の時もあるけど。

特に8月は
向こうとの距離が
近くなる気がする。


おはよう。
おやすみ。

みんな、
元気でありますように。










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