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推しのせいで終電で降りる駅を間違えた話①2022/01/27

新大久保のショーボックスでは、1時間のライブの後に特典会がある。

人気グループは特典会の参加者も多く、長時間に及び、終了が終電を過ぎることもよくあった。

特典会の最後にフォトタイムがあって、並んでいるメンバーを数分間自由に撮影することが出来た。
だから私は時間が許す限り最後まで残って、写真を撮っていた。


その日は東京公演の最終日。
翌日から大阪公演だったため、大盛況だった。

私は客席の4列目の通路側に座った。

最終日だからサービスなのだろうか、たくさん目線をくれて私はとても嬉しかった。

彼らがライブの終盤によく歌うカバー曲がある。
BTOBの「Missing You(그리워하다)」だ。

その曲は、メンバーたちがステージから客席へ降りてくる曲でとても人気のあるナンバーだった。

推しはいつも、曲のイントロで客席の後方へ移動してそこで歌い始める。
それが定位置だった。

その日もイントロが流れると、私の横を通って薄暗い客席の後方へ移動した。
ところが、一旦いつもの位置まで行ってから引き返して私の席の隣に立ったのだ。

今日は特別に立ち位置を変えたのかなと思ったが、他のメンバーはいつも通りの位置についていた。

なぜ引き返してきたのかわからなかったが、私は嬉しかった。隣に来てくれたことが。

一体どんな表情でいるのだろうと思い、下から推しの顔を見上げた。
推しは下を向いて私を見ながら、笑いをこらえていた。
目が合って、私もなんだか可笑しくなって、思わず吹き出してしまった。

とても幸せな瞬間だった。

イントロが終わると推しは真面目な顔で歌い始めた。

ライブが終わってから隣に座っていた友人が、
あんな幸せそうな顔で笑う私を見るのは初めてだ、と言ってからかった。

うん。
とても幸せだ。

なぜ立ち位置を変えたのかはわからない。
もしかしたら客席の後方に何か問題でもあったのかもしれないし、いつもとは変えたい気分だっただけかもしれない。

たとえ偶然でもわたしの隣に来てくれたという事実に、私は嬉しくて顔がニヤけてどうしようも無かった。

フワフワと舞い上がるような気持ちで、私は2階の特典会会場へ向かった。

今でもこの曲を聴くと、あの時の幸せな気持ちを思い出す。


この日はさらに幸せな出来事があった。
②へ続く。

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