大月書店

1946年創業の社会科学出版社、大月書店の公式アカウントです。新刊の部分公開やweb限…

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1946年創業の社会科学出版社、大月書店の公式アカウントです。新刊の部分公開やweb限定の連載など、紙の本から一歩はみ出て読者の皆さんと出会える場を作れたら嬉しいです。

マガジン

  • 先生が先生になれない世の中で

    雑誌「クレスコ」に好評連載中の教育研究者・鈴木大裕さんの教育事情レポート。

  • あっと驚く刑務作業の世界

    家具や雑貨、文具にお茶――。全国各地の刑事施設のユニークな刑務作業を紹介するシリーズです。

  • メールマガジン「大月書店通信」

    大月書店が月1回発行するメルマガ「大月書店通信」をnoteでも配信します。新刊情報や話題の本、本にまつわるイベントのお知らせなど。購読は無料です。配信登録はこちらから。https://www.itm-asp.com/form/?57

  • 君も本棚を作ってみないか?(田野大輔)

    君も本棚を作ってみないか? 研究者のための本棚自作マニュアル 田野大輔(たの だいすけ)1970年生まれ。甲南大学文学部教授。専攻は歴史社会学。著書『ファシズムの教室――なぜ集団は暴走するのか』(大月書店)、『愛と欲望のナチズム』(講談社選書メチエ)、『魅惑する帝国――政治の美学化とナチズム』(名古屋大学出版会)ほか。

  • 大月書店×ジェンダー×多様性

    2021年夏から順次刊行するジェンダー・多様性に関連する新刊の情報をまとめます。

最近の記事

先生が先生になれない世の中で(31)  〜マニュアル化する社会の中で:奈良教育大附属小学校「不適切指導」事件~

「奈良教育大学附属小学校では、今年1月に、学習指導要領に基づく授業時間が不足するなど、不適切な指導が明らかになりました」――あなたもネットやテレビでそんな報道を目にしたのではないだろうか。国が定めている、教えるべき内容を奈良教育大附属小(以下、附属小)では教えていなかったことが発覚。新任の校長が教職員に是正を求めたが受け入れられなかった……。そんな内容を聞いたら、それはダメだよね、となるのがふつうなのかもしれない。 実は、「不適切指導」が指摘されている附属小には、私は少しだ

    • 先生が先生になれない世の中で(30)~高知 教職員と議員のつどい②~

      教員の労働環境は子どもの学習環境であり、学校における働き方改革は、国、行政、議会、教職員、そして保護者が同じ方向を向けないわけはない。昨年12月、『高知(若手)教職員と議員のつどい』の一つの成果として、国が定める標準授業時数を上回るいわゆる「余剰時数」の問題が、高知県内12の市町村議会にて同時多発的に取り上げられた。さまざまな議会の関連議事録からは、今後進むべき道筋が見えてきた。 余剰時数の削減に向けた議論がイマイチ噛み合わない議会に共通していたのは、教育委員会の非協力的な

      • 先生が先生になれない世の中で(29)~高知 教職員と議員のつどい~

        「もし機会があるならば、教育現場の声を直接議員に伝えたいと思いますか?」――そんな私の一言から、あるイベントが昨23年8月に高知市で実現した。その名も、『高知(若手)教職員と議員のつどい』。当日は、小中学校、特別支援学校、養護、栄養など、若手教職員に加え、高知全域から約20名の議員が参加した。党派関係なく、さまざまな市町村議会から議員が集まり、中には県議会議員の姿も見えた。 前半は、それぞれの立場の教諭がグループごとの「課題と要望」をプレゼンしたのに対して、議員側からの質疑

        • 先生が先生になれない世の中で(28) いち教員である「わたし」にできること②

          この社会は「わたし」たちの集まりによって構築されている――それに気づくことにこそ希望がある。そう言うのは、前回も取り上げた文化人類学者の松村圭一郎氏だ。文化人類学は、一つの部族や集団を長期にわたって調査する。しかし、調査を通して知るのはその「他者」だけでなく、「わたし」であり、自らの社会だ。「他者」と出会うことで自分自身の「あたりまえ」が揺さぶられ、その揺さぶりに身をまかせることで、慣れ親しんだ自分の社会の常識が崩れ落ちる。そして、現実として疑いもしなかったさまざまな規則や風

        先生が先生になれない世の中で(31)  〜マニュアル化する社会の中で:奈良教育大附属小学校「不適切指導」事件~

        • 先生が先生になれない世の中で(30)~高知 教職員と議員のつどい②~

        • 先生が先生になれない世の中で(29)~高知 教職員と議員のつどい~

        • 先生が先生になれない世の中で(28) いち教員である「わたし」にできること②

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        記事

          先生が先生になれない世の中で(27) いち教員である「わたし」にできること

          文化人類学者、松村圭一郎氏のこの言葉に共感する教員は少なくないのではないか。この連載でも、大きなテーマを扱ってきた。資本主義の影響による教育における「構想」と「実行」の分離。新自由主義化する社会の帰結である公教育の市場化と民営化。そうして起こる学校の「塾」化と教員の「使い捨て労働者」化……。そして、子どもの教育を通して、この「モノ・カネ」の社会のあり方そのものを問い直す必要性を、私はくり返し訴えてきた。それを頭では理解していても、いち教員である「わたし」に何ができるのかわから

          先生が先生になれない世の中で(27) いち教員である「わたし」にできること

          あっと驚く刑務作業の世界(2)鹿児島刑務所のお茶づくり

          霧島山麓に広大な茶畑が出現!鹿児島刑務所(湧水町)が位置する霧島山麓。敷地内には茶畑と茶工場があり、お茶の栽培から加工までを一貫して行っています。ここでできたお茶は、矯正展などでもすぐに売り切れてしまう人気商品です。 刑務作業としてお茶作りを始めたのは1952年頃から。鹿児島県のお茶の栽培は、ここ湧水町で始まったとの説があり、お茶どころにある刑務所らしい取り組みといえます。ちなみに、日本で農場のある刑務所は、西日本の刑務所だとここだけです。 はじめに茶畑を見学させてもらい

          あっと驚く刑務作業の世界(2)鹿児島刑務所のお茶づくり

          あっと驚く刑務作業の世界(1)刑務作業ってなに?

          刑罰であり、出所後のための訓練私が刑務作業と初めて「出会った」のは、偶然通りがかった、ターミナル駅の構内でした。そこでは受刑者が作ったという、木製の家具や、革の小物、紙や布の雑貨など、日用品のすべてとでもいえるほどたくさんの製品が並ぶ展示即売会が開催されていました。 ここでまずは簡単に、刑務作業とは何なのかをご説明します。 日本には73の刑事施設(刑務所、少年刑務所、拘置所)があり、収容された受刑者が、刑務作業に従事しています。刑務作業の目的について、法務省のホームページ

          あっと驚く刑務作業の世界(1)刑務作業ってなに?

          「会社」がコミュニズムを準備する?!〜『ここにある社会主義』第1章を無料公開(3/3)

          ヘッダー画像:by MEDIUM.COM 前回(第1章前半)はこちら 人間性の開花 では社会主義は、なぜ人々が社交しコミュニケートする社会をめざすのでしょうか。それは、そのような社会でこそ人間は自己実現できるからです。自己実現は、潜在能力の自由な現実化と外面化という二つの要素からなります*1。 潜在能力の自由な現実化とは、自分のもてる潜在能力を自由に、納得がいくまで発揮することです。どのような能力を発揮するかは、その人の好みによって異なるでしょう。また、どの程度まで発揮

          「会社」がコミュニズムを準備する?!〜『ここにある社会主義』第1章を無料公開(3/3)

          先生が先生になれない世の中で(26)花火大会は誰のもの②

          私が住む土佐町では、花火の有料観覧席などというものは存在しない。全国の主要花火大会で進む有料化、(プレミアムシートの創設などの)「ダイナミックプライシング」による有料観覧席の階層化、そしてチケットを購入していない人たちの排除……。もちろんそれらの主要花火大会とは花火の規模も来場者の数も比にもならない。それでも、なぜ土佐町では有料観覧席などできないのか、そんなことを真剣に考えてみた。 人口3600人ほどの土佐町では、毎年夏になると各地区で納涼祭が開かれる。出店が並び、やぐらが

          先生が先生になれない世の中で(26)花火大会は誰のもの②

          【大月書店通信】第176号(2023/9/29)

          「大月書店通信」第176号をお届けします。 ようやく朝夕に涼やかな風を感じるようになりました。秋と言えば、そう読書です。ちょっとハードで読み応えのある本にも手を伸ばしてみては、いかがでしょうか? エルサレムの法廷で、「私は命令に従っただけ」と繰り返すアイヒマン。その裁判傍聴記がスキャンダルを引き起こすも、敢然と立ち向かうハンナ・アーレント――大ヒットした映画『ハンナ・アーレント』のオフィシャルサイトには、「世間から激しい非難を浴びて思い悩みながらも、アイヒマンの〈悪の凡庸

          【大月書店通信】第176号(2023/9/29)

          資本主義は、実はコミュニズムの基盤の上に成り立っている? 『ここにある社会主義』から第1章を無料公開(2/3)

          前回(まえがき)はこちら 第1章 ここにある社会主義社会主義はどこにでもある  読者のみなさんのほとんどは「社会主義」について、自分たちの生活とは異質なものであるというイメージをもっているでしょう。人権や民主主義を推進している進歩的な人々でも、「社会主義」はそれらを抑圧する体制であるという印象を抱いていることが少なくありません。今日の日本では「社会主義」に対する否定的な印象がとても強いようです。  図表1-1は、ある調査会社が2018年に「現在、社会主義の理念は社会進歩に

          資本主義は、実はコミュニズムの基盤の上に成り立っている? 『ここにある社会主義』から第1章を無料公開(2/3)

          先生が先生になれない世の中で(25)花火大会は誰のもの

          今年の夏、コロナ禍で中止が続いていた花火大会が、4年ぶりに各地で開催された。しかし、花火に使う火薬の高騰や、人手不足などによる警備費の高騰などで、どの自治体も経営面で苦戦し、なかには中止を決定した自治体もある。 そんななか、ひときわニュースを騒がせたのが、例年35万人以上が訪れる「びわ湖花火大会」だ。4年前と比べ約1億円増加したという大会経費3億 円(*1)を捻出するために、大会実行委員会(滋賀県、大津市、観光振興団体などで構成)は無料席を減らし、有料席を前回より1万席多い

          先生が先生になれない世の中で(25)花火大会は誰のもの

          「新しい資本主義」じゃなくてこっちでしょ。『ここにある社会主義』まえがき〜第1章を公開!(1/3)

          著者について 松井 暁(まつい さとし) 1960年生まれ.専修大学経済学部教授.専門は経済哲学,社会経済学. 主な著書に『自由主義と社会主義の規範理論――価値理念のマルクス的分析』(大月書店,2012年),Socialism as the Development of Liberalism: Marxist Analysis of Values(Palgrave Macmillan, 2022). 主な訳書に,G・A・コーエン著『自己所有権・自由・平等』(共訳,青木書店,

          「新しい資本主義」じゃなくてこっちでしょ。『ここにある社会主義』まえがき〜第1章を公開!(1/3)

          【大月書店通信】第175号(2023/8/31)

          8月は戦争の記憶が呼びおこされる季節。メディアでの特集や特別番組、地域でのさまざまな催しが企画されます。戦争体験を語れる人が減り続ける中で、今後の継承に危機感をもつ人も少なくありません。 一方で、今年はもうひとつの大きな節目も。それは、明日9月1日、1923年の関東大震災から100年の日です。 震災の被害に加えて、朝鮮人・中国人やそれに誤認された人、そして社会主義者らが多数虐殺された歴史は消すことができない事実です。にもかかわらず、右派は執拗にこの歴史を否定しようとし、小

          【大月書店通信】第175号(2023/8/31)

          【大月書店通信】第174号(2023/7/31)

          連日の猛暑日、そして各地で相次ぐ水害。まさに『地球が燃えている』(ナオミ・クライン著、2020年)を実感するような今年の夏です。 同書でも強調されている通り、世界的な気温上昇を1.5℃に抑えるために取り うる対策のタイムリミットは2030年。同書刊行時は「あと10年」でしたが、 すでに残り7年です。「化石賞」を何度も贈られている日本政府も、そろそろ危機感を持ってほしいものですが……。 それはさておき、先月号メルマガでご案内した「BOOK MARKET 2023」が 開催さ

          【大月書店通信】第174号(2023/7/31)

          一部公開『THE GIRLS 性虐待を告発したアメリカ女子体操選手たちの証言』

          ジャニーズ事務所をめぐる一連の性被害の報道を受けて、私たちは、被害に遭われた方々の気持ちをどのように理解すればよいのでしょうか。興味本位としてではなく、推し量ることができているのでしょうか。 ジャニーズのそれと同じ構造を持つ性虐待事件がありました。 「アメリカ体操連盟性的虐待事件」と呼ばれるこの事件は、信頼の厚いチームドクターであるラリー・ナサール医師が「治療」と称して数十年にわたり、何百人もの若い女性や少女に対して性虐待を行なっていたものです。 1990年代から少女たちが

          一部公開『THE GIRLS 性虐待を告発したアメリカ女子体操選手たちの証言』