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【大月書店通信】第181号(2024/2/29)

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「大月書店通信」第181号をお届けします。

この2月でウクライナ戦争の開始から2年。そして昨年10月からのパレスチナ・ガザでの戦闘はまもなく5か月になろうとしています。停戦を求める世界の声を無視して殺戮が続くことに無力さを感じている人も多いでしょう。

イスラエルの作家アモス・オズのエッセイ集『わたしたちが正しい場所に花は咲かない』(大月書店、2010年初版。現在品切)を開いてみました。
自分たちは常に正しいと考える「狂信者」への処方箋としてオズが提示する「想像力とユーモア」は、いま起きている凄惨な現実の前では、残念ながら理想論にしか聞こえないかもしれません。
しかしオズは、このようにも言います。

「ある人が大惨事、たとえば大火事を見ているとしましょう。やれることは3つあります。
1つ目は、とにかく全速力で逃げる。走れない人は見捨てる。
2つ目は、購読している新聞の編集部あてに怒りの手紙を書く。火事の責任者は即刻免職にせよ、と要求する。あるいはデモを組織する。
3つ目は、水の入ったバケツをもってきて、火にかける。バケツがなかったらコップでもいい。コップがなきゃ、ティースプーンでもいい。(中略)ティースプーンは小さくて、火のほうは大きい。でも、こちらは何百万人といて、一人ひとりティースプーンをもっている。」

伊藤忠商事にイスラエル軍事企業との提携の解消を求めた署名活動は、若い世代が中心となって広がり、提携解消という目標を勝ち取りました。
「私たちは微力だが無力ではない」。心を挫かれないために、いつも胸にティースプーンを。

◆アモス・オズ[著]村田靖子[訳]『わたしたちが正しい場所に花は咲かない』


【新刊案内】『これならわかる道徳教科書の人物Q&A』ほか2月の新刊5点

2月の新刊です。お近くの書店にてお求めください。(定価はすべて税込)

●歴史から「特別の教科 道徳」を問い直す
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これならわかる道徳教科書の人物Q&A
石出みどり・石出法太[著]1,870円
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キング牧師や渋沢栄一など、誰もが知る人物を教材とする「道徳」教科書だが、史実と異なる記述や否定的評価に触れないアンバランスも。現行教科書に登場する20人を取り上げ、歴史的事実や時代背景から多面的に解説する。

●大人になるための体の準備を前向きに伝える
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ようこそ!思春期――おとなに近づくからだの成長のはなし
レイチェル・グリーナー[文]クレア・オーウェン[絵]2,420円
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10代になると始まる体の変化。戸惑いや疑問に答え、多様性に配慮した解説で大人への成長をポジティブに描く。ネット・SNSのリスクや人間関係についてもアドバイス。大好評の性教育絵本『ようこそ!あかちゃん』待望の続編。

●代替肉? 昆虫食? 畜産業の未来を考える
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めざせ!持続可能な農林水産業 4――未来につながる畜産業へ
中野明正[監修]3,850円
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人間の体に不可欠なタンパク源となる肉や牛乳、卵。しかし畜産業は、牛のげっぷに含まれるメタン、フン尿処理、飼料を外国から輸入するなど、環境負荷が大きく、人手不足も深刻。安定した生産を続けるためのとりくみを紹介。

●特集=被災地の「いま」が伝えること――3.11の教訓から学ぶ
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月刊クレスコ 3月号(no.276)
クレスコ編集委員会 全日本教職員組合(全教)[編]550円
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今春から教職員として働く人たちに贈る、恒例の特集。大切なのは失敗しないことではないという先輩たちからのメッセージや授業づくりのこつ、事務職員や養護教諭など仲間たちからのエール、教職員の権利一覧など盛りだくさん。

●特集=報道現場と性暴力
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放送レポート 3月号(no.307)
メディア総合研究所[編]550円
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●ドキュメンタリー台本●番組批評●制作者の素顔●ラジオの現場から●スポーツとマスコミ●映画の中のマスコミ●話題の本から●放送をめぐる動き
ほか

【話題の本・本の話題】

最近の新刊の書評掲載

●虎岩朋加[著]『 教室から編みだすフェミニズム
「図書新聞」3月2日

●宮下萌[編著]『 レイシャル・プロファイリング
「図書新聞」3月2日

●田野大輔・小野寺拓也[編著]『 〈悪の凡庸さ〉を問い直す
「ふぇみん」2月25日 

●風巻浩・金迅野[著]『 ヘイトをのりこえる教室
神奈川新聞」2月6日
『週刊教育資料』 No.1734号(2024年2月5日号)
『歴史地理教育』2024年3月号 No.966

●加藤圭木[監修]『 ひろがる「日韓」のモヤモヤとわたしたち 
『女性のひろば』2024年3月 No.541

●マリ・シュー[文]イザベル・ムニョス[絵]『 視覚障害のあるわたしの毎日(障害があってもいっしょだよ!) 6
『この本読んで!』2024年春号

●ナディ[著]山口元一[解説]『 ふるさとって呼んでもいいですか
『この本読んで!』 2024年春号

●岡本央[写真・文]『 赤いボタン
『子どもと読書』3・4月 No.464

【イベント】

「(ポスト)フェミニズムから教育を考える~『教室から編みだすフェミニズム』刊行記念公開研究会

教育は常にフェミニズムにおいて重要な意味を持ってきた。『教室から編みだすフェミニズム』(2023年、大月書店)はこの教育にまっすぐ向き合い、さまざまな問題を抱えている学校の中でどのようにフェミニズムを育てていくか熟考している。フェミニスト・ペダゴジーを受けた上で、ポストフェミニズム、フーコー、ベル・フックス、情動理論等を駆使して練られた問いをともに考えるきっかけとしたい。
※当日、書籍販売あります※

出演者:虎岩朋加、菊地夏野、伊藤書佳
場所:東京外国語大学  留学生日本語教育センター棟103教室(府中キャンパス)
日時:3月2日(土)14時~17時(予定)
※申し込み、参加費不要 ※対面のみ
詳しくはこちら

◆ 虎岩朋加[著]『教室から編みだすフェミニズム――フェミニスト・ペダゴジーの挑戦』

トークイベント「時を超えた バックラッシュ」高井ゆと里 田代美江子 松岡宗嗣

Q&A多様な性・トランスジェンダー・包括的性教育――バッシングに立ちむかう74問』の編著者であり、“人間と性” 教育研究協議会代表理事でもある田代美江子さんは、2つのバックラッシュを生きる時代の証人です。このイベントでは、同書の編著者でもある一般社団法人fairの松岡宗嗣さん、そして『トランスジェンダー入門』の共著者である高井ゆと里さんが、田代さんと共にバックラッシュの今昔について語り合います。(マルジナリア書店HPより)

出演者:高井ゆと里、田代美江子、松岡宗嗣
場所:マルジナリア書店、オンライン参加・アーカイブ配信あり
日時:3月8日(金)19時~20時30分
※会場参加は満席のためオンラインのみとなります
お申込みはこちら

◆ 浅井春夫ほか[編著]『Q&A多様な性・トランスジェンダー・包括的性教育バッシングに立ちむかう74問』

【今月の赤旗全4段広告】

【編集後記】

2024年は4年に一度の閏年です。このメルマガが配信されている本日(2月29日)がまさに閏日で、2月の暦に1日多く追加されることで、地球の公転と暦の間のずれを補正しています。もし閏日を設けなければ、だんだんと季節の開始時期がずれ、農業などに大きな影響が出てしまいます。本日をもって、そのずれが補正されたということになりますが、はたしてどうでしょうか。近年夏の長く続く異常な暑さは、暑さに弱い私としては毎年耐え難いのですが、うるう年で暦を調節しても、今度は季節の方がさらにずれていってしまっては意味がありません。季節の方も「閏季節」を設けてもう少し補正してもらいたいものです。(新人編集者)

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