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【大月書店通信】第184号(2024/5/30)

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「大月書店通信」第184号をお届けします。

ロシアのウクライナ侵攻から、すでに2年以上。この間、なぜこの戦争が引き起こされたのか、ウクライナとはどのような国か、プーチンの戦争をどう見るべきかなど、多くの書物が出されてきました。
戦争はじめ大きな事件が起きると、その真相を知りたい・伝えたいと思い、本が編まれ、多くの読者の「新たな知」が形成されていきます。ただ、そこで「メジャー」となった言説には、注意も必要です。

ウクライナ史の研究者である東京大学教授・松里公孝氏は、「戦争開始以来、日本各地でウクライナ史について講演すると、『ウクライナ人』という『民族』が古くから存在し、隣接大国の度重なる支配にもかかわらず、独立をめざして闘ってきたと考える受講生が多いのに驚かされる。これはウクライナについて日本語で書かれてきた認識の反映である」と、指摘しています。
今月の新刊、 『ロシア・ウクライナ戦争と歴史学』は、この松里氏の論考含め、ロシア史や中東欧史、フィンランド史を専門とする研究者らが、今般の戦争が突き付けたさまざまな問題を「我がこと」として受けとめ、その歴史と現在に向きあった論考が収められています。
ロシア・ウクライナ戦争はまた、イスラエルのガザ侵攻とそれに対する西側諸国(日本もこちら側にある)のダブルスタンダードを浮き彫りにし、いまだ払拭しえていない植民地主義の問題も露見させました。この事態を「よそごと」にせず、歴史家たちの真摯で息の長い取り組みに学びたいと思います。

◆ 歴史学研究会[編]『ロシア・ウクライナ戦争と歴史学』


【新刊案内】『ロシア・ウクライナ戦争と歴史学』ほか5月の新刊3点

5月の新刊です。お近くの書店にてお求めください。(定価はすべて税込)

●戦争が呼び覚ました「過去」に対峙する
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ロシア・ウクライナ戦争と歴史学
歴史学研究会[編]2,970円
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ロシアによるウクライナ侵攻。それは、現実政治のみならず、歴史学に新たな課題をつきつけている。そもそもウクライナとは何か、ロシア史の再点検や周辺諸国の歴史認識の変容の検討、「帝国論」「ナショナリズム論」など多面的に考察する。

●由来やランキング、名字のことが丸わかり!
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47都道府県別ランキングがわかる! 名字の事典
森岡浩[監修]4,180円
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日本の名字トップ3は、藤原氏に由来し東日本に多い「佐藤」、和歌山県の熊野地方で生まれた「鈴木」、文字通り高い橋から来た「高橋」。由来や分布、ランキング、めずらしい名字、世界の名字など、名字を丸ごと解説する。

●特集=外国ルーツの子どもたちに寄りそって
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月刊クレスコ 6月号(no.279)
クレスコ編集委員会 全日本教職員組合(全教)[編]825円
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日本在住の外国人の数は年々増加し、国籍も多様化が進む一方、改正入管法による強制送還や日本語教育の「無支援」状態など、外国ルーツの子どもをとりまく課題は山積する。就労支援や教育支援ほか、各地のとりくみを紹介する。

【話題の本・本の話題】

最近の新刊の書評掲載

●加藤圭木[監修]一橋大学社会学部加藤圭木ゼミナール[編]『 大学生が推す 深掘りソウルガイド
「熊本日日新聞」5月1日
ハンギョレ」(日本語版)5月15日
※記事が Yahoo!ニュースにも掲載されました。

●生田武志・山下耕平 [編著]『 10代に届けたい5つの“授業”
「しんぶん赤旗」5月5日
「神戸新聞」5月31日

note連載「あっと驚く刑務作業の世界」の第3回を公開しました

noteで連載している保田明恵さんの「あっと驚く刑務作業の世界」の第3回「横浜刑務所の製麺」を公開しました。ぜひご一読ください。

日本全国にある刑務所などの刑事施設で、受刑者が従事している刑務作業。施設ごとに個性があって、さまざまなものが製作されています。「矯正展」を見かけたことはありませんか? 今回は、横浜刑務所の製麺を紹介します。【保田明恵】(note連載記事より)

note連載は こちら

【イベント】

『韓国社会運動のダイナミズム』出版記念シンポジウムが開催されます

韓国社会運動の最前線を紹介する『 韓国社会運動のダイナミズム――参加と連帯がつくる変革』を2024年4月に刊行しました。本の出版を記念し、執筆者による報告と日本の社会運動に活かす道を探る討論からなるシンポジウムを開催します。キーワードは「別々に、また、ともに」。分断を超えて、どのように連帯を築いていくのかを議論します。皆様のご参加をお待ちしております。( イベントHPより)

出演者:金惠晶、李承勳、金美珍、李泳采、木村幹、金成垣、瀬山紀子、塩田潤、津富宏、菱山南帆子、山口二郎/司会:三浦まり
場所:アルカディア市ヶ谷 私学会館 6階
日時:6月26日(水)18時~20時
開催方法:会場参加(定員150人)・オンライン(ZOOM)あり。
参加費:無料

※お申込みは こちら

◆三浦まり・金美珍[編]『韓国社会運動のダイナミズム――参加と連帯がつくる変革』

メチル水銀中毒症研究会主催「第3回 慢性メチル水銀中毒症シンポジウム」が開催されます

5月31日(金)に開催される「第3回 慢性メチル水銀中毒症シンポジウム」に、 『 水俣病と医学の責任』(大月書店)著者の高岡滋さんが出演します。ぜひご参加ください。

1956年公式確認の水俣病、60年以上経過した今でも各地で裁判が続いています。なぜなのでしょう?「水俣病の診断」について3人の研究者にお話しいただきます。( 申し込みHPより)

出演者:頼藤貴志(岡山大学医歯薬学総合研究科教授)、津田敏秀(岡山大学大学院環境生命科学研究科教授)、高岡滋(神経内科リハビリテーション協立クリニック所長)
場所:リファレンス国際ビル2F貸会議室K-1
日時:5月31日(水)19時~20時30分
開催方法:会場参加・オンライン(ZOOM)あり。
参加費:無料
※お申込みは こちら

◆ 高岡滋[著]『水俣病と医学の責任――隠されてきたメチル水銀中毒症の真実』

【今月の赤旗半4段広告】

【編集後記】

当社営業部は現在、学校図書館営業の繁忙期となっている。その際、各地の書店外商部との交流が欠かせない。書店の外商と言うと普段書店店頭で本を購入する読者の皆様にはまったく馴染みがないだろうが、地域の活字文化を支えるためには無くてはならない存在である。昨今、「町の本屋をどう維持していくか」という議論が業界内外で続いているが、個人的には外商もこの話題の中に加えていくべきだろうと思っている。(営業部・S)

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