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ガザ人道危機でも焦点、難民「生体データ」をめぐる安保・効率と権利のジレンマ

新潮Foresightに寄稿しました。

世界規模で増え続ける移民・難民への対応には、不正行為やテロリストの潜入などを防ぐ仕組みの構築が不可欠です。

指紋や虹彩など生体データを用いた管理はその有効な手段なのですが、一方でデータの運用や提供する人々の同意確認・権利確保には大きな課題も存在します。

昨年10月7日のイスラム組織ハマスによるイスラエル奇襲に国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の職員12人が関与した疑惑から、日、米、英、独などが資金拠出の一時停止を表明しています。

しかし、これによりパレスチナ自治区ガザの人道危機に拍車がかかるとして、途上国や人権団体からは批判の声があがっているのです。

このUNRWAでは、2023年10月に始まったイスラム組織ハマスとイスラエルの一連の戦闘以前から、難民の指紋や虹彩などの生体データを収集すべきか否か、10年以上にわたり議論が続いてきました。

紛争地などで支援活動や物資を提供する場合、多重受け取りや死者・架空の人物による受給などの不正の問題が切り離せませんが、生体データという本人しか持たない個体の特徴を利用すれば、瞬時に書類偽造などの不正を排除でき、現地の人々と外国から派遣された国連職員の言語の壁も越えられるからです。

一方で、生体データは、最大限の保護が必要です。たとえば援助を得るために不本意な提供が行われたり、収集されたデータが第三者の手に渡ったりして迫害や脅迫に使われる恐れも否定できないからです。

UNRWAにおける議論から、難民の生体データの取り扱いを改めて考えます。ご一読ください。


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